
転がり抵抗とは、タイヤが地面に接地して変形しながら転がる際に生じる抵抗のことです。路面との摩擦やタイヤ自体の変形によって失われるエネルギーを指し、ロードバイクの走行性能に大きな影響を与えます。
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ロードバイクの走行抵抗全体のうち、空気抵抗の次に大きいのが転がり抵抗です。特に低速走行時や登坂時には、転がり抵抗の影響が相対的に大きくなります。高速走行時は抵抗の多くが空気抵抗によるものですが、低速では転がり抵抗が速度に与える影響が無視できません。
参考)https://ysroad.co.jp/matsuyama-emifull/2024/08/09/158423
転がり抵抗が250Wから235Wへ15W削減されると、同じ速度を維持するために必要なパワーが大幅に減少します。この15Wというパワーの違いは、長時間のライドでは疲労度に顕著な差を生み出し、ライダーの体力消耗を抑える効果があります。転がり抵抗を最小化することで、同じ力でより速く、より長く進むことができるのです。
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転がり抵抗は転がり抵抗係数(Crr)という数値で表され、この値が小さいほど走行抵抗が少なく効率的です。転がり抵抗係数は専門の測定機関やメーカーによってテストされ、タイヤ選びの重要な指標となっています。
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実際の測定では、速度が増せば増すほど転がり抵抗も増える傾向があります。また、最新のワイドリム化によるリム幅の拡大により、転がり抵抗係数が下がることも明らかになっています。リム幅がタイヤ幅の72%を超える場合、それ以上リム幅を広げても転がり抵抗は増加しないという研究結果もあります。
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パワーメーターを使わずに転がり抵抗を測定する方法も存在します。同じ道を惰性走行で往復して速度データを収集し、追い風や向かい風、微妙な勾配の影響をデータから除去することで、転がり抵抗を算出できます。この方法では、最低でも3往復分の速度データが必要ですが、より多くのデータを収集すれば信頼性が高まります。
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タイヤの転がり抵抗を決定する主な要素には、タイヤのコンパウンド(ゴムの配合)、ケーシング構造、空気圧、タイヤ幅があります。
参考)https://ysroad.co.jp/online/2024/05/10/18930
コンパウンドは、タイヤのトレッド部分のゴムの硬さを指します。硬いゴムは変形量が少なく転がり抵抗も低くなり、耐摩耗性が高くなります。一方、柔らかいゴムはグリップ力が優れている反面、転がり抵抗は大きくなります。最近では環境問題への配慮から、ソフトコンパウンドでも耐久性があるゴムや、転がり抵抗を飛躍的に高めつつグリップするという、本来なら相反する性能を両立した製品も開発されています。
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タイヤ幅も転がり抵抗に大きく影響します。太いタイヤと細いタイヤで同じ空気圧であれば、接地面積はほぼ変わりません。しかし、細いタイヤの接地形状は幅が狭く前後に長いのに対し、太いタイヤの接地形状は幅が広く前後に短くなります。横に広い接地形状の方がタイヤの実質的なひずみ量が小さく、より転がり抵抗が軽いことが判明しています。
天然ゴムは反発弾性が大きく、転がり抵抗が少ない特性を持っています。また、耐疲労性及び強度があるため、高性能タイヤに多く使用されています。
参考)タイヤの基礎知識
タイヤの空気圧は転がり抵抗に直接影響する重要な要素です。平滑な地面ではタイヤを高圧にするほど転がり抵抗を小さくできますが、実際の路面では一定の内圧以上では転がり抵抗が逆に大きくなります。
参考)taro-blog.net
低圧ではタイヤが変形して元の形状に戻る際にエネルギーが損失しやすく、高圧ではインピーダンスによりエネルギーが損失しやすいため、最も軽く転がるタイヤ内圧が存在します。体重65kgの人が23Cのタイヤを履いた場合、推奨空気圧は7気圧ほどで、体重が+15kgにつき空気圧は+1気圧が目安となります。
