
フェンダーレス化は、バイクカスタムの中でも比較的手軽に見た目の印象を大きく変えられる人気の改造方法です。純正のリアフェンダーを取り外し、最小限の構造でナンバープレートと灯火類を支える「フェンダーレスキット」を装着することで、バイクのリア周りがすっきりとしたスポーティな印象になります。
フェンダーレス化の最大のメリットは、見た目の向上です。特に日本車は保安基準を満たすために大きめのフェンダーが装着されていることが多く、これを取り外すことでバイクの印象が一変します。テールエンドがシャープになり、車体全体のシルエットが引き締まって見えるのが特徴です。
一方で、フェンダーレス化にはいくつかの注意点もあります。まず、雨天走行時には後輪からの水や泥はねが増加します。また、保安基準への適合性も重要な検討事項です。ナンバープレートの角度や灯火類の位置など、法規に適合したキットを選ぶ必要があります。
フェンダーレスキットの価格帯は、汎用品であれば5,000円程度から、車種専用設計の高品質なものだと30,000円程度までと幅広くなっています。取り付け工賃を含めると、総額で10,000円〜40,000円程度の予算を見ておくとよいでしょう。
フェンダーレスカスタムを行う主な目的は、バイクのスタイリングをよりスポーティかつアグレッシブに変化させることです。純正のリアフェンダーは、多くの場合、保安基準を満たすために大きめに設計されており、バイクの美しいラインを損なっていることがあります。フェンダーレス化によって、テールエンドがすっきりとし、バイクの本来の美しいラインが際立つようになります。
フェンダーレスカスタムの効果は見た目だけにとどまりません。重量削減という実用的なメリットもあります。一般的な純正フェンダーは樹脂製で、重量は500g〜1kg程度ですが、フェンダーレスキットに交換することで200g〜500g程度の軽量化が可能です。この軽量化は、特にサーキット走行やスポーツライディングを楽しむライダーにとって、わずかながらも車体の取り回しやハンドリングの向上につながります。
また、フェンダーレス化によって得られる心理的効果も見逃せません。愛車のスタイリングが変わることで、オーナーとしての満足度や愛着が増し、ライディングへのモチベーションが高まるという効果があります。カスタムパーツの中でも比較的取り付けが容易で、コストパフォーマンスに優れているため、初めてのカスタムとして選ぶライダーも多いのが特徴です。
ただし、フェンダーレス化には一部デメリットもあります。雨天走行時には後輪からの水はねが増加し、後続車や自身の背中が汚れやすくなります。また、泥よけとしての機能が失われるため、オフロードやダートセクションのある道路では注意が必要です。これらのデメリットを理解した上で、自分のライディングスタイルに合わせてカスタムを検討することが重要です。
フェンダーレスキットの取り付けは、基本的な工具と知識があれば自分でも行える作業です。ここでは一般的な取り付け手順と必要な工具について解説します。
【必要な工具】
【取り付け手順】
まず、バイクを安定した場所に駐車し、メインスタンドを立てます。バッテリーのマイナス端子を外し、感電や電気系統のショートを防止します。作業スペースを確保し、外したボルト類を紛失しないよう小皿などに整理しておきましょう。
シート下のボルトやナットを外し、シートを取り外します。次に、テールランプやウインカーの配線コネクターを外します。多くの場合、カプラー形式になっているので、爪を押しながら引き抜きます。その後、フェンダーを固定しているボルトを外し、フェンダー本体を取り外します。
純正フェンダーからナンバープレートを取り外し、フェンダーレスキットの所定の位置に取り付けます。この際、ナンバープレートの角度が保安基準に適合するよう注意が必要です。後方から見て上方30度以内、左右15度以内に収まるよう調整します。
テールランプやウインカーをフェンダーレスキットに取り付けます。キットによっては純正の灯火類がそのまま使える場合と、別途購入が必要な場合があります。配線は説明書に従って接続し、絶縁テープで保護します。
