高張力鋼規格とバイクフレーム選び方強度

高張力鋼規格とバイクフレーム選び方強度

高張力鋼規格の基準

この記事のポイント
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JIS規格による分類

490MPa以上の引張強度を持つ高張力鋼の規格体系を解説

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バイクフレームへの応用

軽量化と強度を両立する高張力鋼の特性と選び方

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加工と熱処理

溶接性や熱処理による機械的性質の最適化方法

高張力鋼規格のJIS基準と分類


TRUSCO(トラスコ) 高張力鋼用全姿勢溶接棒 心線径3.2mm 棒長350mm 1kg TSL55-3210

 

高張力鋼は日本工業規格(JIS)において、引張強さ490MPa以上の鋼材として定義されています。JIS G3106では溶接構造用圧延鋼材として、SM490、SM520、SM570などの規格が設定されており、数字は引張強さの最低保証値を表しています。これに対し、国際規格ISO環太平洋規格「System-B」では590MPa級以上が高張力鋼の区分とされており、国によって基準が異なる点に注意が必要です。
参考)https://www-it.jwes.or.jp/technology/1_3.html

バイクフレーム用途では、この規格体系が車体設計の基礎となります。引張強度490MPa級のハイテンション鋼は、一般的な自転車フレームに広く採用されていますが、より高性能な590MPa級や780MPa級も製造されており、用途に応じた選択が可能です。JFE鋼鉄などの大手メーカーは、590N/mm²級から980N/mm²級までの多彩な強度グレードをラインアップしています。
参考)自転車のフレームの素材についてですが、ハイテンション鋼につい…

規格記号の読み方として、SM570であれば「S」が鋼材、「M」が溶接構造用を示し、「570」が引張強さ570N/mm²の最低保証値を意味します。AからCまでのアルファベット記号は炭素含有量や溶接性のレベルを示し、Cグレードほど溶接性に優れた高品質材となります。
参考)JISG3106:2017 溶接構造用圧延鋼材

高張力鋼規格の引張強度と機械的性質

引張強度は材料が引張荷重に耐えられる最大応力を示し、高張力鋼の性能を測る最も重要な指標です。一般的な低炭素鋼の引張強度が300MPa程度であるのに対し、高張力鋼は490MPa以上、超高張力鋼(超ハイテン)では980MPa以上の強度を持ちます。バイクフレーム用途では、クロムモリブデン鋼が約900MPaの引張強度を持ち、高張力鋼はその約半分から2/3程度の強度となります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8071465/

機械的性質として、高張力鋼は降伏点、引張強さ、伸びの3つの要素で評価されます。SM490材の場合、降伏点は325N/mm²以上、引張強さは490〜610N/mm²、伸びは17%以上(板厚40mm以下)と規定されています。これらの数値は板厚によって変動し、厚板になるほど若干低下する傾向があります。
参考)SM材 溶接構造用圧延鋼材 JIS G3106 【SM490…

縦弾性係数(ヤング率)については、低炭素鋼、高張力鋼、クロムモリブデン鋼ともにほぼ等しく約210GPaで、アルミ合金(70GPa程度)やチタン合金(110GPa程度)と比較して高い剛性を示します。この特性により、鋼材フレームは適度な肉厚で十分な剛性を確保できます。
参考)自転車のフレーム href="https://jitetan.com/frame.html" target="_blank">https://jitetan.com/frame.htmlamp;#8211; 自転車探検!

高張力鋼規格の溶接性と熱処理特性

高張力鋼の最大の特徴は優れた溶接性にあり、JIS G3106では「橋梁、船舶、車両、石油貯槽、容器およびその他の溶接構造物に用いる熱間圧延鋼材」として規定されています。一般構造用鋼材(SS材)が炭素含有量で強度を調整しているのに対し、高張力鋼は合金元素の添加により強度を高めているため、炭素当量が低く抑えられ溶接性が向上しています。
参考)https://www.kobelco.co.jp/products/steel-aluminum/plate/bridge/pdf/e001.pdf

