ステロイド点眼薬が眼圧を上昇させるメカニズムは、眼球隅角部にある線維柱帯(房水流出路)の細胞がステロイドによって変性し、房水の流出抵抗が増大することにあります。 産生は続くのに排出が追いつかなくなるため、眼圧が徐々に上昇していきます。これが継続すると視神経障害を伴う「ステロイド緑内障」に至ります。 hinohp(https://www.hinohp.com/files/10307.pdf)
発生頻度については、日本眼科医会のリーフレットによれば、成人の約30%で軽度~中等度の眼圧上昇、約5%で著明な眼圧上昇が報告されています。 緑内障がすでにある患者では、さらに高い割合で眼圧上昇が起こります。 katsuragi-ganka(https://katsuragi-ganka.com/kintetsu-ikoma/%E7%B6%9A%E7%99%BA%E7%B7%91%E5%86%85%E9%9A%9C%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%EF%BC%88%EF%BC%91%EF%BC%89/)
眼圧上昇は初期には可逆性で、投与中止によって2〜3ヶ月以内に正常化することが多いです。 しかし放置すると房水流出路の変性が不可逆的になり、投薬中止後も眼圧が高止まりするケースがあります。 kikuchieyeclinic(https://kikuchieyeclinic.com/steroidresponder.html)
早期発見が条件です。
小児は成人よりもステロイドによる眼圧上昇を起こしやすいことが知られています。 年齢依存性・容量依存性があり、若いほど、投与量が多いほど、投与期間が長いほど発症しやすいです。 アレルギー性結膜炎や春季カタルで処方機会が多い小児では、定期的な眼圧モニタリングが欠かせません。 yuri-eye(https://yuri-eye.jp/child/)
高リスク因子として押さえておきたいのは以下の通りです。
katsuragi-ganka(https://katsuragi-ganka.com/kintetsu-ikoma/%E7%B6%9A%E7%99%BA%E7%B7%91%E5%86%85%E9%9A%9C%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%EF%BC%88%EF%BC%91%EF%BC%89/)
これらのリスク因子を複数持つ患者にステロイド点眼を処方する場合、投与開始後2〜4週での眼圧測定、その後も月1回程度の定期的なチェックが推奨されます。 kikuchieyeclinic(https://kikuchieyeclinic.com/steroidresponder.html)
リスク因子の確認が基本です。
なお、ステロイドレスポンダーかどうかを事前に判定する方法は現在存在しません。 使用後に眼圧が上昇するかを注意深く観察することが唯一の対応策です。これを患者にも事前に説明しておくことで、異常を感じた際の早期来院につながります。 kikuchieyeclinic(https://kikuchieyeclinic.com/steroidresponder.html)
以下は内服薬での参考データですが、投与量・期間の関係を把握する際の目安になります。
| 投与期間 | 中等量群(10〜15mg/日) | 大量投与群(15mg/日以上) |
|---|---|---|
| 1〜4年未満 | 後嚢下白内障 11% | 78% |
| 4年以上 | 57% | 83% |
点眼薬の場合は全身投与より頻度は低いものの、長期になるほどリスクが蓄積します。 投与継続が必要な患者には、3〜6ヶ月に1回の細隙灯顕微鏡による水晶体チェックを組み込むことが望ましいです。 oura-ganka(https://oura-ganka.com/column/%E6%AD%A3%E3%81%97%E3%81%8F%E4%BD%BF%E3%81%88%E3%81%B0%E6%80%96%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%84-%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%E3%81%AE%E3%81%8A%E8%96%AC%E3%80%90%E5%89%8D%E7%B7%A8%E3%80%91/)
眼科以外の科(皮膚科・耳鼻科・整形外科など)でステロイド軟膏・点眼薬が処方され、眼圧上昇やステロイド緑内障が発症した事例が報告されています。 眼科では眼圧測定などの副作用チェックが標準的に行われますが、他科ではその仕組みが整っていないことが多いです。これが副作用の見落としにつながります。 ochanomizu.yourclinic(https://ochanomizu.yourclinic.jp/blog/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%E7%82%B9%E7%9C%BC%E8%96%AC%E4%BD%BF%E7%94%A8%E6%99%82%E3%81%AE%E6%B3%A8%E6%84%8F)
皮膚科で処方されたステロイドローション・クリームを眼瞼周囲に塗布している場合でも、眼圧上昇が起こることが知られています。 医療従事者として他科でのステロイド処方を把握し、トータルの投与量を評価することが重要です。 hinohp(https://www.hinohp.com/files/10307.pdf)
ステロイド点眼薬の強さには明確なランク差があります。
hirotsuji-eye(https://hirotsuji-eye.com/eye/e197)
眼科専門医向けの薬剤情報はこちらも参考にしてください。
日本医事新報社:第18章 ステロイド剤と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)— 眼圧上昇に関する詳細な解説
ステロイド点眼薬の副作用対策として「中止」は有効ですが、「急な中止」が新たなリスクを生む点はあまり議論されません。炎症が残存している状態でステロイドを急に中止すると、リバウンド的な炎症の増悪(再燃)が起こる場合があります。特に術後眼に対する処方では、角膜内皮細胞や虹彩毛様体に炎症が残っている可能性があり、慎重な漸減が必要です。
中止の判断基準として以下を意識するとよいでしょう。
眼圧上昇が確認された場合、まず薬剤の弱いものへの切り替えを検討します。それでも眼圧が下がらない場合はプロスタグランジン関連薬などの眼圧下降点眼薬の追加を検討してください。 漸減と観察がセットです。 kikuchieyeclinic(https://kikuchieyeclinic.com/steroidresponder.html)
中止後2週間は観察が必要です。
日本眼科医会の最新リーフレットも処方時の患者説明に活用できます。
公益社団法人日本眼科医会:ステロイド治療薬の眼への影響(2025年版)— 眼圧上昇・緑内障リスクの患者向け説明資料として活用可能