金属疲労と勤続疲労バイクライダー必見の原因と対策法

金属疲労と勤続疲労バイクライダー必見の原因と対策法

金属疲労と勤続疲労

📋 この記事のポイント
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金属疲労のメカニズム

繰り返しの応力がバイク部品に与える影響と破壊プロセスを理解しましょう

⚠️
勤続疲労との違い

言葉の由来と正しい使い分けを知って、適切な対策を講じましょう

🛡️
予防と対策方法

定期的な点検とメンテナンスでバイクの寿命を延ばす実践的な方法

バイクに乗る方なら「きんぞくひろう」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。実はこの言葉には「金属疲労」と「勤続疲労」という2つの表記があり、それぞれ異なる意味を持っています。金属疲労は実際の金属材料に起こる物理現象を指し、勤続疲労は金属疲労をもじった造語で、長年の使用による性能低下を表現する際に使われます。バイクのフレームやパーツに繰り返し力が加わることで、徐々に劣化していく現象が金属疲労であり、バイクライダーにとって理解しておくべき重要な概念です。
参考)長年プレーし続けることによって溜まる疲労を「きんぞくひろう」…

金属疲労の基本原理と発生メカニズム


金属疲労とショットピーニング
金属疲労とは、金属に同じ方向の荷重を繰り返しかけることによって劣化する現象です。もともとは強い負荷に耐えられる金属製品であっても、弱い力を繰り返しかけられると破壊されてしまうことがあります。この現象は19世紀頃からずっと研究が進められており、金属が破断して起きた事故の7割から8割以上は金属疲労が原因だったと報告されています。
参考)金属疲労の原因は?起こりやすい場所と金属破壊事故の防止策を紹…

金属疲労が起こるメカニズムは、金属が小さな力を受けたときにクラックが発生することから始まります。クラックが発生した後に同じ方向に力を受け続けると、徐々に割れ目が広がっていきます。たとえそれが弱い力だったとしても、繰り返して力をかけられることで傷が大きくなり、強度が低下してしまうのです。そして、支え切れなくなった時点で疲労破壊が起こります。使用環境によっては物理的に付いた傷が原因で、繰り返し応力による疲労破壊が促進されることもあります。​
バイクのフレームやパーツにおいて、走行中の振動や衝撃は常に金属部分に応力をかけ続けています。特にエンジンからの振動や路面からの衝撃は、見えないレベルでも金属内部に微細なクラックを生じさせる原因となります。
参考)https://www.fujiwpc.co.jp/wpc/

金属疲労がバイクフレームに与える影響

バイクのフレームは走行中に常に様々な応力を受けています。アルミフレームの場合、金属疲労により5年から10年程度で寿命を迎える可能性があります。定期的なメンテナンスを怠っていた場合は、それよりも少ない数年で、フレームにヒビが入ってしまうこともあります。
参考)https://www.mdpi.com/2075-4663/3/2/87/pdf?version=1434454688

アルミフレームは頑丈なイメージがありますが、実は疲労限界点が存在します。落車などで大きな負荷がフレームにかかった場合、一見大丈夫でも金属疲労が多大に進行している恐れがあり、少ししたらいきなりクラックが入るなんてことも考えられます。この金属疲労はある種の寿命なので回復させることはできません。
参考)筋金抜きライダーのブログ href="http://sujigane.blogspot.com/2013/02/blog-post_28.html" target="_blank">http://sujigane.blogspot.com/2013/02/blog-post_28.htmlamp;#65312; TORIAL: …

バイクのフレーム素材によっても金属疲労の進行度合いは異なります。アルミ合金は軽量でありながら高強度で耐久性あるフレームを作ることが可能ですが、剛性を上げることで路面からの振動を吸収しにくくなり、金属疲労が蓄積しやすい側面もあります。一方、クロモリ(鉄や銅などが組み合わされた素材)は数十年と持つ長寿命が特徴です。
参考)ロードバイクフレームの寿命は長い?【ロードバイク初心者向け】…

フレームの寿命を延ばすためには、塗装の浮きやヒビ割れがないかを定期的にメンテナンス(確認)する必要があります。適切な管理を行えば、アルミフレームでも10年程度は使用できるとされています。​

金属疲労が起こりやすいバイク部品の特定箇所

バイクの中でも特に金属疲労が起こりやすい部品がいくつか存在します。エキセントリックシャフト(エキセン)は、ロータリーエンジンの心臓部として知られており、ハイパワー化などで想定以上のストレス(金属疲労)が溜まると、ジャーナル側面の穴周辺にクラックが入ることがあります。最悪の場合、割れることもあるため、金属疲労対策が重要です。
参考)https://www.fujiwpc.co.jp/motor-blog/motor-blog-0-148/

