輸入食品監視指導計画と厚生労働大臣の権限と役割

輸入食品監視指導計画とは何か、厚生労働大臣はどんな権限を持つのか。関税・輸入に関わるあなたが知っておくべき検査命令や禁止措置の仕組みとは?

輸入食品監視指導計画と厚生労働大臣の権限・監視体制の全貌

検査命令が出た食品は、輸入者が費用を全額負担し、結果が出るまで一切輸入できません。


輸入食品監視指導計画とは?3つのポイント
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食品衛生法第23条に基づく年度計画

厚生労働大臣が毎年策定する計画で、輸出国の生産段階から国内流通まで、すべての段階での安全対策を定めています。

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年間約10万件のモニタリング検査を実施

令和7・8年度ともに約100,000件の検査計画が設定されており、費用は国が負担。食品の種類ごとにリスクに応じた抜き取り検査が行われます。

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違反率5%超で包括的輸入禁止措置も

特定の国・地域からの食品の違反率がおおむね5%以上になると、厚生労働大臣が厚生科学審議会の意見を聴き、輸入禁止措置を講じる権限を持ちます。


輸入食品監視指導計画の目的と食品衛生法上の根拠



輸入食品監視指導計画は、食品衛生法(昭和22年法律第233号)第23条の規定を根拠として、厚生労働大臣が毎年度策定する公的な行動計画です。日本は現在、カロリーベースで食料の約60%を海外に依存しているという現実があります。つまり、私たちが口にする食品の6割は輸入品であり、その安全性管理は国民の健康に直結しています。


令和5年度の実績を見ると、販売・営業目的で輸入された食品等の輸入届出件数は約235万件、輸入重量は約2,987万トンにのぼりました。この膨大な量の輸入食品すべてを一件一件精査することは物理的に不可能であるため、計画に基づいた重点的・効率的な監視体制が必要となります。それがこの計画の本質です。


食品衛生法第23条では、厚生労働大臣が指針に基づき翌年度の輸入食品等に関する監視指導の実施計画を毎年度定め、かつ計画の策定・変更時と実施状況について公表することを義務付けています。つまり計画は公開情報であり、パブリックコメントも募集されます。関税・輸入業務に関わる事業者であれば、このプロセスを定期的にチェックすることが重要です。


令和8年度計画案は2026年1月にパブリックコメントの募集が開始され、同年2月18日に締め切られました。このように計画は毎年更新されるため、前年度と内容が変わることがあります。最新の規制動向を把握することが、輸入ビジネスにおけるリスク管理の第一歩です。


参考:厚生労働省が令和7年度輸入食品監視指導計画を策定した際の公式プレスリリース。計画の主要内容と実施体制がまとめられています。


令和7年度輸入食品監視指導計画を策定しました – 厚生労働省


輸入食品監視指導計画のモニタリング検査と費用負担のしくみ

モニタリング検査は、輸入食品の安全性を「幅広く監視する」ことを目的とした計画的な抜き取り検査です。令和7・8年度の計画では、年間約100,000件という規模で実施されています。東京ドームの観客動員数が約4万5,000人であることを考えると、その約2.2倍の件数が毎年度チェックされていることになります。


検査の対象となる項目は多岐にわたります。具体的には、残留農薬(有機リン系・有機塩素系など)、残留動物用医薬品(抗生物質・ホルモン剤等)、食品添加物(保存料・着色料・甘味料等)、病原微生物(腸管出血性大腸菌・リステリア等)、カビ毒(アフラトキシン・デオキシニバレノール等)、遺伝子組換え食品の使用有無、そして放射線照射の有無などが含まれます。


ここで重要な点が一つあります。モニタリング検査の費用は国が負担します。なぜなら、違反の可能性が低い食品について幅広くリスク状況を把握することを目的としており、検査結果の判明を待たずに輸入することも可能です。この点が後述する「検査命令」と根本的に異なります。


モニタリング検査の統計学的なしくみも知っておくと実務に役立ちます。1%以上の違反食品が含まれている場合に、95%の信頼度で1件以上の違反を発見できるよう件数が設計されています。これは食品群ごとに輸入量・違反率・健康被害リスクなどを勘案して決定されます。過去に違反が発見されなかった品目でも一定件数の検査は維持されるため、「過去に問題がなかった品目だから安心」という思い込みは禁物です。


参考:モニタリング検査の具体的な費用負担と手続き、命令検査との違いについて詳しく解説されています。


食品衛生法の審査・検査:日本 | 貿易・投資相談Q&A – ジェトロ


輸入食品監視指導計画における検査命令と輸入者への影響

検査命令は、モニタリング検査と根本的に性格が異なります。法違反の可能性が高いと見込まれる輸入食品等について、厚生労働大臣が「輸入の都度」検査の実施を輸入者に対して命じる制度です。費用は輸入者が全額負担し、検査結果が判明するまで輸入は一切認められません。


検査命令が発動されるのは主に次の2つのケースです。一つ目は、輸出国や日本国内で健康被害が発生・発生リスクが生じた場合、またはモニタリング検査で法違反が発見された場合で、同一製造者・同一輸出国の同一品目について直ちに命令の対象となります。二つ目は、同一品目について複数回の違反が発見された場合で、輸出国の衛生管理状況なども踏まえて対象範囲が決定されます。


厳しいところですね。しかし、解除条件も明確に定められています。輸出国が原因究明と再発防止策を確立し、その有効性が確認された場合のほか、直近の違反事例判明日から「2年間新たな違反事例がない」場合、または「1年間違反事例がなくかつ検査命令の実施件数が300件以上」の場合には、原則として検査命令が解除されます。


令和7年度(2025年4月〜9月)の中間報告では、全体の検査件数108,862件のうち検査命令による検査は36,394件を占め、359件の法違反が確認されています。検査命令の対象品目に該当する食品を取り扱う場合、1件ごとに検査費用が発生することを事前にコスト計算に組み込んでおくことが不可欠です。


参考:厚生労働省による令和7年度輸入食品監視指導結果(中間報告)の公式データ。数値の根拠として参照できます。


令和7年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果(中間報告)の公表 – 厚生労働省


輸入食品監視指導計画における厚生労働大臣の包括的輸入禁止権限

厚生労働大臣には、特定の国・地域または特定の者が製造した輸入食品等について、包括的な輸入禁止措置を講じる権限があります(食品衛生法第9条第1項・第17条第1項)。これは検査命令よりも強力な措置であり、「検査さえ通れば輸入できる」という段階を超えた、事実上の取引停止を意味します。


この措置が発動される目安は計画に明記されており、「輸入食品等の検査件数全体に対する違反率がおおむね5%以上」の場合が一つの基準とされています。加えて、生産地等における食品衛生上の管理状況から見て引き続き違反食品が輸入されるおそれがあること、そして人の健康を損なうおそれの程度等を勘案して検討されます。つまり単純に5%を超えたから即禁止ではなく、複合的な判断が行われます。


この判断には厚生科学審議会の意見を聴くことが義務付けられており、独断的な行政判断にならない仕組みになっています。これは関税交渉や経済連携協定<