SCM協定の条文を「読んだことがある」だけでは、相殺関税が発動された貨物を誤申告すると追徴関税だけでなく輸入差止めリスクもあります。
SCM協定(Agreement on Subsidies and Countervailing Measures)は、1994年のWTO設立協定と同時に発効した多国間貿易協定です。 正式名称は「補助金及び相殺措置に関する協定」で、全11部・32条および附属書7本で構成されています。 hiro-autmn.hatenablog(https://hiro-autmn.hatenablog.com/entry/scm-cvds-1)
通関業従事者が最初に頭に入れるべきは第1条の補助金定義です。 第1条は「政府または公的機関による資金面の貢献」と「それによる利益の発生」の両方が揃ったとき、補助金が存在するとみなすと規定します。 補助金が存在しなければ相殺関税も発動されない、という論理の出発点がここにあります。 hiro-autmn.hatenablog(https://hiro-autmn.hatenablog.com/entry/scm-cvds-1)
つまり「補助金かどうか」の判断が先、という順序が原則です。
資金面の貢献には、①政府による資金の直接移転(贈与・貸付・出資)、②本来徴収すべき税収の放棄(税額控除など)、③一般社会資本以外の物品や役務の提供、④民間団体への政府業務の委託・指示という4類型があります。 この分類は通関申告書類の確認時に輸出国の補助スキームを評価する際の判断基準になります。 hiro-autmn.hatenablog(https://hiro-autmn.hatenablog.com/entry/scm-cvds-1)
実務では「政府系機関が低利融資している」だけでは補助金と断定できません。利益(benefit)の発生要件も満たす必要があります。 市場金利と同等の融資条件であれば利益は発生しておらず、補助金とはみなされません。 hiro-autmn.hatenablog(https://hiro-autmn.hatenablog.com/entry/scm-cvds-1)
この2要件セットが条件です。
SCM協定第3条は「禁止補助金」を規定し、①輸出補助金(輸出実績に基づく補助金)と②輸入代替補助金(国産品優先使用を条件とする補助金)の2種類を明確に禁止しています。 禁止補助金は、他の条件(特定性・悪影響)を別途証明しなくても相殺措置の対象となる点で、対抗可能補助金より厳しい扱いを受けます。 hiro-autmn.hatenablog(https://hiro-autmn.hatenablog.com/entry/scm-cvds-1)
附属書1には輸出補助金の例示表が掲載されており、全12項目(a〜l)が列挙されています。 たとえば(k)項は「輸出信用保証や保険を市場コスト以下で提供すること」を輸出補助金と例示しています。 通関申告時に輸出国の政策融資や輸出信用が関与する貨物を扱う場合、この例示表を参照することで相殺関税適用リスクを事前チェックできます。 env.go(https://www.env.go.jp/council/16pol-ear/y163-01/ref05_3-3.pdf)
これは使えそうです。
禁止補助金に対しての救済手順は、WTO紛争解決機関への申立てと国内相殺関税措置の並行追求が可能です。 ただし「二重救済(double relief)は許されない」とSCM協定は明示しており、相殺関税と紛争解決の両方を進めていても、同一損害に対して重複して回収することはできません。 hiro-autmn.hatenablog(https://hiro-autmn.hatenablog.com/entry/scm-cvds-1)
| 補助金の種類 | 根拠条文 | 要件 | 相殺措置 |
|---|---|---|---|
| 禁止補助金 | 第3条 | 輸出実績・輸入代替の条件付与のみ | 特定性・悪影響の立証不要 |
| 対抗可能補助金 | 第5条・第2条 | 特定性 + 悪影響(損害・深刻な損害・利益無効化) | 立証が必要 |
対抗可能な補助金が原則です。
第2条「特定性(specificity)」は、補助金が一部の企業・産業・地域に限定されているかどうかを問う条文です。 特定性がない補助金—たとえば全産業に一律適用される電力料金補助—は相殺措置の対象外とされています。 hiro-autmn.hatenablog(https://hiro-autmn.hatenablog.com/entry/scm-cvds-1)
「輸出補助金なら問題ない」という思い込みは危険です。輸出補助金は禁止補助金として特定性の証明なしに相殺対象になりますが、製造工程への一般補助のように見えても、実質的に特定産業に集中していれば第2条違反として認定される事例があります。 hiro-autmn.hatenablog(https://hiro-autmn.hatenablog.com/entry/scm-cvds-1)
