あなたが広く効く内服を出すと耐性菌で損します。
歯科で内服抗菌薬を考えるとき、まず整理したいのは「どの菌を本当に狙うのか」です。歯性感染症の主な原因微生物は、口腔レンサ球菌と嫌気性菌の混合感染で、閉塞膿瘍では1検体あたり2〜3菌種が検出されることが多いとされています。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
つまり標的は絞れます。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
厚生労働省の歯科編では、主要な検出菌としてプレボテラ属菌、フソバクテリウム属菌、ポルフィロモナス属菌、嫌気性グラム陽性球菌などが挙げられています。ここで重要なのは、歯科の初期治療で毎回「グラム陰性桿菌全般」を広くカバーする発想は基本ではないという点です。第3世代セファロスポリン系が推奨されにくい理由として、歯性感染症と関連が少ないグラム陰性菌まで標的にする広域スペクトル性が明記されています。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
この整理ができると、薬剤選択の迷いが減ります。広く効きそうだから選ぶ、ではなく、口腔内で実際に多い菌に合うかで考えるのが安全です。結論は標的菌ベースです。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
歯科の内服で優先すべきなのは、口腔レンサ球菌と嫌気性菌です。JAID/JSCの歯性感染症ガイドラインでも、口腔レンサ球菌および嫌気性菌を標的菌とする治療には、ペニシリン系薬とβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬を第一選択とする考え方が示されています。 tmhp(https://www.tmhp.jp/ebara/section/department/dentistry_oral_surgery/dentistry_column/202207.html)
ただし、嫌気性菌の中でもプレボテラ属はβ-ラクタマーゼ産生菌種が多い点に注意が必要です。日本歯周病学会のガイドラインでは、グラム陰性菌のうちPrevotella属でβ-ラクタマーゼ産生菌の割合が高く、2〜3割程度がβ-ラクタム系薬に耐性を示す傾向があるとされています。 perio(https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_antibiotic_2020.pdf)
ここが例外です。 perio(https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_antibiotic_2020.pdf)
そのため、軽症〜中等症の歯周組織炎や歯冠周囲炎であればアモキシシリン中心で考え、顎炎の初期や慢性顎骨骨髄炎、薬剤関連顎骨壊死など、嫌気性菌やβ-ラクタマーゼ産生菌の関与が濃くなる場面ではクラブラン酸/アモキシシリンが候補に上がります。広く見える薬を先に選ぶより、原因菌の変化に合わせて段階的に広げるほうが、失敗も無駄も減らしやすいです。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
参考: 歯性感染症の原因菌と第一選択薬の考え方を確認する部分です。
日本化学療法学会 JAID/JSC感染症治療ガイドライン2016—歯性感染症—
現場では「広く効くなら安心」と感じやすいですが、歯科では逆に不利になることがあります。厚生労働省の歯科編は、第3世代経口セファロスポリン系が推奨されない理由として、歯性感染症の原因菌と関連が少ないグラム陰性菌まで標的にしてしまうこと、さらにバイオアベイラビリティが低いことを挙げています。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
数字で見るとかなり印象が変わります。アモキシシリンのバイオアベイラビリティは74〜92%ですが、セフジトレンは14〜16%、セフジニルは20〜25%、セフポドキシムでも46〜50%です。はがきの横幅ほどの傷口に届かせたいのに、飲んだ薬のかなりの部分が十分に生かされないイメージです。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
意外ですね。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
しかも、日本の歯科診療所では第3世代セファロスポリン系の処方割合が2015〜2020年度で60.5%から53.1%へ減ったとはいえ、なお半数超を占めたとされています。習慣で選び続けると、診療の質だけでなくAMR対策の面でも遅れます。処方見直しの狙いは、広くすることではなく、狭く正確に当てることです。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
参考: 第3世代経口セフェムの吸収率や歯科での非推奨理由を整理しやすい資料です。
厚生労働省 抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 歯科編
では、歯科でグラム陰性桿菌を少し意識したほうがよい場面はゼロなのでしょうか。ゼロではありませんが、それでも「だから最初から広域経口薬」という結論にはなりません。どういうことでしょうか? chemotherapy.or(https://www.chemotherapy.or.jp/modules/guideline/index.php?content_id=162)
まず歯性感染症の中では、顎炎が重くなって偏性嫌気性菌の関与が高まる場面、あるいは慢性顎骨骨髄炎や薬剤関連顎骨壊死のようにβ-ラクタマーゼ産生嫌気性菌を想定する場面で、クラブラン酸/アモキシシリンが推奨されます。これは「グラム陰性桿菌だから広域薬」ではなく、口腔由来の嫌気性菌、特にPrevotellaなどへの対策です。 perio(https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_antibiotic_2020.pdf)
一方で、開口障害や嚥下困難を伴う顎炎重症例、顎骨周囲の蜂巣炎では、専門医療機関での静脈内投与が推奨されます。つまり内服で粘るより、紹介の判断が利益になります。内服だけ覚えておけばOKではありません。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
さらに、グラム陰性薬剤耐性菌治療ガイダンスは、ESBL産生菌、AmpC産生菌、CRE、緑膿菌、アシネトバクターなどを対象にしていますが、これはAMRが検出または強く疑われる場合の標的治療の話で、経験的治療そのものを示すものではありません。歯科外来で一般的な歯性感染症にそのまま持ち込むと、対象を見誤ります。例外はありますが、使う土俵が違うということですね。 chemotherapy.or(https://www.chemotherapy.or.jp/modules/guideline/index.php?content_id=162)
検索上位の記事では薬そのものの話に寄りがちですが、実務では「出す前の3確認」で事故をかなり減らせます。確認したいのは、局所処置の可否、アレルギーの真偽、腎機能の3点です。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
まず、局所処置が可能で全身症状を伴わない根尖性歯周組織炎やドライソケットでは、経口抗菌薬は不要とされています。ここで薬を出すと、効かない治療を重ねるだけでなく、患者の通院期間や副作用リスクまで増やします。局所処置が原則です。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
次に、ペニシリンアレルギー申告です。米国データではペニシリンアレルギーを申告する患者は一般人口の1〜10%ですが、スキンテスト陽性はそのうち約10%程度、アナフィラキシー発生率は0.01〜0.05%とされています。下痢歴だけで広域薬へ逃げると、第一選択を失ってしまいます。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
ここは重要です。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
最後に腎機能です。治療目的では投与量や回数の調整が必要ですが、予防の単回投与は原則として調整不要です。たとえばアモキシシリンは通常1日3〜4回でも、Ccr 10〜50では1日2回、Ccr 10未満や透析では1日1回が目安です。腎機能を見ずにいつもの回数で出すと、有害事象や説明不足につながります。確認の狙いは、過不足ない1回にすることです。電子カルテのテンプレや院内フロー表を1つ整えるだけでも、処方のブレをかなり減らせます。 mitakasika(https://mitakasika.com/column/column_ast.html)
参考: 歯周病領域での耐性傾向や抗菌薬の使い分けを補強したい部分です。
日本歯周病学会 歯周病患者における抗菌薬適正使用のガイドライン2020