ハブセンターステアリングデメリットと構造コスト整備性

ハブセンターステアリングデメリットと構造コスト整備性

ハブセンターステアリングデメリット

この記事でわかること
⚙️
構造の複雑さ

リンク機構を介した操舵システムによる特殊性と整備の難しさについて解説

🔧
メンテナンスコスト

専門的な整備が必要となる理由と費用が高くなる背景を説明

🏍️
実走行での制約

小回り性能や加速時の特性など、実際の使用で感じる欠点を紹介

ハブセンターステアリング構造の複雑さと特殊性

ハブセンターステアリングは前輪のハブ内部にステアリング軸を配置し、リンク機構でハンドルと接続する独特な構造を持っています。この機構は一般的なテレスコピックフロントフォークと異なり、操舵と衝撃吸収を切り離した設計となっているため、部品点数が多く複雑です。
参考)テージ H2が採用する“ハブセンターステア”ってどんなメカニ…

従来からのエンジンやフレームからの汎用が限りなく困難で、専用設計が必要となります。スイングアーム式のサスペンションに転向できるハブを組み合わせ、さらにリンク機構を介して操舵を伝達するという多層的な構造は、設計から製造まで高度な技術と精密な加工を要求されます。
参考)ハブセンター・ステアリング - Wikipedia

特にビモータのTESI H2では、ハブがステアする動きを正しく発揮するために組み立てに高い経験値が必要とされ、単にトルクを合わせるだけでは動きが渋くなったりガタつくこともあると報告されています。この精密な調整要求が、一般的なバイクショップでの整備を困難にしている大きな要因です。
参考)【世界一詳しくTESI H2のハブセンターステアリングを徹底…

ハブセンターステアリング整備性の低さとメンテナンス問題

フロントタイヤの交換一つをとっても、ハブセンターステアリング車は普通のバイクショップでは対応できないケースがほとんどです。通常のテレスコピック式フォークなら単純にアクスルシャフトを抜いてホイールを外せますが、ハブセンターステアではステアリング軸やリンク機構の分解が必要となるため作業が複雑化します。​
リンク機構を介した操舵システムのため、直接フロントフォークを操作する一般的なバイクと比べて、定期的な各部のガタやクリアランスのチェックが欠かせません。ベアリングやブッシュの摩耗チェック、リンク部の調整など、専門知識と特殊工具を必要とするメンテナンス項目が増えます。​
整備マニュアルや交換部品の入手も限定的で、ビモータなど一部のメーカーでしか採用されていないため、部品供給網も脆弱です。専門店への依頼が必須となることから、メンテナンスコストは通常のバイクの数倍に達することも珍しくありません。
参考)ハブセンターステアリングとは - わかりやすく解説 Webl…

ハブセンターステアリング小回り性能と市街地走行での制約

前輪の転向角度がスイングアームの幅に物理的に制限されるため、他の形式のバイクと比較して小回りが効きません。一般的なテレスコピック式フロントフォークならフォークが回転するだけで大きく切れ角を取れますが、ハブセンターステアではスイングアームが両側のリンクやフレームと干渉しないよう設計する必要があるため、どうしても切れ角が制限されます。​
これは市街地走行や駐車場での取り回し、Uターンなどの方向転換時に顕著な不便さとして現れます。狭い路地での切り返しや、駐車スペースへの出し入れといった日常的な場面で、通常のバイクより大回りを強いられることになります。​
高速走行やサーキット走行では安定性というメリットが活きますが、渋滞路や住宅街など低速で細かい操作が求められるシーンでは、この小回り性能の低さがストレスとなる可能性があります。街乗りメインのライダーにとっては大きなデメリットといえるでしょう。​

ハブセンターステアリング加速時の前輪特性と操作感

リンク機構を通してステアリング操作を伝達する構造上、直接フロントフォークを操作する一般的な機構と比べて、操作の剛性感がやや低く感じられることがあります。ハンドルからの入力がリンクを介して伝わるため、ダイレクト感が若干損なわれる傾向があります。​
加速時にリバウンド量が足りないと感じるシーンも報告されています。特にサーキットの長い下りストレートの先にカントの少ないカーブがある状況では、前輪の存在が希薄に感じられることがあるとされています。これはフロントサスペンションのストローク設定やリンク比の問題ですが、テレスコピック式ほど自由度が高くない設計上の制約があります。​
通常の路面や一般的な速度域では問題になりませんが、かなりのアベレージで走行する際や、特定の路面状況下ではこの特性が顕在化する可能性があります。前輪からの路面インフォメーションの伝わり方も、リンク機構のフリクションの影響を受けるため、慣れるまでは違和感を覚えるライダーもいるでしょう。​

ハブセンターステアリングコスト面での課題と採用メーカーの少なさ

ハブセンターステアリングが広く普及しない最大の理由は、構造の複雑さと特殊性による製造コストの高さです。ビモータのTESI H2は866万円を超える価格設定となっており、同クラスの一般的なスーパースポーツバイクの3倍以上のコストがかかります。​
特許による技術の利用制限も採用を妨げる要因となっています。カワサキが独自のハブセンターステアリング特許を出願した記録もあり、知的財産権の問題が新規参入の障壁となっています。開発投資に見合う市場規模が見込めないため、大手メーカーは量産車への採用に消極的です。
参考)カワサキ設計のビモータモデルが存在した!? ハブステア特許図…

汎用性や整備性の低さも、総合的なコスト増加につながっています。専用部品の製造には少量生産となるため単価が上がり、メンテナンス時の工賃も高額になります。現在ハブセンターステアリングを採用しているのはビモータやヴァイルス、イタルジェットなど極めて限られたメーカーのみで、マスマーケット向けの選択肢とはなり得ていません。​
ハブセンターステアリングの歴史と技術的詳細について - Wikipedia
ビモータTESI H2のハブセンターステアリング機構の詳細解説 - RIDE HI