口腔細胞診の分類と判定区分を歯科医が学ぶ完全ガイド

口腔細胞診の分類(NILM・OLSIL・OHSIL・SCC・IFN)を正しく理解できていますか?従来のPap.クラス分類との違いや、現場で迷いやすい判定基準を歯科医目線で詳しく解説します。

口腔細胞診の分類と判定区分:基本から実践まで

口腔細胞診のクラス分類は、子宮頸部のPap.分類と同じ基準で判定すれば問題ない——そう思っていると、ClassⅡの中に癌が潜んでいても見逃す危険があります。 cdn.jscc.or(https://cdn.jscc.or.jp/files/guideline-16.pdf)


🦷 口腔細胞診 分類 3つのポイント
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現行の判定区分(5分類)

NILM・OLSIL・OHSIL・SCC・IFN。2013年から日本臨床細胞学会が口腔専用の判定区分を導入し、従来のPap.クラス分類に代わっています。

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旧クラス分類との対応

OLSILは旧ClassⅡb〜Ⅲ相当、OHSILは旧ClassⅢb〜Ⅴ相当です。旧ClassⅡの一部には癌が含まれていたため、OLSIL区分の設定が必須でした。

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口腔癌の発育過程の特殊性

口腔扁平上皮癌は「表層分化型」が大多数を占め、子宮頸癌のように基底細胞が全層を置換するタイプは極めて少ない。そのため口腔専用の診断基準が必要です。


口腔細胞診の分類の歴史と現行判定区分の成り立ち


長年使われてきたパパニコロウ(Pap.)クラス分類は、子宮頸部のがん発育過程に基づいて設計された分類です。 しかし口腔扁平上皮癌では、子宮頸部のように全層が異型細胞に置換される「全層置換型」は極めて稀で、表層に分化を保ったまま深部で浸潤が進む「表層分化型」が大多数を占めます。 この本質的な発育過程の違いから、旧Pap.クラス分類のⅡやⅣに判定上の曖昧な点が生じ、特に旧ClassⅡに癌が少なからず包含されていたことが大きな問題となりました。 ir.tdc.ac(https://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/5809/1/14_35.pdf)


そこで日本臨床細胞学会口腔細胞診ワーキンググループ(2013年)が、口腔粘膜疾患専用の判定区分を策定しました。 子宮頸部細胞診のベセスダシステムの考え方(①標本適不適の評価、②記述用語を用いた推定診断、③教育的注釈の追加)を参考にしつつ、口腔の特性を反映した5区分が採用されています。 これが現在の標準的な口腔細胞診報告様式であり、歯科医・口腔外科医が日常診療で使うべき基準です。 cdn.jscc.or(https://cdn.jscc.or.jp/files/guideline-16.pdf)


現行区分 旧クラス相当 概要 推奨対応
検体不適正 固定不良、細胞数不足など 採取方法の見直し・再検
NILM ClassⅠ〜Ⅱ相当 上皮内病変・悪性変化なし 経過観察(歯科医院)
OLSIL ClassⅡb〜Ⅲ相当 低異型度上皮内腫瘍性病変相当 生検または厳重経過観察
OHSIL ClassⅢb〜Ⅴ相当 高異型度上皮内腫瘍性病変相当 口腔外科医または高次医療機関
SCC ClassⅤ相当 扁平上皮癌 高次医療機関での治療
IFN (新設区分) 腫瘍性・非腫瘍性の判定困難 再検査または組織診


日本臨床細胞学会 細胞診ガイドライン(口腔・補遺版):判定区分の診断基準と改訂内容の詳細


口腔細胞診の分類でNILMとOLSILを正確に使い分けるポイント

NILMは「Negative for Intraepithelial Lesion or Malignancy」の略で、正常・感染症・炎症性変化・過角化症・上皮過形成・良性上皮性腫瘍(乳頭腫など)が含まれます。 これは、見た目は何らかの変化があっても腫瘍性変化が認められない状態です。 つまり「正常細胞しかない」ではなく、「腫瘍性変化がない」が原則です。 cdn.jscc.or(https://cdn.jscc.or.jp/files/guideline-16.pdf)


OLSILは「Oral Low-grade Squamous Intraepithelial Lesion」の略で、組織診のMild dysplasiaおよび一部のModerate dysplasia相当の病変を指します。 この区分が設けられた背景には、旧ClassⅡで経過観察されてきた患者の中に実は癌が存在していたケースを拾い上げる目的があります。 重要な点は、OLSILは「低異型度だから安心」ではなく、「生検もしくは厳重な経過観察」が必要な区分であることです。 cda.or(https://www.cda.or.jp/wp-content/uploads2/2022/02/%E3%80%90%E9%85%8D%E5%B8%83%E8%B3%87%E6%96%99%E3%80%91%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%A8%BA%E3%81%AE%E5%AE%9F%E9%9A%9B%E5%8D%83%E8%91%89%E7%9C%8C%E6%AD%AF%E7%A7%91%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E4%BC%9A2021.1.21.pdf)


  • 🔷 NILMの主な病変:正常粘膜・カンジダ・口腔扁平苔癬(軽度)・過角化症・良性乳頭腫など
  • 🟡 OLSILの主な対応病変:白板症(Mild〜一部Moderate dysplasia相当)・軽度の上皮性異形成
  • ⚠️ Moderate dysplasiaはOLSILかOHSILか判定が困難な場合があり、症例ごとの判断が必要
  • 🔴 OHSILの主な対応病変:Severe dysplasia・Carcinoma in situ・High-grade dysplasia相当


