ZX-25Rの最大の魅力は、なんといってもその250cc 4気筒エンジンです。現在、日本国内で販売されている250ccクラスのバイクで唯一の4気筒エンジンを搭載しており、その特性は他の250ccバイクとは一線を画しています。
エンジンは最高出力48PS/15,500rpm、最大トルク22.9N・m/14,500rpmを発揮します。さらに、ラムエア効果により49PSまでパワーアップするという驚異的な性能を持っています。この高回転型エンジンは、17,000rpmという超高回転域まで回すことができ、その官能的なサウンドはライダーの心を魅了します。
多くのオーナーが口を揃えて絶賛するのが、この4気筒エンジンから生み出される音です。低回転域では落ち着いた音色ですが、回転数が上がるにつれて甲高い金属音へと変化し、最高回転域では耳を刺すような鋭い音を奏でます。この音の変化は、まるでバイクと一体化したような感覚をライダーに与え、走る楽しさを倍増させます。
一方で、低回転域でのトルクは2気筒エンジンに比べると弱く感じる場合があります。しかし、6,000rpm以上の中高回転域に入ると、エンジンは生き生きとし始め、スムーズな加速を楽しむことができます。街中での走行では、4速や5速でも十分なパワーを発揮し、快適なクルージングが可能です。
ZX-25Rの走行性能は、そのコンパクトな車体と相まって、非常に高いレベルにあります。車重は184kg(SE・KRTエディション)と、250ccクラスとしては若干重めですが、その重量感が高速走行時の安定性に寄与しています。
フレームには高張力鋼管製トレリスフレームを採用し、剛性と軽量化を両立しています。サスペンションは、フロントにSFF-BP(セパレートファンクションフォーク-ビッグピストン)を、リアにはホリゾンタルバックリンク式モノショックを採用。これらの組み合わせにより、スポーティーな走りと快適性を高次元で両立しています。
コーナリング性能も秀逸で、ライダーの意思に忠実に応えてくれます。タイトなコーナーでも軽快に曲がることができ、ワインディングロードでの走りが非常に楽しいバイクだと言えるでしょう。また、高速道路での直進安定性も高く、長距離ツーリングにも適しています。
ブレーキは、フロントに310mmペタルディスクとラジアルマウントモノブロック4ピストンキャリパー、リアに220mmペタルディスクと対向2ピストンキャリパーを採用。強力な制動力と優れたコントロール性を発揮し、安心感のある走りをサポートします。
ZX-25Rには、その価格に見合った豊富な装備と最新の電子制御システムが搭載されています。
まず、注目すべきはKTRC(カワサキトラクションコントロール)です。路面状況やライダーの好みに合わせて3段階の介入レベルを選択できます。これにより、雨天時や未舗装路での走行時にも安心感が高まります。
クイックシフター(KQS)も標準装備されており、クラッチ操作なしでシフトアップ・ダウンが可能です。高回転域での素早いシフトチェンジが可能となり、サーキット走行時などにその真価を発揮します。
さらに、パワーモードセレクターも搭載されており、フルパワー、ミドル(約80%)、ロー(約60%)の3つのモードから選択可能です。天候や路面状況、ライダーの気分に合わせて出力特性を変更できるのは、250ccクラスでは珍しい機能です。
2023年モデルからは、4.3インチTFTフルカラーメーターを採用。スマートフォンとの連携も可能となり、ナビゲーション機能やライディングログの記録など、より便利な機能が追加されました。
これらの装備により、ZX-25Rは単なる250ccスポーツバイクを超えた、プレミアムな乗り味と使い勝手を実現しています。
ZX-25Rは、スーパースポーツバイクならではの前傾姿勢を取りますが、予想以上に乗り心地が良いと多くのオーナーが評価しています。シート形状が適度に広く、長時間のライディングでも疲労が少ないのが特徴です。
ライディングポジションは、2気筒のNinja250よりも若干前傾が強めですが、極端な前傾姿勢ではありません。街乗りでも無理のない姿勢で運転でき、ツーリングにも適しています。
燃費性能は、4気筒エンジンということもあり、2気筒の250ccバイクと比べるとやや劣ります。実燃費は20km/L前後と報告されており、15Lの燃料タンクで300km程度の走行が可能です。ただし、高回転域を多用すると燃費は悪化するため、長距離走行時は注意が必要です。
荷物の積載性に関しては、スポーツバイクの宿命として決して高くはありません。しかし、オプションのリアキャリアを装着することで、ある程度の荷物を積むことは可能です。日帰りツーリングや短期の旅行程度であれば、十分に対応できるでしょう。
また、メンテナンス性については、4気筒エンジンということもあり、2気筒モデルよりも若干手間がかかる傾向にあります。定期的なオイル交換やバルブクリアランスの調整など、適切なメンテナンスを行うことが長く乗り続けるコツとなります。
ZX-25Rは、発売以来多くのアフターパーツメーカーが対応製品を開発しており、カスタマイズの幅が広いのも魅力の一つです。特に人気が高いのは、マフラーのカスタマイズです。ノーマルマフラーでも十分魅力的なサウンドを奏でますが、アフターマーケットのマフラーに交換することで、より官能的な排気音を楽しむことができます。
その他にも、ステップやレバー類、スクリーン、フェンダーレスキットなど、様々なカスタムパーツが販売されています。これらのパーツを組み合わせることで、自分だけの特別なZX-25Rを作り上げることができます。
中古市場での評価も高く、新車価格が高めということもあり、中古車の価格下落率は比較的緩やかです。特に、低走行距離で状態の良い個体は人気が高く、新車価格に近い価格で取引されることもあります。
ただし、高回転型エンジンということもあり、メンテナンス履歴や使用状況をしっかりと確認することが重要です。サーキット走行歴のある車両や、不適切なカスタムが施された車両には注意が必要でしょう。
また、2023年モデルでは大幅な進化を遂げており、4.3インチTFTメーターの採用やパワーアップなど、魅力的な改良が加えられています。中古車を検討する際は、年式による違いも考慮に入れる必要があります。
ZX-25Rは、250ccクラスの中でも特異な存在感を放つバイクです。4気筒エンジンならではの高回転サウンドと走行フィール、充実した装備、そしてカスタマイズの楽しさなど、多くの魅力を秘めています。価格は決して安くはありませんが、その価値に見合った満足度の高いバイクだと言えるでしょう。バイク選びの際は、試乗を通じてその魅力を直接体感することをおすすめします。