火山ガス二酸化硫黄とバイクツーリング影響

火山ガス二酸化硫黄とバイクツーリング影響

火山ガス二酸化硫黄とは

火山ガス二酸化硫黄の基本知識
🌋
火山ガスの主成分

水蒸気が90%以上を占め、二酸化硫黄は温度が高い火山ガスに多く含まれる有毒成分です

⚠️
無色透明で目に見えない

二酸化硫黄は無色の気体で空気より重く、谷や窪地に溜まりやすい特性があります

👃
特徴的な刺激臭

硫黄のような独特の刺激臭があり、0.5ppm以上で臭いを感じ始めます

火山ガスは地下のマグマに溶けている揮発性成分が圧力低下によって発泡し、水蒸気、フッ化水素、塩化水素、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化炭素などとなって地表に放出されます。火山ガスの主成分は水蒸気で全体の90%以上を占めており、残りの化学組成は温度によって異なります。
参考)火山ガスについての解説

温度が高い火山ガスには二酸化硫黄(SO₂)、塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)などが多く含まれ、温度が低い火山ガスでは硫化水素(H₂S)、二酸化炭素(CO₂)、窒素(N₂)などが主成分となります。二酸化硫黄は火山噴火で放出される、水と二酸化炭素に次いで最も一般的なガスの一つです。
参考))火山ガス・エアロゾルのガイドライン 二酸化硫黄 (SO2)…

二酸化硫黄は無色の気体で独特の刺激臭があり、周囲の大気より2倍以上密度が大きいため、空気より重く谷や窪地に溜まりやすい性質があります。一般的には0.3~1.4ppmで感知されるようになり、3ppmで容易に認識されるようになります。三宅島では0.5ppm以上で臭いを感じ、500ppmを超えると嗅覚が冒され、むしろ臭気を感じなくなる危険な状態になります。
参考)https://hun-ka.com/products/gasmask-76-set

火山ガス二酸化硫黄の発生メカニズム

火山ガスは地下のマグマに溶けている水素、酸素、塩素、硫黄、炭素、窒素などの揮発性成分が圧力低下などによって発泡し、様々な化学物質として地表に放出されます。マグマから分離した火山ガスは、地表に到達するまでの間に地下水との接触、火山ガス成分相互の反応、地下にたまっている硫黄や有機物からの供給などにより、個々の火山で含まれる成分と濃度が異なります。​
二酸化硫黄の放出量は火山によって大きく異なり、日本の活火山では様々な規模の火山ガス放出が観測されています。三宅島では2000年の噴火以降、1日あたり500~1,500トンの二酸化硫黄が継続的に放出されていました。
参考)火山ガス(二酸化硫黄)の観測

温度範囲による火山ガスの分類では、1200℃から800℃の高温ガスには塩化水素、二酸化硫黄、二酸化炭素、水素が含まれ、800℃から100℃の中温ガスには二酸化硫黄、硫化水素、二酸化炭素が主成分となります。このため火山活動が活発なほど二酸化硫黄の割合が多くなる傾向があります。
参考)https://www.tokyo-geo.or.jp/technical_note/bv/No33N/28.html

火山ガス二酸化硫黄が検出される主要地域

日本国内には86の活火山があり、そのうち57の火山・地域で火山ガスが噴出しており、これは活火山の約7割にあたります。阿蘇山では中岳第一火口の活動が活発になった場合、二酸化硫黄を含んだ水蒸気等が北風にのって南阿蘇村に流れることがあります。
参考)https://www.vill.minamiaso.lg.jp/kiji003571/index.html

箱根の大涌谷では主に硫黄などのガスが噴き出しており、硫化水素、二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素、窒素、メタンなどが含まれる火山ガスが観測されています。大涌谷は観光地として人気があり、バイクでも駐車場から目の前に観光地があるためアクセスしやすい場所です。
参考)【箱根ツーリングスポット】大涌谷はバイクでも行きやすく楽しめ…

宮崎県のえびの高原(硫黄山)周辺では火山ガスの濃度測定が継続的に実施されており、硫化水素20ppm以上、二酸化硫黄5ppm以上が測定され引き続き越えることが想定される場合、注意喚起や立入規制区域の設定などが検討されます。三宅島では島内14か所で二酸化硫黄の濃度をリアルタイムで監視し、濃度が高まった時には火山ガスレベル警報及び注意報が発令されています。
参考)宮崎県:硫黄山周辺の火山ガス濃度測定結果(速報値)

