
バイクの点火系統に問題が生じると、様々な症状が現れます。これらの症状を早期に察知することで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
主な症状としては以下のようなものがあります。
これらの症状は、点火系統の主要部品である「イグナイター」「イグニッションコイル」「スパークプラグ」などの故障や劣化によって引き起こされます。特に経年劣化や熱、湿気などの環境要因によって、電装部品は徐々に性能が低下していきます。
古いバイクに多く搭載されている「ポイント点火装置」は、接点の汚れや摩耗によって不具合が生じやすい傾向があります。この装置はエンジンの回転に合わせて常に開閉を繰り返すため、負担が大きく故障しやすい特徴があります。
イグナイターはバイクの点火系統において重要な役割を担う電子部品です。エンジンの回転信号を元に点火タイミングを決定し、適切なタイミングでスパークプラグに火花を飛ばすよう制御しています。このイグナイターに故障が生じると、エンジンの始動不良や走行中のトラブルの原因となります。
イグナイター故障の診断方法としては、以下の手順で点検を行います。
より詳細な点検には、検電テスターを使用してイグナイターの各リード線間の抵抗値を測定する方法があります。ただし、この点検には車種ごとのサービスマニュアルが必要となります。マニュアルには正常な抵抗値の範囲が記載されているため、測定値と比較することで故障の有無を判断できます。
テスターやマニュアルがない場合は、新品のイグナイターに交換して症状が改善するかどうかを確認する方法もあります。ただし、この方法は費用がかかるため、専門店での診断を先に受けることをおすすめします。
ポイント点火装置は、主に古いバイクに搭載されている原始的ながらも信頼性の高い点火方式です。この装置は「ポイントマグネット方式」とも呼ばれ、シンプルな構造ながら重要な役割を担っています。
ポイント点火装置の仕組みは、エンジンの回転に合わせて「カム」が回転し、そのカム山が「ヒール」と呼ばれる部分を押し上げることでポイント接点が開閉します。この開閉によって電流のON/OFFが制御され、適切なタイミングでスパークプラグに火花を飛ばす仕組みです。
この装置の特徴的な不具合としては以下のようなものがあります。
特に右側クランクエンドに装着されているタイプのポイント点火装置では、中央部品がクランクと一緒に回転するため、接点部分が摩耗しやすい傾向があります。また、エンジン回転数が上がったときに点火タイミングを早める「ガバナー」は、錆びによって正確に機能しなくなることがあります。
これらの不具合は、定期的な点検と調整によって予防することが可能です。ポイント点火装置のメンテナンスは、バイクの調子を良好に保つために欠かせない作業と言えるでしょう。
イグニッションコイルは、低電圧の電流を高電圧に変換してスパークプラグに送る重要な部品です。この部品が故障すると、エンジンの始動不良や走行中のパワー不足などの症状が現れます。
イグニッションコイルの交換は、適切な工具と知識があれば自分で行うことも可能です。基本的な交換手順は以下の通りです。
イグニッションコイルの交換費用は、バイクの種類によって異なりますが、部品代は一般的に5,000円から10,000円程度です。専門店に依頼する場合は、工賃が追加されるため、全体での費用は1万円から1万5千円程度になることが多いです。
なお、イグニッションコイルは経年劣化によって性能が低下するため、バイクの年式が古い場合や走行距離が多い場合は、予防的な交換を検討することも重要です。特に、イグナイターと同時期に製造された部品であれば、同時に交換することで将来的なトラブルを防ぐことができます。
バイクの点火系統のトラブルを未然に防ぐためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。以下に、点火系統を良好な状態に保つための予防メンテナンス方法をご紹介します。
1. スパークプラグの定期交換と点検
スパークプラグは点火系統の最前線で働く部品です。定期的な交換と点検を行うことで、多くの点火系トラブルを防ぐことができます。
2. 配線とコネクターの点検
点火系統の配線やコネクターは、振動や経年劣化によって緩みや断線が生じることがあります。
3. イグナイターとイグニッションコイルの予防交換
イグナイターやイグニッションコイルは、突然故障することがあります。特に古いバイクや長距離走行しているバイクでは、予防的な交換を検討することも重要です。
4. ポイント点火装置のメンテナンス
ポイント点火装置を搭載したバイクでは、以下のメンテナンスが重要です。
5. バッテリーの管理
点火系統はバッテリーからの電力供給に依存しているため、バッテリーの状態管理も重要です。
これらの予防メンテナンスを定期的に行うことで、突然の点火系トラブルを大幅に減らすことができます。特に長距離ツーリングや重要な用事で使用する前には、点火系統の簡単なチェックを行うことをおすすめします。
また、バイクの取扱説明書やサービスマニュアルには、車種ごとの推奨メンテナンス間隔が記載されています。これらを参考に、適切なタイミングでメンテナンスを行うことが大切です。
走行中や出先でバイクの点火系統に不具合が生じた場合、その場で対処できる応急処置を知っておくと非常に役立ちます。以下に、点火系トラブル発生時の緊急対処法をご紹介します。
1. スパークプラグの緊急処置
スパークプラグが濡れていたり、カーボンで汚れている場合の応急処置。
2. 接触不良の一時的修復
配線やコネクターの接触不良が疑われる場合。
3. バッテリー電圧低下時の対応
バッテリー電圧の低下が原因の場合。
4. ポイント点火装置の緊急調整
ポイント点火装置搭載車の場合。
5. 雨天走行時の対策
雨天走行で点火系統に水が入った場合。
6. 専門家への連絡方法
上記の応急処置でも改善しない場合。
これらの緊急対処法は、あくまで一時的な応急処置です。安全に走行できる状態になったとしても、できるだけ早く専門店での点検・修理を受けることをおすすめします。また、日頃からマルチツールやスパークプラグレンチなどの基本工具、接点復活剤などを携行しておくと、万が一のトラブル時に役立ちます。
特に長距離ツーリングに出かける際は、事前に点火系統の点検を行い、必要に応じて予備のスパークプラグを携行するなどの準備をしておくと安心です。