チェーンとスプロケットも金属疲労の影響を受けやすい部品です。チェーンが伸びるとチェーンのピッチ(コマのローラーとローラーの間隔)と、スプロケットのピッチ(歯と歯の間隔)が合わなくなる「ピッチずれ」を起こします。この状態で走ると振動や騒音が大きくなって乗り心地が悪化するのはもちろん、厳密に言えば駆動ロスが大きくなるため燃費も悪化します。さらにピッチずれを起こした状態で走ると、スプロケットの摩耗が加速度的に進んでしまい、さらにピッチずれが大きくなる悪循環に陥ります。
参考)バイクのチェーンってこんなに伸びるの?【プロに聞く!正しいチ…

WPC処理による金属疲労対策について詳しく解説
この参考リンクでは、金属表面を微小ディンプルへ変化させることで疲労強度を向上させる技術が紹介されています。​
ローラー部分はドライブスプロケット・ドリブンスプロケットと直接噛み合う部品で、チェーン屈曲時はスプロケットの歯底と強く接触しながら回転し、大きな衝撃と摩擦を受けます。これらの部品は定期的な点検と交換が必要です。
参考)スプロケット交換時期を徹底解説|寿命を延ばすメンテナンステク…

金属疲労の予防と点検方法

金属疲労を予防するためには、力を小さくするか、力を受ける回数を減らすかのどちらかしかありません。力を小さくする方法としては、肉厚を厚くしたり、力を分散できるような形にすることで小さくすることができます。力を受ける回数を減らす方法は、バイクの場合、走行距離を少なくすることで回避できます。100万回の繰り返しで壊れる物でも、50万回に減らせば壊れることはないのです。
参考)オートバイで使用される部品と材料の剛性と強度の違いを理解する…

金属疲労の点検方法として、定期的な目視チェックが基本となります。フレームを拭く際には、見えない汚れやおかしな部分を早期発見することができます。特に溶接部やボルト接合部など、応力が集中しやすい箇所は念入りに確認する必要があります。
参考)http://library.jsce.or.jp/Image_DB/committee/steel_structure/book/44644/44644-0075.pdf

赤外線カメラを用いた金属疲労限界の迅速測定技術の紹介
この参考リンクでは、赤外線カメラを利用して金属材料の疲労限界を迅速に推定する技術が解説されています。
参考)赤外線カメラを用いた金属疲労限界の迅速測定 / 純Tiの疲労…

WPC処理という金属表面改質処理を施すことで、金属疲労対策に効果があります。WPC処理を行ったものでは、表面組織が微細化し異常層も消滅し、疲労強度も格段に上がります。キズなどないように見える金属表面も顕微鏡で覗くと不均一な状態となっており、目に見えないクラックや材質のムラが存在しますが、WPC処理によってこれらの問題を改善できます。​
段差を降りたりするときに異常を感じたら運転をやめ、自転車屋さんやバイクショップに出向くことが重要です。しばらく使っているとフレームに何か変な音がするときがあり、これは金属疲労の兆候である可能性があります。​

勤続疲労という言葉の由来と使用例

「勤続疲労」という言葉は「金属疲労」のもじりであり、長年の勤務にくたびれた状態を指す造語です。この用語は1990年(平成2年)の流行語の一つに挙げられており、主にプロ野球のリリーフ投手など、長期間に渡って働き続けることで蓄積された疲労により、能力やパフォーマンスが低下する症状を表現する際に使われます。
参考)勤続疲労とは (キンゾクヒロウとは) [単語記事] - ニコ…

特にプロ野球では、年間50から60試合に登板するリリーフ投手において発症しやすいとされています。2から3年ほど一軍で活躍すると発症しやすくなり、球速の低下やボールのキレの低下、球威の低下、制球の悪化といった症状が表れます。勤続疲労の厄介なところは、目に見える明確な故障ではなく、「投げられるけど調子が悪い」という状態が慢性的に続くことにあります。​
プロ野球における勤続疲労の実例と統計データ
この参考リンクでは、連続で50試合以上に登板した投手のその後の成績変化について詳しく分析されています。
参考)“勤続疲労”に要注意…連続で50試合以上に登板した投手のその…

近年はファンの間で人口に膾炙したため、スポーツ紙などでも使われることがあります。スポーツ関係以外では、ビジネス系の記事でも稀に使われていることがあり、長時間労働による疲労や判断力の低下を表現する際に用いられます。実際、長時間労働や連勤による疲労は、判断力や思考力の低下、咄嗟の行動の遅れなどをもたらし、労働者の作業パフォーマンスを低下させます。​
バイクに関連する文脈では、「勤続疲労」という表記が誤って使われることがありますが、正しくは「金属疲労」です。ただし、バイクに長年乗り続けているライダー自身の疲労を表現する際には、ユーモアを込めて「勤続疲労」という言葉を使うこともあります。
参考)勤続疲労と金属疲労