意外な事実として、スピードが速いほど空気圧は下げた方が良いというデータがあります。速度が最も遅いときに最も低い転がり抵抗を示し、最も速度が高いときに最も高い転がり抵抗を示すため、速度が速くなるほど転がり抵抗のブレイクポイントが早く訪れます。これは、速度が速い方が路面がタイヤにもたらす衝撃の頻度と激しさが増すためと考えられています。
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前輪と後輪では荷重配分が異なり、一般にフロント45%、リア55%程度と言われています。そのため前輪を後輪よりも0.5気圧ほど低くすることで、快適性も増します。
ライダーの体重はタイヤ選びと空気圧設定において重要な要素です。体重65kgと73kgのライダーでは、どのタイヤ幅でもほぼ同じ転がり抵抗になる傾向があります。
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しかし、体重82kgのライダーの場合は状況が異なります。23Cのタイヤ幅だと転がり抵抗が大きくなり、25Cか28Cが適しています。具体的な数値では、体重82kgで23Cを使用すると6.5bar設定で64.1Wの転がり抵抗が発生しますが、28Cを5.0barで使用すると38.7Wまで削減できます。
太いタイヤほど空気量が増えるため、空気圧を下げることができ、乗り心地とグリップ力、さらには路面伝達性が向上します。25Cでは23Cに比べて0.5気圧ほど下げることができ、快適でかつ無駄の少ない乗車フィーリングになります。
興味深いことに、空気圧がかなり低い(3.5bar付近)状態でも意外に転がり抵抗は大きく変わりませんでした。ただし、細いタイヤは適正空気圧が高めですので、3.5barで常用するとリム打ちパンクするリスクが大きくなります。
チューブレスタイヤは、タイヤ内にチューブを入れず、タイヤとリムの気密性とシーラント剤によってエアを保持するシステムです。耐パンク性・快適性・転がり性能のトータルバランスに優れています。
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チューブレスの主なメリットとして、転がり抵抗が非常に低いことが挙げられます。チューブとタイヤの間の摩擦がなくなるため、クリンチャーシステムと比較してエネルギーロスが少なくなります。また、低圧での運用が可能で、快適性とグリップ力が向上します。
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さらに、リム打ちパンクが起きない点も大きな利点です。小さい穴ならシーラント剤が自動でふさぐため、パンク耐性が高くなります。これにより、より低い空気圧で運用でき、結果として転がり抵抗を最小化しながら快適性を保つことができます。
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ただし、チューブレスには注意点もあります。取り付けがやや難しく、ビード上げに苦労することがあります。また、定期的なメンテナンスが必要で、シーラント補充などの手間がかかります。チューブレス対応リムが前提となるため、初期コストが高めになる点も考慮が必要です。
路面状況は転がり抵抗に大きな影響を与える要因です。平滑な地面ではタイヤを高圧にするほど転がり抵抗を小さくできますが、実際の路面では凸凹によって状況が変わります。
実際の路面では一定の内圧以上では転がり抵抗が逆に大きくなります。これはインピーダンスと呼ばれる要因で、路面の凸凹などによって転がり抵抗が変化するためです。荒れた路面を走る場合は、乗り心地と路面伝達性を高めるために空気圧を下げる必要があります。
濡れた路面を走る場合は、グリップ力を重視する必要があります。高圧すぎると接地面積が減ってしまい、グリップ力が最大限発揮できない場合があるため、グリップ力を重視するなら少し空気圧を低くすることが推奨されます。
ヒルクライムの場合は、低速かつグリップ力が要らないという考えから、空気圧を高めに設定する人が多いです。しかし、路面状況によっては、適度に空気圧を下げることで転がり抵抗を最小化できる場合もあります。
ふだん走る道路コンディションは個人差があるため、路面がきれいな場所に住む人は高めの空気圧でも快適ですが、凸凹道が多い地域の人はそれに合わせて微調整することが重要です。荒れた路面を走る場合の目安は、通常より0.5~1気圧低く設定することです。
参考リンクとして、コンチネンタルの公式サイトでは転がり抵抗とタイヤ性能に関する詳細な技術情報が提供されています。
最速はこれ!ロードバイクタイヤ転がり抵抗ランキング
タイヤメーカーのミシュランでは、転がり抵抗が走行に与える影響について科学的な説明を公開しています。