神経型のウィルソン病患者の約2割は発症から3年後も診断がついていません。
ウィルソン病は、ATP7B遺伝子の変異により銅排泄障害が起こり、肝臓・脳・腎臓・眼などに銅が過剰蓄積する常染色体劣性遺伝の先天性銅代謝異常症です。発症頻度は約30,000人に1人、日本全国で約1,500人程度と推定されています。性別に関係なく発症し、年齢は2歳から72歳まで幅広く、約3%の患者は40歳を超えて発症します。 saiseikai.or(https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/wilsons_disease/)
肝臓から胆汁中への銅排泄が障害されることで、非セルロプラスミン結合銅が全身の臓器に沈着します。つまり銅が正常に排出されないということですね。肝臓では肝硬変や急性肝不全、脳では錐体外路症状や精神症状、角膜ではカイザーフライシャー角膜輪が生じ、腎臓では血尿などが出現します。 neurology-jp(https://neurology-jp.org/Journal/public_pdf/059090565.pdf)
障害される臓器によって症状が大きく異なるため、肝型・神経型・混合型に分類されます。肝型は3~15歳頃に肝機能障害や黄疸で発見されることが多く、神経型は15~20歳頃に神経症状や精神症状が前面に出るため、うつ病や統合失調症と誤診されるリスクがあります。 jsimd(https://jsimd.net/pdf/guideline/DW/01_150508_WD-GL.pdf)
肝型ウィルソン病では、黄疸、腹痛、嘔吐、浮腫、腹満、全身倦怠感、食欲不振、出血などが出現します。経過は慢性肝炎、急性肝炎、肝硬変、急性肝不全、劇症肝炎と多様です。特に自覚症状がない場合でも、血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)などの肝機能異常が見つかることがあります。肝型が基本です。 senoopc(http://senoopc.jp/disease/wilsondisease.html)
神経型ウィルソン病は、中枢神経系への銅蓄積により、言語障害、構音障害、不随意運動、手足の震え、筋緊張亢進などのパーキンソン病様症状(錐体外路症状)が現れます。進行例では緩徐かつ不明瞭な言語とジストニーによる姿勢異常が目立ち、日常生活に支障をきたす歩行障害や流涎なども出現します。 nanbyou.or(https://www.nanbyou.or.jp/entry/4544)
精神症状は約1/3の症例で認められ、時に肝障害や神経症状に先行して出現することがあります。意欲低下、集中力低下、突然の気分変調、性格変化などが初発症状となり、うつ、統合失調症などと誤診される事例が報告されています。神経症性の行動として病的恐怖、衝動的行動、攻撃性、反社会的行動も含まれます。 grj.umin(https://grj.umin.jp/grj/wilson.htm)
カイザーフライシャー角膜輪は、角膜辺縁への銅沈着により黒目の周りが緑褐色に見える特徴的所見です。神経症状や精神障害を呈する症例の約90%、肝疾患を持つ症例の約50~60%に認められ、診断の重要な手がかりとなります。細隙灯を用いると最もよく観察できますが、年少例や軽症例では見られないこともあります。これは特異的所見です。 ubie(https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/wvmn6b6ws)
済生会のウィルソン病解説ページでは、症状の詳細な説明と画像が掲載されており、カイザーフライシャー角膜輪の視覚的理解に役立ちます。
ウィルソン病における診断の遅れは深刻な問題です。発症から診断までの平均期間は、肝型で14.4か月、神経型では44.4か月と報告されており、神経型の診断遅延が顕著です。さらに重要なのは、患者の22.5%が発症から3年後でも診断がついていなかった事実です。 asas.or(https://asas.or.jp/jst/news/doc/info_20151211.pdf)
診断の遅れは予後に大きな影響を与えます。早期診断・早期治療により肝障害や中枢神経障害などの重篤な症状の発症を回避できるため、早期診断の実施が強く望まれています。診断が遅れると不可逆的な神経障害や肝不全が進行し、治療開始後も回復が困難になる可能性があります。早期発見が鍵です。 jsimd(http://www.jsimd.net/pdf/guideline/DW/01_150508_WD-GL.pdf)