溶接時の熱影響部(HAZ)では、急速な加熱と冷却により組織変化が生じ、硬化や脆化が発生する可能性があります。特に炭素量が高い高張力鋼では、予熱や後熱処理を行うことで靱性を付与し、溶接強度を向上させることができます。WEL-TEN590の場合、予熱条件5kA/6サイクル、後熱条件5kA/2サイクルの最適化処理により、引張せん断強さが7%、十字引張強さが13%向上したという実験結果があります。
参考)https://www.aichi-inst.jp/sangyou/research/report/05-p060-sg13.pdf

熱処理による組織制御では、制御圧延(TMCP:Thermo-Mechanical Control Process)技術が広く採用されています。この技術は圧延温度と冷却速度を精密に制御することで、合金添加量を抑えながら高強度と優れた靱性、溶接性を同時に実現します。バイクフレーム製造では、溶接後の水冷処理により疲労強度を改善できることが確認されており、1.8kNの応力下で疲労破壊の繰り返し数が約20万回延伸した事例も報告されています。
参考)高張力鋼とは? 専門商社がわかりやすく解説します。vol.3…

愛知県産業技術センターの研究報告では、高張力鋼の抵抗スポット溶接における同時熱処理技術について詳細な実験データが公開されています

高張力鋼規格によるバイクフレームの軽量化設計

高張力鋼をバイクフレームに採用する最大のメリットは、強度を維持しながら軽量化を実現できる点です。引張強度が高い材料は、同じ荷重に対してより薄い肉厚で設計できるため、フレーム重量を削減できます。例えば、引張強度が2倍になれば、理論上は肉厚を半分にしても同等の強度を維持できます。
参考)自転車の素材とレシピ / RALEIGH / ラレー

バイクフレーム設計では、バテッド(butted)チューブと呼ばれる肉厚変化を持つパイプが効果的です。これは応力集中部分のみ肉厚を増やし、応力の低い部分は薄肉化する手法で、高張力鋼の特性を最大限に活用できます。有限要素解析(FEA)を用いた研究では、バテッドチューブの採用により、質量を減少させながら応力分布の変化を最小限に抑えられることが実証されています。
参考)https://www.mdpi.com/2504-3900/2/6/216/pdf?version=1521788087

ただし、高張力鋼にも限界があり、安価な自転車に使用される「名ばかりのハイテンション鋼」は粗悪な品質の場合が多く、クロムモリブデン鋼と比較して靱性(粘り強さ)が著しく劣る傾向があります。高品質な高張力鋼では引張強度490MPa以上の性能を持ちますが、低グレード品はその基準をわずかに満たす程度で、実用性能に大きな差があります。そのため、フレーム選択時には単に「ハイテンション鋼」という表記だけでなく、具体的な規格や引張強度の数値を確認することが重要です。
参考)【高張力鋼材】軽くて丈夫!今注目の鋼材について徹底解説

高張力鋼規格とバイク用途での耐久性評価

バイクフレームの耐久性は、静的強度だけでなく疲労強度や衝撃吸収性能も重要な評価項目となります。高張力鋼は繰り返し荷重に対する疲労特性に優れており、長期使用における信頼性が高い材料です。溶接後の熱処理を適切に行うことで、疲労強度をさらに向上させることが可能です。
参考)https://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0050010150

実使用環境では、バイクフレームには曲げ荷重、ねじり荷重、衝撃荷重など多様な応力が複合的に作用します。高張力鋼の縦弾性係数は約210GPaと高く、適度な剛性により変形を抑制しつつ、ある程度のしなりによって路面からの衝撃を吸収します。これはクロムモリブデン鋼と同等の特性であり、アルミ合金フレームよりも振動吸収性に優れています。
参考)https://www.matec-conferences.org/articles/matecconf/pdf/2017/09/matecconf_icmme2017_07008.pdf

グレード選択の指針として、一般的な街乗り用途では490MPa級で十分な性能が得られますが、スポーツ走行やツーリングなど高負荷が予想される用途では590MPa級以上の選択が推奨されます。また、腐食環境での使用を想定する場合は、耐候性鋼板グレードを選択することで、長期耐久性をさらに向上させることができます。塗装や防錆処理と組み合わせることで、高張力鋼フレームは数十年にわたる使用にも耐える耐久性を発揮します。
参考)https://www.jfe-steel.co.jp/products/atuita/catalog/c1j-002.pdf

JFE鋼鉄のカタログでは、JFE-HITENシリーズの詳細な規格と用途別推奨グレードが掲載されています

 

 


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