あなたが膵酵素だけを信じると、高額な訴訟リスクまで背負うことになります。
膵臓機能の血液検査というと、まず挙がるのがアミラーゼとリパーゼなどの膵酵素です。 ganjoho(https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/diagnosis.html)
国立がん研究センターの情報でも「血中膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼなど)」が膵臓がんの検査の一つとして紹介されていますが、膵がんで膵酵素が異常となる頻度は20〜50%に留まり、診断にはあまり有用ではないと明記されています。 suizou(https://www.suizou.org/citizen/qa/qa03-1.htm)
つまり膵酵素は、急性膵炎や明らかな炎症では頼りになる一方で、膵臓がんや進行した慢性膵炎では「正常でもおかしくない」検査です。つまり過信は禁物です。
血液検査で測定される主な膵酵素には、アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ-1、トリプシンなどがあり、特にリパーゼは膵特異性が高く、急性膵炎における感度はアミラーゼと同等、特異度はより高いと報告されています。 eiken.co(https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/MM0806_04.pdf)
腫瘍マーカーとしてはCA19-9が代表的ですが、膵がんに特異的ではなく、胆道系疾患などでも上昇するため、単独でのスクリーニングは推奨されません。 tokai-naika(https://www.tokai-naika.jp/blog/%E3%80%90%E5%B0%82%E9%96%80%E5%8C%BB%E3%81%8C%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E3%80%91%E5%81%A5%E5%BA%B7%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%A7%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%BC/)
膵臓機能を血液検査だけで網羅する発想は危険ということですね。
「膵臓機能」と聞くと、多くの医療従事者は血糖やHbA1cなど内分泌機能を思い浮かべる一方で、膵外分泌機能不全の評価は後回しになりがちです。膵外分泌機能不全では、脂肪便や体重減少、脂溶性ビタミン欠乏など栄養障害が問題となりますが、血中アミラーゼ・リパーゼはむしろ低下〜正常にとどまり、異常を示さないケースも少なくありません。 suizou-onaka(https://suizou-onaka.com/pei/examination)
日本のガイドラインでは、現在保険収載されている膵外分泌機能検査は「BT-PABA試験」のみとされており、呼気試験や便中エラスターゼ1(FE-1)は診断能向上に有用としつつも、保険適用外で臨床導入が限定的という現実があります。 jsge.or(https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/manseisuien_2021.pdf)
BT-PABA試験は、N-benzoyl-L-tyrosyl-p-aminobenzoic acidを経口投与し、膵酵素キモトリプシンによる分解産物PABAの6時間尿中排泄率を測定する検査で、結果は%で表されます。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000052861.pdf)
たとえば、6時間尿中排泄率が70%以上を正常、50〜69%を軽度低下、49%以下を中等度〜高度低下といった基準で評価する施設もあり、数字で「どれだけ消化能が落ちているか」を客観視できます。 jsge.or(https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/manseisuien_2021.pdf)
つまり「栄養障害が前景だが膵酵素は正常」という患者を、血液検査だけ見てスルーすると、半年〜1年で5〜10kgの体重減少や入院を招きかねません。痛いですね。
膵外分泌機能不全のスクリーニングが課題になる場面では、以下のような知識やサービスが役立ちます。
- リスク場面:慢性膵炎、膵切除後、長期アルコール歴のある患者での体重減少・脂肪便
- 狙い:栄養障害を早期に拾い、外来レベルで介入すること
- 候補:院内でBT-PABA試験を積極的にオーダーする、便中エラスターゼを扱う検査会社を一度リストアップしておき、必要時に依頼経路を確認する、栄養サポートチーム(NST)に相談する、など実行が1ステップで完結する仕組みづくり
慢性膵炎診療ガイドライン2021:膵内・外分泌機能検査の位置づけ
膵外分泌機能不全の検査・診断:症状と検査の流れ
例えば、ある報告では急性膵炎に対する感度がアミラーゼ80〜90%、リパーゼ80〜100%と同等である一方、特異度はアミラーゼよりリパーゼの方が高く、偽陽性(唾液腺疾患、腎不全など)を減らせる可能性が示されています。 eiken.co(https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/MM0806_04.pdf)
ただし、膵臓がんにおける膵酵素の異常率は20〜50%と低く、逆にいえば2人に1人〜4人に3人では膵酵素が正常のままということになります。 suizou(https://www.suizou.org/citizen/qa/qa03-1.htm)
