喉頭挙上さえできれば誤嚥は防げると思っているなら、それだけで患者の食道入口部閉塞を見落とすリスクが高まります。
メンデルソン手技(Mendelsohn Maneuver)は、嚥下障害リハビリにおける「喉頭挙上訓練」の代表的な方法です 。名前は知っていても、その目的を正確に言える歯科従事者は意外と少ないものです。 rehabilidata(https://rehabilidata.com/mendelsohn-maneuver/)
この手技の目的は大きく3つです 。 shugi-online(https://shugi-online.net/archives/2195)
- 🔺 喉頭挙上量の拡大:のど仏をより高く、より大きく上げられるようにする
- ⏱️ 挙上持続時間の延長:のど仏が上がった状態をより長く保てるようにする
- 💪 咽頭収縮力の増加:咽頭の筋肉がしっかり収縮できるよう強化する
この3点が揃って初めて、食塊が食道へスムーズに通過できます。つまり目的は「挙上させること」ではなく、「挙上を十分な量・時間・力で実現すること」です。これが基本です。
加えて、メンデルソン手技によって食道入口部(輪状咽頭筋部)の開大時間も延長するという報告があります 。食道入口部に前上方への張力が加わることで開大が改善するため、食道入口部が開きにくい患者に特に有効です 。歯科国家試験の問題でも「①喉頭挙上を改善し、輪状咽頭筋による②食道入口部の開大を促す」という形で出題されています 。これは必須の知識です。 note(https://note.com/soralove0531/n/nbb5c91ac9a54)
この訓練が特に有効な対象は、喉頭が十分に挙上できない方、または挙上時間が短い方です 。 youtube(https://www.youtube.com/watch?v=JPXgC9iMJCM)
具体的には次のような患者が該当します。
- 🧠 脳幹梗塞(ワレンベルグ症候群)による咽頭期嚥下障害
- 🏥 サルコペニアによる嚥下筋力低下
- 👴 高齢者全般:嚥下機能低下の予防・維持目的でも有効 note(https://note.com/soralove0531/n/nbb5c91ac9a54)
歯科従事者が関わる理由があります。口腔環境の悪化は嚥下機能低下と強く連動しており、地域に根付いた歯科医療従事者は患者の変化に最も早く気づける立場にいます 。定期的な口腔ケアの場で嚥下機能の低下を察知し、適切なリハビリや専門機関への橋渡しをすることが、歯科従事者の重要な役割です。 osada-zoomup(https://osada-zoomup.media/2024/08/28/special/1787/)
嚥下に問題を抱える患者は、誤嚥性肺炎のリスクを常に抱えています。意外ですね。しかし歯科における口腔ケアの質が誤嚥性肺炎予防に直結するというエビデンスは、現在では広く認められています。
実際の手順を正確に把握しておくことは、患者指導の質に直結します。正確な指示ができれば訓練効果が大きく変わります。
手順は以下の通りです 。 shugi-online(https://shugi-online.net/archives/2195)
1. 自分の手指を喉(のど仏)に当てる
2. 唾液を1度空嚥下して、喉頭が上がる感覚を手で確認する
3. 舌を上顎に押しつけながら再度唾液を嚥下する
4. のど仏が最も高い位置に上がったところで3〜5秒間キープする
5. ゆっくりと力を抜いて元に戻す
5回を1セット、休憩を挟みながら3セットが目安です 。食事前に実施することで効果が高まります。 note(https://note.com/soralove0531/n/nbb5c91ac9a54)
歯科での指導において重要なポイントは、「口の中に食べ物が入っていない状態」で練習することです 。食物が口内にある状態での訓練は誤嚥リスクを高めます。また、訓練中は無呼吸状態となるため、呼吸器疾患のある患者・高齢患者には呼吸状態への十分な配慮が必要です 。これは必ず守るべき点です。 youtube(https://www.youtube.com/watch?v=JPXgC9iMJCM)
患者に「のど仏を意識して」と言うだけでは不十分なことも多いです。