キットをバイクに仮止めし、位置を確認します。ナンバープレートの視認性や灯火類の向きを確認した後、本締めします。この際、トルクレンチを使用して適切な締め付けトルクで固定することをおすすめします。過度な締め付けはネジ山を潰す原因になります。
バッテリーのマイナス端子を接続し、テールランプ、ブレーキランプ、ウインカーが正常に動作するか確認します。また、ナンバープレートの角度や固定状態も再度チェックします。
取り付け作業の難易度は車種やキットによって異なりますが、一般的には1〜2時間程度で完了します。初めての方は、説明書をよく読み、わからない点はメーカーや販売店に問い合わせるか、経験者のアドバイスを受けることをおすすめします。
フェンダーレスキットの詳細な取り付け手順と注意点(Webike動画付き)
また、取り付け後は必ず保安基準への適合性を確認しましょう。特にナンバープレートの角度や灯火類の視認性は重要です。不適切な取り付けは車検不適合や取り締まりの対象となる可能性があります。
フェンダーレスキットを選ぶ際は、車種との適合性、品質、デザイン、価格などを総合的に考慮する必要があります。ここでは、選び方のポイントと人気車種別のおすすめキットを紹介します。
【選び方のポイント】
車種専用設計のキットは、取り付けが容易で見た目もきれいに仕上がりますが、価格は高めです。一方、汎用品は安価ですが、取り付けに加工が必要な場合があり、仕上がりも専用品に比べると見劣りすることがあります。初心者は車種専用設計のキットがおすすめです。
一般的なフェンダーレスキットの材質はアルミ製、ステンレス製、樹脂製があります。アルミ製は軽量で加工性に優れ、ステンレス製は耐久性と高級感があり、樹脂製は最も安価です。長期使用を考えるなら、アルミ製やステンレス製がおすすめです。
車検対応品であるかどうかは重要なポイントです。特にナンバープレートの角度や灯火類の配置が保安基準に適合しているかを確認しましょう。「車検対応」と明記されている製品を選ぶのが安心です。
デイトナ、キジマ、ヨシムラなどの老舗メーカーは品質が安定しており、アフターサポートも充実しています。初めてのカスタムなら、こうした信頼できるメーカーの製品を選ぶと安心です。
【車種別おすすめフェンダーレスキット】
選び方で迷った場合は、バイク専門店やカスタムショップでアドバイスを受けるのも良い方法です。また、インターネット上のユーザーレビューや装着画像を参考にすると、実際の取り付け状態やデザインの雰囲気がわかりやすくなります。
フェンダーレスカスタムを行う際に最も重要なのが、保安基準への適合性です。見た目を重視するあまり法規に違反してしまうと、車検不適合や取り締まりの対象となるリスクがあります。ここでは、フェンダーレス化に関連する保安基準と車検対応のポイントを解説します。
【ナンバープレートに関する保安基準】
ナンバープレートは、後方から見て上方30度以内、左右15度以内の角度で取り付ける必要があります。これは、後続車からナンバープレートが視認できるようにするための規定です。フェンダーレスキットを選ぶ際は、この角度規制に適合するよう設計されているかを確認しましょう。
夜間にナンバープレートを照らすための「ナンバー灯」が必要です。フェンダーレスキットによっては、純正のナンバー灯が使えなくなる場合があるため、代替のナンバー灯が付属しているか、別途購入する必要があるかを確認しましょう。
ナンバープレートの下端が地上から30cm以上の高さにあることが求められています。また、車体の最後端から50cm以内に取り付ける必要があります。
【灯火類に関する保安基準】
テールランプは後方150mから視認できる必要があり、ブレーキランプは昼間100mから視認できる必要があります。フェンダーレス化によってこれらの位置が変わる場合は、視認性が確保されているか確認が必要です。
ウインカーは左右300mm以上離して設置し、地上350mm以上の高さに取り付ける必要があります。また、後方300mから視認できることが求められています。