口腔細胞診の分類でOHSILとSCCを見分ける細胞診断のコツ

OHSILとSCCの鑑別は、口腔細胞診で最も重要かつ難しいポイントの一つです。 口腔扁平上皮癌の表層分化型では、表層の角化異型細胞のみが採取され、深層型扁平上皮異型細胞が出現しないことがある。 そのため角化異型細胞のみでもOHSIL判定(高次医療機関での精査対象)となり、SCCと区別する必要が生じます。 cdn.jscc.or(https://cdn.jscc.or.jp/files/guideline-16.pdf)


深層型扁平上皮異型細胞は「SCC判定に特有」と思われがちですが、実際にはOHSILでも出現することがあります。 判定の分岐は、深層型扁平上皮異型細胞の「核異型の程度」と「出現量」によって決まります。 出現量が多く異型が強ければSCC、少なめかつ軽〜中等度異型であればOHSILと判断する流れです(フローチャート参照)。 cdn.jscc.or(https://cdn.jscc.or.jp/files/guideline-16.pdf)


正常深層型細胞・再生性/反応性深層型細胞・深層型扁平上皮異型細胞の3者を区別することが現場での最重要課題です。 以下の特徴を覚えておけばOKです。 cdn.jscc.or(https://cdn.jscc.or.jp/files/guideline-16.pdf)


  • 正常深層型細胞:ライトグリーン好染、類円形核、核クロマチン増量なし、シート状集塊
  • 🟡 再生性/反応性深層型細胞:核腫大・軽度クロマチン増量あり、若干の重積性、均等な核間距離→原則NILM判定
  • 🔴 深層型扁平上皮異型細胞:クロマチン増量と粗造化、核形不整、核小体明瞭、不規則重積性集塊→OHSIL〜SCC


潰瘍や炎症所見が確認されるケースでは、再生性変化が深層型異型細胞に類似した像をとることがあります。 臨床的に炎症を認める場合は、時間をおいて再検することが推奨されます。 これは現場で迷いやすい重要な注意点ですね。 cdn.jscc.or(https://cdn.jscc.or.jp/files/guideline-16.pdf)


口腔細胞診の分類でIFN(鑑別困難)をどう扱うか

IFN(Indefinite For Neoplasia)は、腫瘍性か非腫瘍性かを細胞学的に断定できない場合に用いる区分で、2013年の改訂で新設されました。 炎症性変化による高度な細胞異型、高度異型を示す再生変化など、良・悪性の判定が困難な細胞群がこれに当たります。 この区分が適正検体の10%以上を占める場合は精度管理に問題があるとされています。 cdn.jscc.or(https://cdn.jscc.or.jp/files/guideline-16.pdf)


IFN判定の際は必ず再検査または組織診(生検)を勧めることが必須です。 また、IFNが多発する状況では採取方法・標本作製法の見直しが必要です。 同様に、検体不適正が全検体の10%を超える場合も採取手技の再確認が求められます。 cdn.jscc.or(https://cdn.jscc.or.jp/files/guideline-16.pdf)


  • 🔷 IFN判定後の対応:再検査 or 高次医療機関への生検依頼
  • 📊 IFNが適正検体の10%以上:施設の精度管理に問題ありとして対策が必要
  • 🧫 炎症や潰瘍がある場合:炎症消退後に再検することで判定精度が向上する
  • 💡 独自視点:IFNは「判定放棄」ではなく、患者に次のアクションを促すための能動的な区分として活用する意識が重要


口腔細胞診の分類と採取法・LBC法の活用で精度を上げる実践知識

口腔細胞診の検体採取で見落とされがちな点があります。 子宮頸部細胞診では適正標本の基準として扁平上皮細胞8,000〜12,000個以上(従来法)が必要とされていますが、口腔粘膜細胞診には同じ基準を適用してはいけません。 口腔の咀嚼粘膜は角化傾向が強く唾液が混在するため、従来法では2,000個以下、角化性病変では1,000個以下になることも多いためです。 cdn.jscc.or(https://cdn.jscc.or.jp/files/guideline-16.pdf)


近年普及しているLBC(液状化検体細胞診)法は、従来法より手技が簡単で細胞消失が少ないという利点があります。 口腔の表層分化型癌に多い「深層型異型細胞が少ない」という採取困難な状況でも、LBC法は適しているとされています。 さらにLBC法では残液を用いた免疫染色や遺伝子解析にも応用可能です。 これは使えそうです。 tcpl.co(https://www.tcpl.co.jp/wp-content/uploads/2017/09/koku_oshirase.pdf)


採取器具についても確認が必要です。 ブラシ(子宮頸部ブラシ・歯間ブラシ・口腔専用採取ブラシ)による採取は、綿棒と比較して変性が少なく細胞採取量も多いことが報告されています。 採取の際は、病変部を均一な圧力で10回程度擦過し、なるべく広範囲にわたって採取することが重要です。 cdn.jscc.or(https://cdn.jscc.or.jp/files/guideline-16.pdf)


採取・処理法 特徴 注意点
従来法(スライド塗抹) コスト低・広く普及 乾燥防止が必須、採取後即固定(95%アルコール)
LBC法(液状化検体) 均一標本・残液活用可 コスト高、Giemsa染色不可(乾燥固定が使えない)
Pap.染色(湿固定) 細胞形態の評価に最適 迅速固定が必要、乾燥厳禁
PAS反応 カンジダなど真菌検出に有効 湿固定で実施
Giemsa染色(乾燥固定) カンジダ形態・血液疾患診断に有効 LBC法では使用不可


早期口腔がんが疑われる口腔粘膜病変の検査:細胞診の手技・染色法の解説(大分大学口腔外科)






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