厳しいところですね。
特定性の判断基準として条文が挙げるのは、①法令上の特定性(de jure specificity)、②事実上の特定性(de facto specificity)の2類型です。 事実上の特定性では、補助金を受給する企業数の少なさや受給額の集中度合いが判断材料になります。通関申告書に添付される原産国政府の証明書類を精査する際、受給対象の範囲を確認することが重要です。 hiro-autmn.hatenablog(https://hiro-autmn.hatenablog.com/entry/scm-cvds-1)
実務対応として、輸入申告時に輸出国政府の補助スキームの概要書類や関連規制文書を入手し、受給資格の限定条件を確認する習慣をつけることで、事後的な相殺関税調査のリスクを低減できます。
書類確認が条件です。
外務省「補助金及び相殺措置に関する協定」:SCM協定全文(日本語)の公式テキスト。第1条〜第32条と附属書の条文確認に最適。
対抗可能補助金が相殺措置の対象となるには、第5条の「悪影響(adverse effects)」要件を満たす必要があります。 悪影響には3種類あり、①自国産業への損害(injury)、②GATT上の利益の無効化または侵害(nullification or impairment)、③他の加盟国利益への著しい害(serious prejudice)が該当します。 hiro-autmn.hatenablog(https://hiro-autmn.hatenablog.com/entry/scm-cvds-1)
「著しい害」については第6条がさらに詳細に規定しており、補助金の総額が製品価値の5%を超える場合、赤字企業の損失穴埋め、または市場シェアの著しい変化が推定的に著しい害とみなされます。 具体的な数字で示せば、輸出国政府が当該産品に5%超の直接補助を付与している場合、相殺関税発動の前提条件を満たしやすくなるということです。 hiro-autmn.hatenablog(https://hiro-autmn.hatenablog.com/entry/scm-cvds-1)
意外ですね。
通関業従事者にとってこの条文が重要な理由は、輸出者が提示する価格が市場より著しく低い場合、その背景に補助金があり得るという判断の起点になるからです。仕入書価格が競合相場比で15〜20%以上低い場合、輸出国政府の補助政策を調査するきっかけとして条文の基準値(5%超)を活用できます。
これだけ覚えておけばOKです。
ブログ「Dancing in the Rain」SCM協定解説:GATT第6条との関係から補助金の定義・救済措置フローまでを体系的に整理。国際経済法の学習にも有用。
通関業従事者の多くはSCM協定の条文を「試験科目」としては把握していますが、申告業務で能動的に参照するケースは少数派です。これが盲点になっています。
相殺関税が適用されている国からの輸入品を扱う際、通関申告には通常の関税率に加えて相殺関税率が上乗せされます。日本では財務省令「相殺関税に関する政令」に基づき具体的な税率が告示されますが、その税率の根拠はSCM協定の条文にある「補助金額を超えない相殺関税」というルールに直結しています。 申告時に税率の妥当性を確認するには協定条文の理解が不可欠です。 hiro-autmn.hatenablog(https://hiro-autmn.hatenablog.com/entry/scm-cvds-1)
条文が武器になりますね。
また、中国からの鉄鋼・アルミ製品などでは、複数の補助スキームが積み上がった「累積補助金」の問題が近年浮上しています。 第1条の定義は「政府または公的機関」を起点とするため、国有企業が仲介役になるケースでも補助金認定されるリスクがあり、2022年以降の経済産業省報告書では中国の産業補助金をSCM協定上の枠組みで分析する記述が増えています。 meti.go(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/tsusho_boeki/fukosei_boeki/report_2025/pdf/2025_02_07.pdf)
特定の供給国への依存が高い輸入業者を顧客に持つ通関業者は、その国の主要補助政策を年1回程度チェックし、SCM協定第1条・第2条のスクリーニングを自社業務フローに組み込むことで、突発的な相殺関税発動による輸入差止めや追加費用を事前に回避できます。
実務に組み込むことが大切です。
経済産業省「補助金・相殺措置(2025年2月)」:最新の各国補助金動向とSCM協定対応の政府分析。中国・EUの補助金政策を実務視点で確認できる。