
イグニッションコイルは、バイクのエンジンを動かすために欠かせない重要な部品です。基本的には変圧器の一種で、バッテリーやジェネレーターから供給される12Vの低電圧を、スパークプラグが火花を飛ばすのに必要な20,000〜35,000Vもの高電圧に昇圧する役割を担っています。
イグニッションコイルの内部構造は、鉄の芯(センターコア)に2種類のコイルが巻かれています。
この2つのコイルの巻数の差によって電圧の増幅が行われます。1次コイルに電流が流れると鉄芯に磁界が発生し、この電流を遮断すると「自己誘導作用」により高い電圧が発生します。同時に「相互誘導作用」によって2次コイルにも高電圧が誘導され、これがスパークプラグに送られて火花を発生させるのです。
最近のバイクでは、プラグキャップとイグニッションコイルが一体化した「ダイレクトイグニッションコイル」も増えてきています。これはプラグコードが無いため電気抵抗による電圧低下が抑えられ、より強い火花を発生させることができるという利点があります。
イグニッションコイルが故障する原因はいくつかありますが、最も一般的なのは経年劣化です。長期間の使用によってコイル線が劣化し、絶縁体が損傷したり、断線したりすることがあります。特に古いバイクや絶版車は要注意です。
イグニッションコイルの故障原因を詳しく見ていきましょう。
これらの原因が重なることで、イグニッションコイルの故障リスクは高まります。特に10年以上経過した古いバイクでは、経年劣化と高温環境の影響で故障する可能性が高くなります。
定期的な点検を行い、取り付け部の緩みや配線の状態をチェックすることで、早期に問題を発見し対処することが重要です。
イグニッションコイルが故障すると、バイクにはいくつかの特徴的な症状が現れます。これらの症状を早期に発見することで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
エンジン始動に関する症状
アイドリング時の症状
走行中の症状
特徴的な現象
イグニッションコイルの故障の特徴として、「エンジンが暖まると症状が出やすい」という点が挙げられます。これは配線を流れる電気抵抗が温度によって変化するためです。朝は問題なく始動し走行できても、エンジンが温まってくると突然調子が悪くなるような場合は、イグニッションコイルの不調を疑ってみる価値があります。
ただし、これらの症状はイグニッションコイル以外の原因(スパークプラグの劣化、燃料系統の問題、バッテリー不良など)でも起こり得るため、確実な診断にはテスターを使用してコイルの抵抗値を測定するなど、専門的な点検が必要です。
イグニッションコイルの故障が確認されたら、交換作業が必要になります。基本的な手順と必要な工具をご紹介します。
必要な工具
交換手順
交換時の注意点
イグニッションコイルの交換費用は、部品代が5,000〜8,000円程度、工賃が3,000〜5,000円程度が相場です。自分で交換する場合は工賃が不要になりますが、車種によっては作業が複雑になることもあるため、自信がない場合は専門店に依頼することをおすすめします。
標準装備のイグニッションコイルから高性能品に交換することで、バイクの性能向上が期待できる場合があります。特に古いバイクや絶版車では、点火系の弱さを補うためにアフターマーケット品への交換が効果的なケースがあります。
高性能イグニッションコイルの特徴
交換による主なメリット
冷間時や高温時の始動性が改善され、エンジンがかかりやすくなります。
より強力な火花によって燃焼効率が上がり、パワーアップや燃費改善につながることがあります。
標準品では高回転時に電圧が不足しがちですが、高性能コイルではより安定した点火が可能になります。
適切な電圧で点火することで、スパークプラグの消耗を抑えられる場合があります。
人気の高性能イグニッションコイル
市場では様々なアフターマーケット品が販売されていますが、特に旧車バイク界隈で人気なのがウオタニ(WATANABE)のイグニッションコイルです。ウオタニのSP2やSPIIシリーズは、標準品と比較して高い電圧を発生させる能力を持ち、特に古いバイクの点火系を強化するのに効果的と言われています。
交換時の注意点
高性能イグニッションコイルに交換する際は、以下の点に注意が必要です。
高性能イグニッションコイルへの交換は、特に以下のようなケースで効果を発揮します。
ただし、新しいバイクや既に十分な性能を持つモデルでは、交換による効果が限定的な場合もあります。交換を検討する際は、自分のバイクの状態や求める効果をよく考慮することが大切です。
「点火系が弱い絶版車」変え時?イグニッションコイル交換!- 旧車バイク向けのイグニッションコイル交換の効果について詳しく解説されています
イグニッションコイルの故障を未然に防ぐためには、定期的なメンテナンスが重要です。適切なケアを行うことで、コイルの寿命を延ばし、突然のトラブルを避けることができます。
日常的な点検項目
定期的なメンテナンス
長期保管時の注意点
長期間バイクを使用しない場合は、以下の点に注意しましょう。
イグニッションコイルの寿命を延ばすコツ
イグニッションコイルは基本的に耐久性の高い部品ですが、適切なメンテナンスを行うことでさ