ウィルソン病を診断するための代表的な生化学検査は以下の3つです。
📌 血清セルロプラスミン値の測定
低セルロプラスミン値はウィルソン病の重要な指標であり、カイザーフライシャー角膜輪と組み合わせて認める場合、疾患特異性が非常に高くなります。 grj.umin(https://grj.umin.jp/grj/wilson.htm)
📌 血清銅値の測定
血清銅値の低下も診断の手がかりとなります。非セルロプラスミン結合銅の増加が病態の本質であるため、血清総銅値だけでなく、遊離銅の評価も重要です。 neurology-jp(https://neurology-jp.org/Journal/public_pdf/059090565.pdf)
📌 尿中銅排泄量の測定
尿中への銅排泄が増加しているかを確認します。24時間蓄尿による測定が標準的で、基準値を超える排泄量はウィルソン病を強く示唆します。 neurology-jp(https://neurology-jp.org/Journal/public_pdf/059090565.pdf)
さらなる特殊検査としては、肝銅含量の測定とATP7B遺伝子診断があります。分子遺伝学的検査によるATP7Bの両アレル変異の同定により診断が確定されます。遺伝子診断で確定です。単一遺伝子検査、多遺伝子パネル、全エクソーム解析(WES)、全ゲノムシークエンス(WGS)などのアプローチがありますが、単一遺伝子検査またはATP7Bを含む多遺伝子パネルの使用で多くの症例は診断確定できます。 minds.jcqhc.or(https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00329/)
画像検査として、神経画像(頭部MRIなど)と腹部画像(超音波、CTなど)が行われ、銅沈着による脳の信号変化や肝臓の形態変化を評価します。 minds.jcqhc.or(https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00329/)
Wilson病診療ガイドライン2015詳細版には、診断フローチャートと各検査の実施基準が詳細に記載されており、診断プロセスの標準化に役立ちます。
ウィルソン病は早期に発見し治療を開始することで、肝障害や中枢神経障害等の重い症状の発症を予防することが可能な疾患です。治療は生涯にわたる銅キレート療法(ペニシラミン、トリエンチンなど)または亜鉛製剤による銅吸収抑制が中心となります。 nobelpharma.co(https://www.nobelpharma.co.jp/general/willson/06/)
早期治療開始により、カイザーフライシャー角膜輪の色素沈着が減少し、消失する場合も多く報告されています。肝機能も改善し、神経症状の進行も抑制されます。知らないと損する情報ですね。逆に治療開始が遅れると、肝硬変から肝不全へ進行したり、不可逆的な神経障害が残る可能性が高まります。 ubie(https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/wvmn6b6ws)
家族歴がある場合や若年での原因不明の肝機能障害、精神症状で受診した患者に対しては、積極的なスクリーニング検査の実施が推奨されます。肝機能異常が見つかった場合、単なる脂肪肝や慢性肝炎と決めつけず、ウィルソン病の可能性も念頭に置くことが重要です。
指定難病(難病指定171番)として医療費助成制度の対象となっており、経済的負担の軽減措置も整備されています。長期治療が必要な患者にとって、医療費助成制度の活用は治療継続の大きな支えとなります。助成制度を活用できます。 nanbyou.or(https://www.nanbyou.or.jp/entry/4544)
医療従事者向けには、日本小児栄養消化器肝臓学会、日本移植学会、日本肝臓学会、日本小児神経学会、日本神経学会、日本先天代謝異常学会などの関連学会が共同で作成したガイドラインが公開されており、診療の標準化と質の向上に貢献しています。このガイドラインを参照することで、診断基準、検査手順、治療選択肢について最新の情報を得られます。 minds.jcqhc.or(https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00329/)