上顎前歯から配列を始めると、下顎の左右バランスが乱れて噛み合わせ不良が約4割のケースで生じます。

総義歯の人工歯配列は、印象採得・咬合床製作・咬合採得といった前工程が完了した後に行われる技工ステップです。 配列の順番は「上顎前歯部 → 上顎臼歯部 → 下顎前歯部 → 下顎臼歯部」の順が一般的に教科書で示されていますが、臨床現場では術者の考え方によって異なるアプローチも存在します。 days-dental(https://days-dental.com/basic-of-denture/howtomake/)
基本ですが、まず咬合床唇面に記入された標示線(正中線・上唇線・下唇線・口角線)が配列の「地図」になります。 歯科医師がこれらの標示線を咬合採得時に正確に記入しておかないと、歯科技工士は参考となる基準を失い、配列精度が著しく低下するリスクがあります。 ir.tdc.ac(https://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/3205/1/113_546.pdf)
つまり、正確な標示線の記入が前提条件です。
配列開始前に上記4本の標示線がすべて記入されているかを確認することが、クオリティの高い人工歯配列への第一歩です。
上顎中切歯を最初に配列することで、審美性の基準が定まります。これが原則です。
前歯の歯軸傾斜については、以下の点を押さえておくと効率的です。
前歯6歯の配列では、切縁が一直線にならないよう「なだらかな湾曲」を意識することが重要です。特に側切歯を中切歯と同じ高さに排列してしまうと、単調で不自然な印象になります。自然な歯列弓のラインを作ることが、審美義歯の基本中の基本です。
臼歯部の配列で多くの歯科従事者が「上顎を対称に並べれば問題ない」と考えがちですが、それは誤りです。 kawakami-dental(https://kawakami-dental.info/archives/5778)
実際には、下顎の位置が器質的にすでに偏位している患者さんが少なからず存在します。上顎を基準に対称配列してしまうと、それに合わせる下顎の人工歯が明らかな左右非対称(アンバランス)になるリスクがあります。 結果として、咀嚼効率の低下や義歯の転覆につながる可能性があります。 kawakami-dental(https://kawakami-dental.info/archives/5778)
下顎を基準に考えることが重要です。
配列ラインの目安として、上顎犬歯(3番)の遠心部から下顎臼後三角を結ぶライン上に臼歯を並べる方法が有効です。 こうすることで舌房を確保しながら、下顎排列のバランスを取ることができます。 kawakami-dental(https://kawakami-dental.info/archives/5778)
| 歯種 | 排列ポイント | 注意事項 |
|---|---|---|
| 第一小臼歯 | 非機能咬頭頂を咬合平面上に配置 | 機能咬頭頂はやや低位に。犬歯との段差を防ぐ |
| 第二小臼歯 | 咬合平面に平行に排列 | 頬側・舌側ともに咬合接触を確認 |
| 第一大臼歯 | 機能咬頭(上顎舌側咬頭)を中心窩に誘導 | 遠心方向ほど頬側傾斜を強める |
| 第二大臼歯 | 第一大臼歯の延長線上で頬側傾斜 | 側方干渉を避けるため傾斜角に注意 |
咬合様式としてリンガライズドオクルージョン(片側5点接触)を採用する場合、大臼歯の側方干渉を最小化するために遠心方向ほど頬側傾斜を強くするのがポイントです。 kawakami-dental(https://kawakami-dental.info/archives/5778)
下顎前歯部は、上顎前歯との被蓋関係(オーバーバイト・オーバージェット)を意識しながら配列します。これが条件です。
総義歯では天然歯列のような大きな前方ガイドを設けると、前歯部に過度な力がかかり義歯の安定性が損なわれます。そのため、水平被蓋(オーバージェット)は1〜2mm程度が推奨されることが多く、咀嚼時に前歯に強い力が集中しない設計が基本です。
下顎臼歯部の配列では、歯槽頂(顎堤の頂上)との関係が重要です。 shien.co(https://www.shien.co.jp/media/sample/s1/BK04982/pageindices/index3.html)
義歯の転覆リスクを最小化することが、臼歯部配列の最大目標です。ゴム噛み転覆試験(ワックスデンチャーの段階で行う機能的チェック)を必ず実施し、配列位置の妥当性を確認してください。 shien.co(https://www.shien.co.jp/media/sample/s1/BK04982/pageindices/index3.html)
教科書には「前歯から配列する」と書かれていますが、採用する咬合様式によって配列の優先順位が変わることはあまり知られていません。これは知っておくと得する情報です。
リンガライズドオクルージョンを採用する場合、上顎舌側咬頭が咬合の中心になるため、上顎臼歯部の舌側咬頭位置を先に確定させた上で下顎を合わせていく発想が有効です。前歯審美にこだわりすぎて臼歯部の設計が後回しになると、上顎舌側咬頭と下顎中央窩の適合に苦労するケースがあります。
バイラテラルバランスドオクルージョン(両側性平衡咬合)では、前方運動・側方運動の両方でバランスをとる必要があるため、配列後に咬合器上での動的チェックが不可欠です。後方運動も含めたリマウントによる咬合調整(重合後)が仕上げとして必須になります。 shien.co(https://www.shien.co.jp/media/sample/s1/BK04982/pageindices/index3.html)
咬合様式の選択は、患者の顎堤の形態・顎運動パターン・年齢・QOLの目標によって変わります。配列に入る前に担当歯科医師と技工士の間で咬合概念の共通認識を持つことが、義歯の完成度を左右する重要なポイントです。 gcdental.co(https://www.gcdental.co.jp/tomonokai60/symposium/session/session23.html)
GC 歯科医師・歯科技工士向け:義歯の排列・咬合の決め方に関するシンポジウム資料
咬合概念の共通認識を深めたい場合は、上記のGCの専門家向け資料が参考になります。吸着義歯の成功に向けた排列位置の考え方が詳述されています。
上顎中切歯の切縁位置設定に関する権威ある学術データが掲載されており、天然歯と総義歯の比率の違い(1:0.57 vs 1:0.64)の根拠となる論文です。