手を使ってのど仏を実際に触れさせながら視覚・触覚の両方でフィードバックを与える「バイオフィードバック的アプローチ」が、訓練習得率を高めます。歯科の診療ユニット脇でそのまま簡単に指導できるシンプルさも、この手技の大きな長所です。
嚥下訓練には複数の手技があります。混同しないことが大切です。
| 手技名 | 主な目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| メンデルソン手技 | 喉頭挙上量・持続時間の延長、食道入口部開大 | 自分の手で挙上を保持。随意的コントロールを学習 rehabilidata(https://rehabilidata.com/mendelsohn-maneuver/) |
| シャキア法(頭部挙上訓練) | 舌骨上筋群の筋力強化 | 仰臥位で頭部を挙上・保持。訓練強度は高い stnavi(https://stnavi.info/dysphagia/swallowing-dysphagia/post-374/) |
| 息こらえ嚥下 | 声門閉鎖を意識した誤嚥防止 | 息を止めてから嚥下。主に声門閉鎖不全に有効 osada-zoomup(https://osada-zoomup.media/2024/08/28/special/1787/) |
メンデルソン手技の特徴は、喉頭挙上という「動作の感覚そのもの」を患者が自分で学習・強化できる点にあります 。シャキア法が筋力強化寄りであるのに対し、メンデルソン手技は神経筋制御の学習という側面が強いです。 shugi-online(https://shugi-online.net/archives/2195)
また、メンデルソン手技は作業療法士・言語聴覚士だけでなく、歯科衛生士や歯科医師が口腔ケア指導の延長として患者に伝えやすいシンプルな手技でもあります。訓練に必要な器具が一切不要で、唾液だけで実施できます。器具ゼロで始められます。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会|訓練法のまとめ(2014版)PDF:メンデルソン手技を含む間接・直接訓練の根拠とやり方が体系的にまとめられた公式資料
メンデルソン手技はすべての嚥下障害患者に有効なわけではありません。ここが重要です。
以下のケースでは適応外または慎重適応とされています。
- ❌ 重度の呼吸器疾患(COPDなど):訓練中の無呼吸状態が危険
- ❌ 重度の認知症:随意的な喉頭コントロールの学習が困難
- ⚠️ 喉頭の随意コントロールが全くできない患者:感覚フィードバックが得られず、訓練の前提が成立しない shugi-online(https://shugi-online.net/archives/2195)
逆に言えば、「ある程度の随意的嚥下運動が残存している患者」に対しては非常に高い有効性を示す手技です。歯科の定期受診患者の多くは、この「ある程度の能力が残存している」段階にいることが多く、早期介入という点で歯科従事者の役割は非常に大きいです。
嚥下機能のスクリーニングツールとして、「反復唾液嚥下テスト(RSST)」(30秒間に唾液を何回飲み込めるかで評価するテスト)が広く使われています 。3回未満が異常の目安とされており、定期受診の患者に対して椅子に座ったまま30秒で確認できます。これは使えそうです。 osada-zoomup(https://osada-zoomup.media/2024/08/28/special/1787/)
嚥下機能が低下していると判断された場合、そのままメンデルソン手技の指導へ移行するか、専門職(言語聴覚士)への紹介につなげるか、歯科従事者がその橋渡し役を担います。メンデルソン手技の「目的」を正確に理解していることが、こうした判断の質に直結します。
日々の臨床でメンデルソン手技を正確に患者へ伝えるには、手順カードや動画資材を待合室や診療室に掲示しておくことも有効です。患者が自宅でも継続して訓練できる環境を作ることが、最終的な誤嚥性肺炎予防につながります。
長田Zoom UP|歯科医院で取り組む「食支援」のススメ:メンデルソン手技を含む直接・間接訓練の歯科臨床での実践的な解説記事
rehabilidata.com|メンデルソン手技の詳細解説:目的・効果・方法・エビデンスを網羅した信頼性の高い医療専門サイトの解説ページ