【車検対応フェンダーレスキットの特徴】
車検対応を謳うフェンダーレスキットには、以下のような特徴があります。
ナンバープレートの角度や灯火類の位置が保安基準に適合するよう設計されています。
一部のメーカーでは、車検時に提示できる「取付証明書」や「車検対応証明書」を付属させています。これがあると車検時のトラブルを避けやすくなります。
多くの車検対応キットは、純正のテールランプやウインカーをそのまま使用できるよう設計されています。これにより、灯火類に関する保安基準への適合性が確保されます。
【意外と知られていない保安基準の解釈】
実は、保安基準の解釈には地域差や検査官による差があることも事実です。同じフェンダーレスキットでも、ある地域では車検に通り、別の地域では指摘を受けるというケースもあります。特に、ナンバープレートの角度については厳しくチェックされる傾向があります。
また、近年は「構造変更検査」の対象となるケースも増えています。特に大幅なフェンダーレス化や、灯火類の位置を大きく変更する場合は、事前に陸運局での構造変更検査が必要になることがあります。
国土交通省 - 自動車の保安基準(灯火装置関連)
車検対応のフェンダーレスキットであっても、取り付け方法によっては保安基準に適合しなくなる可能性があります。取り付け後は、角度や位置を実際に測定して確認することをおすすめします。
フェンダーレス化の最大のデメリットは、雨天走行時の水はねが増加することです。リアフェンダーは本来、後輪から跳ね上がる水や泥からライダーや後続車を守る役割を持っています。これを取り外すことで、以下のような問題が生じる可能性があります。
特に高速走行時には、後輪から跳ね上げられた水がライダーの背中や荷物に当たりやすくなります。
後続車のドライバーに対して水しぶきが飛び、視界不良の原因になることがあります。
エキゾーストやリアショック、スイングアームなどが泥水で汚れやすくなり、メンテナンス頻度が増える可能性があります。
これらの問題に対処するため、フェンダーレスバイクの雨天走行時には以下のような対策が有効です。
【雨天走行時の対策】
雨天時のみ装着できる着脱式のマッドガードが市販されています。コンパクトに折りたためるタイプや、工具なしで簡単に取り付け・取り外しができるタイプなど、様々な製品があります。価格は3,000円〜8,000円程度です。
スイングアームに直接取り付けるタイプのフェンダーで、車体のデザインを損なわずに水はねを防止できます。特にヨーロッパでは一般的なカスタムパーツです。価格は10,000円〜20,000円程度です。
バイクウェアに撥水スプレーを使用することで、水はねによる濡れを軽減できます。特にバックパックなど荷物に使用すると効果的です。
雨天時は通常よりも低速で走行し、急加速や急減速を避けることで水はねを軽減できます。また、水たまりを避けて走行するなど、路面状況に応じた運転を心がけましょう。
【意外な解決策:ミニマルフェンダー】
完全なフェンダーレス化ではなく、最小限のフェンダー機能を残す「ミニマルフェンダー」という選択肢もあります。これは、純正フェンダーよりも大幅に小型化されたフェンダーで、デザイン性を損なわずに最低限の水はね防止機能を確保できます。
例えば、ACTIVE社の「ミニマルフェンダー」シリーズや、DAYTONA社の「スリムフェンダー」などがこれに該当します。これらは完全なフェンダーレスよりも実用性が高く、雨天走行が多いライダーにはおすすめの選択肢です。
また、DIY派のライダーの中には、カーボンシートや樹脂板を使って独自のミニマルフェンダーを製作する人もいます。素材としては、軽量で耐水性のあるカーボン繊維強化プラスチック(CFRP)や、加工しやすいABS樹脂などが適しています。
ACTIVE公式サイト - ミニマルフェンダーシリーズ
雨天走行が多い地域に住んでいる方や、通勤・通学でバイクを使用する方は、完全なフェンダーレス化よりも、これらの中間的な選択肢を検討するとよいでしょう。見た目の良さと実用性のバランスを取ることが、長く快適にバイクライフを楽しむコツです。