火山ガス二酸化硫黄の健康影響と症状

二酸化硫黄は呼吸器を刺激し、せき、気管支喘息、気管支炎などの障害を引き起こします。0.5ppm以上で臭いを感じ、30~40ppm以上で呼吸困難を引き起こし、100ppmの濃度では30分~1時間が耐えうる限界とされています。さらに400ppm以上の場合、数分で生命に危険が及ぶ極めて危険な状態になります。​
二酸化硫黄は目、のど、気道に刺激を与え、さらされ過ぎると短期的に炎症や痛みを引き起こし、目が赤くなる、せきが出る、呼吸がしづらい、胸が苦しいなどの症状が表れます。喘息の方は特に二酸化硫黄の影響を受けやすく、0.2~0.5ppm程度の低い濃度で発作を起こすことがあります。
参考)https://kazan.or.jp/J/QA/topic/topic43.html

健康な人が運動や深呼吸の際に呼吸器系に影響を受ける閾値は1~5ppmで、5ppmで健康な人における気道抵抗の増加、6ppmで目、鼻、のどへの瞬時の刺激、10ppmで目、鼻、のどへの刺激の増加が見られます。20ppm以上の継続的な曝露後には麻痺や死亡の危険があり、150ppmは健康な人が数分だけ耐えられる最大濃度です。​
阿蘇山では1980年1月から1995年10月の間に火山ガスの吸引によって59人が手当てを受け、過去15年間に二酸化硫黄で7人が死亡しており、死者の半数以上は喘息の病歴がありました。​

火山ガス二酸化硫黄の濃度基準と規制値

日本の環境基準では二酸化硫黄の1時間値は0.1ppm(260μg/m³)、24時間値は0.04ppm(110μg/m³)と定められています。世界保健機構(WHO)は10分間の基準として0.175ppm(500μg/m³)、24時間の基準として0.048ppm(125μg/m³)、1年の基準として0.019ppm(50μg/m³)を設定しています。​
職業上の曝露限界としては、米国の基準で8時間の時間加重平均(TWA)が2ppm(5000μg/m³)、短期曝露限界(STEL)の15分値が5ppm(13000μg/m³)と定められています。阿蘇山の火口では、二酸化硫黄のレベルが1分間継続して0.2ppmを超えた場合、もしくは瞬間値で5.0ppmを超えた場合には観光客は避難することになっています。​
ハワイ火山国立公園では、公園のスタッフと訪問客を守るために二酸化硫黄への注意を呼びかける独自の基準を2000年に設定しました。宮崎県のえびの高原では硫化水素20ppm以上、二酸化硫黄5ppm以上が測定され引き続き越えることが想定される場合、注意喚起や立入規制区域の設定などが検討されます。​
国によって環境ガイドラインには非常に幅広い範囲のものが存在し、1時間の基準値は最小0.057ppmから最大1ppm、24時間の基準値は最小0.019ppmから最大0.153ppm、1年の基準値は最小0.008ppmから最大0.038ppmまで様々です。​

バイクツーリング時の火山ガス対策とマスク選び

火山地帯をツーリングする際は、火山および火山ガスについての最低限の知識を持ち、立て看板に注意し行動する場所の危険性を認識し、危険区域に立ち入らず、決められたルートからはずれないなど個々に身を守る努力が必要です。火山ガスは透明で目に見えませんが、空気より重いため谷や窪地に溜まっていることがあり、ガスの溜まっている可能性がある場所には近づかないようにしましょう。​
火山ガス対策には二酸化硫黄(亜硫酸ガス)と硫化水素用に対応した国家検定品規格に合格した日本製の防毒マスクの使用が推奨されます。二酸化硫黄に対しては国家検定合格品のマスクの使用を義務づけられています。防毒マスクが使用できるのは酸素濃度18%以上の環境、常温・常湿及び常圧の環境で、環境空気中の有毒ガス等の平均濃度が0.1%を超えない場合です。​
火山ガス対策マスクの吸収缶は使用期限が製造日より2年で、二酸化硫黄の場合はガス濃度200ppmで約130分が交換の目安となります。ガスの濃度が高いほど交換の目安が早くなるため、高濃度地域では頻繁な交換が必要です。​
火山ガスによる死亡事故は、火山ガスが噴出している周辺の窪地や谷地形などで発生し、また風が弱く曇天のときに発生しやすい傾向があります。これは二酸化硫黄や硫化水素、二酸化炭素などの成分が空気に比べて1.2~2.2倍重いために低い場所にたまりやすく、無風や曇天のときには噴出した火山ガスが拡散しにくく地表近くが高濃度になりやすいためです。​
気象庁の火山ガスについての詳しい解説では、火山ガスの成分や毒性、事故対策について詳細な情報が提供されています
国際火山保健ハザードネットワークでは二酸化硫黄の特性、曝露の影響、既存のガイドライン、火山における事例について包括的な情報がまとめられています