この数字を、外来患者の数に置き換えるとイメージしやすいでしょう。例えば膵がん患者が10人通院してきたとすると、そのうち5〜8人はアミラーゼ・リパーゼが基準値内のまま、画像や症状のみが手がかりという状況になります。つまり正常値だけ見て「膵臓は大丈夫」と説明するのは危険です。
結論は「膵酵素は、急性膵炎には頼れるが、膵癌スクリーニングには使えない」です。
このリスクを減らすための現実的な対策としては、以下のような流れが考えられます。
- リスク場面:原因不明の上腹部痛、体重減少、黄疸、糖尿病の急な悪化などがあるにもかかわらず、膵酵素が正常な患者
- 狙い:血液検査の「正常」に引きずられずに、画像検査や専門医紹介につなげること
- 候補:腹部造影CTやMRCPの早期オーダー、地域の膵臓専門外来の連絡先を院内で共有しておき、疑った時点で電話相談→受診予約というワンステップで動ける体制を作る
膵外分泌機能不全の患者では、膵酵素そのものよりもアルブミン、総コレステロール、ヘモグロビンなど栄養指標の低下が目立つことがあります。 suizou-onaka(https://suizou-onaka.com/pei/examination)
ある膵外分泌機能不全の情報サイトでは、栄養状態をみるためにアルブミン、総コレステロール、ヘモグロビンに加え、膵消化酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)を測定し、栄養状態が悪いといずれの数値も低下すると説明しています。 suizou-onaka(https://suizou-onaka.com/pei/examination)
たとえば、アルブミン3.0g/dL、総コレステロール120mg/dL、ヘモグロビン10g/dLという値は、数字だけ見ると「やや低い」程度に見えますが、10枚分のはがきを重ねたくらいの皮下脂肪すら頼りない「やせた高齢者」のイメージと重なるでしょう。
つまり、膵臓機能の血液検査を読むときには、膵酵素の高低だけでなく、栄養指標をセットで確認し、「高値の炎症」と「低値の消化不良」のどちらが問題なのかを整理することが大切です。つまり視点を増やすことです。
このような「栄養指標を軸にした膵臓機能評価」を日常診療に組み込むためには、以下の工夫が役立ちます。
- リスク場面:高齢者や慢性膵炎患者の定期採血で、軽度の貧血や低アルブミンが慢性的に続いているケース
- 狙い:膵外分泌機能不全を早期に疑い、不要な造影検査を増やすことなく、栄養介入や膵酵素補充療法につなぐこと
- 候補:採血結果を説明するときに「アルブミンとコレステロールが少し低めですね。便は油っぽくないですか?」と一言添える、栄養指標が一定の閾値(例:Alb<3.5g/dL、TC<150mg/dL)を切ったらNSTカンファレンスに自動付箋が飛ぶよう電子カルテでルール設定する
栄養状態と膵外分泌機能不全の関係については、膵外分泌機能不全の解説サイトが現場のイメージを持つのに有用です。 suizou-onaka(https://suizou-onaka.com/pei/examination)
膵外分泌機能不全と栄養状態の検査
ここまで見てきた通り、膵臓機能の血液検査は「正常でも病気が隠れている」代表的な分野です。膵がんでの膵酵素異常率20〜50%という数字は、「正常だからといって説明を端折ると、後に診断遅延として問題化しうる」ことを意味します。 suizou(https://www.suizou.org/citizen/qa/qa03-1.htm)
医療訴訟やクレームの多くは、「検査そのもの」よりも「検査結果の説明と、その後の方針」に起因します。つまり〇〇に注意すれば大丈夫です。
たとえば、膵酵素・腫瘍マーカーがすべて正常だった患者が、半年後に進行膵がんと診断され、「あのときの血液検査で大丈夫と言われた」と家族から疑問が出るケースを想像してみてください。ここで重要なのは、その時点で「血液検査だけでは膵がんを完全には否定できない」ことをどこまで共有できていたかという点です。 suizou(https://www.suizou.org/citizen/qa/qa03-1.htm)
実務的な対策としては、以下のような工夫が現実的です。
- リスク場面:膵酵素・腫瘍マーカーが正常で、症状もはっきりしないが、年齢や背景から膵がんリスクが中等度以上と考えられるケース
- 狙い:検査の限界を共有しつつ、過剰検査にもならないバランスをとること
- 候補:
- 説明時に「今日の血液検査は大きな異常はありませんが、膵臓がんは血液だけでは半分くらいしか拾えません。今は画像の追加検査までは不要と判断しましたが、2〜3か月以内に症状が変われば必ず受診してください」と一言メモまで残す
- カルテに「膵酵素正常だが膵癌リスク説明済み、画像検査適応は現時点なし、症状変化時早期受診の指導」といった文言をテンプレート化しておき、数秒で入力できるようにする
これは使えそうです。
このように、膵臓機能の血液検査を「結果が正常かどうか」だけでなく、「どこまで分かる検査か」「この結果を患者とどう共有するか」まで含めて設計することで、診断精度だけでなく、将来のトラブル回避にもつながります。膵臓に関する患者向け情報やQ&Aを提供している専門サイトは、説明文言のヒントにもなるため、一度目を通しておくと良いでしょう。 suizou(https://www.suizou.org/citizen/qa/qa03-1.htm)
日本膵臓学会:血液検査に関するQ&A(膵酵素と腫瘍マーカー)
最後にお聞きしたいのですが、あなたの現場では「膵酵素が正常だけれども気になる症状の患者」に対して、どの時点で画像検査や専門医紹介に踏み切ることが多いでしょうか?