金属疲労対策のための表面処理技術

金属疲労を防ぐための最新技術として、様々な表面処理方法が開発されています。WPC処理(ワンダープロセスクラフト処理)は、表面形状を微小ディンプルへ変化させることによって摩擦摩耗特性を向上させる技術です。この処理により、繰り返し力がかかる切削工具・金型・機械部品などの寿命を1.5から3倍に延ばすことが可能になります。
参考)金属表面改質処理 href="https://oxiso.co.jp/service/" target="_blank">https://oxiso.co.jp/service/amp;#8211; OXISO|株式会社 オキ…

WPC処理の効果として以下の点が挙げられます:​
欠け、バリ、カジリ付きの軽減:表面の不均一性を改善し、応力集中を防ぎます
摩擦を軽減して耐久性アップ:滑らかな表面により、部品同士の摩耗を減少させます
表面組織の微細化:異常層を消滅させ、疲労強度を格段に向上させます
DLCコーティング(ダイヤモンドライクカーボンコーティング)とWPC処理を組み合わせることで、さらに高い効果が得られます。DLCコーティングは下地にWPC処理を施すため、クラックなど金属疲労対策には効果テキメンです。エキセンなどの重要部品に施すことで、ハイパワー化に伴う金属疲労リスクを大幅に低減できます。​
エキセントリックシャフトの疲労破壊事例と対策
この参考リンクでは、ロータリーエンジンのエキセンにWPC処理とDLCコーティングを施すことで疲労破壊を防ぐ方法が詳しく解説されています。​
疲労強度は曲げ応力、引張り応力と各種要因によって決定されますが、溶接ベルトや接合部では接合部の品質によって寿命が大きく左右されます。金属疲労対策として表面処理を施す際は、専門業者に相談し、使用環境や要求性能に応じた最適な処理方法を選択することが重要です。​

バイク長寿命化のためのメンテナンス計画

バイクの寿命を延ばすためには、計画的なメンテナンスが不可欠です。一般的にバイクの寿命は「走行距離10万キロ」「生産から10年」というのが一般的な寿命として言われていますが、適切なメンテナンスを行えば、これを大きく超えて使用することも可能です。
参考)【バイクの寿命の話】えっ、まだそのバイク乗ってるの?何キロ?…

定期点検の重要項目
🔍 フレームの目視点検:塗装の浮き、ヒビ割れ、変色などをチェックします​
🔍 チェーンとスプロケットの確認:伸び、摩耗状態、ピッチずれの有無を確認します​
🔍 ボルト類の増し締め:振動により緩んだボルトを定期的に締め直します
🔍 異音の確認:走行中の異常な音や振動に注意を払います​
紫外線対策も金属疲労とは別に重要なメンテナンス要素です。バイクは軽量化やコストカットの為に多くの樹脂パーツが使われており、樹脂パーツは紫外線による影響で艶が無くなっていきます。バイクカバーやガレージで紫外線を防ぐことで、樹脂パーツの劣化を抑えることができます。
参考)バイクの樹脂パーツを復活させるには?白くなったパーツを黒に戻…

雨や紫外線を防ぐため、屋内や日陰での保管、UVカット機能付きバイクカバーの使用が推奨されます。特にスクーターは樹脂パーツが多いため、バイク全体のイメージを損なってしまう前に対策を講じることが大切です。
参考)バイクの紫外線対策!夏の日差しで劣化・色あせを防ぐ方法とおす…

フレームを拭く際は、見えない汚れやおかしな部分を早期発見することができます。カバーを長時間付けている場合は、タオルなどで湿気を拭くと安心です。その湿気のせいでフレームを痛めたり、ネジをサビらせる可能性があるためです。​
バイクのチェーンメンテナンスでは、中型から大型バイクの場合、チェーンは100リンク以上あるため、ブッシュやピンが摩耗して仮に1リンクで隙間が0.1mm広がっただけでも、チェーン全体では1cmほど長くなります。定期的なチェーン張りのチェックと適切な潤滑管理が必要です。
参考)ライテクをマナボウ「チェーンの張り チェックしていますか?」…

チェーンの張りチェックの重要性と方法
この参考リンクでは、チェーンのコマとコマを繋いでいるピンとブッシュの摩耗がチェーン全体の伸びになるメカニズムが詳しく解説されています。​
段差を降りるときはスピードを落とすことも重要です。バイクのフレームは、特にアルミやカーボン素材の場合、外側からの衝撃に弱いため、小さな段差でも慎重に走行することでフレームへの負担を軽減できます。異常を感じたら運転をやめ、専門店で点検を受けることで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。​
金属疲労は目に見えない形で進行していくため、定期的な専門家による点検と、日常的な自己チェックの両方を組み合わせることが、バイクの長寿命化につながります。​

 

 


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