

ブリヂストンの空気バネは、ゴム製ベローズ内に空気を封入し、その内圧を調整することで振動や衝撃を吸収する高性能な防振装置です。従来の金属バネでは実現困難だった柔らかいバネ定数を持ち、産業機械等で防振・防音用として広く採用されています。ブリヂストンはファイアストン社を買収し、空気バネの生産技術を米国のファイアストンインダストリアルプロダクツカンパニー(FSIP)に移管しており、世界的な生産体制を構築しています。
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空気バネの最大の特徴は、内圧を変えることで負荷荷重範囲を広く調整でき、荷重の大きさに関係なく一定の優れた防振効果が得られる点です。また、補助タンクと絞りを組み合わせることで空気減衰により共振を防ぎ、金属バネに見られるサージング現象が起こらないため防音効果にも優れています。取付け高さの割にストロークを大きく取れることや、給油の必要がなく保守が極めて簡単である点も産業用途で高く評価されています。
参考)空気バネ
ブリヂストンの空気バネには、締め付け型とセルフシール型の2種類があり、用途に応じて最適な製品を選択できます。標準品としてベローズ、中間リング、締め金具、配管型上下面板などを組み合わせた組立品が用意されており、設置の容易性も考慮されています。
ブリヂストンの空気バネは、内部にコード層を配置したゴムベローズと、それを取り付ける上下の金具から構成されています。布入特種ゴム材料で作られたベロー形のベローズに、円盤状の取付用鋼板を上下に配置した構造が基本です。取付金具は圧力容器の一部として機能すると同時に、ゴム膜を固定する役割も担っています。
参考)https://jsse-web.jp/file/types/36-37.pdf
空気バネの動作原理は、ベローズ内に圧縮空気を封入し、その空気圧により荷重を支持するというシンプルなものです。空気の弾性を利用したバネであるため、金属バネやゴムバネとは異なる優れた特性を発揮します。ベローズは柔軟性と気密性に優れたゴムに補強繊維を埋め込んで強度を向上させており、圧縮空気の圧力変化に応じて伸縮します。
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一般的な産業用空気バネには、ダイアフラムと補助空気室が絞りを含む配管で接続された構造もあります。この構造により、バネ定数と振動伝達率を最適化し、動的な状態での台車から車体への振動の伝わりやすさを制御できます。空気バネの振動はバネとダッシュポットを組み合わせたモデルで表現でき、流体抵抗により減衰効果を得ることが可能です。
参考)https://sumitomoelectric.com/jp/sites/japan/files/2021-07/download_documents/196-03.pdf
空気バネの固有振動数は2.0~3.0Hzと非常に低く、これが高い防振効果の源泉となっています。金属バネ(コイル)式の5~10Hz、防振ゴム式の10Hz以上と比較して、最も低い固有振動数を実現しており、防振領域となる周波数が広く振動伝達特性の数値も小さいため、最も効果の高い防振材料です。
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ブリヂストンの空気バネは、従来の防振ゴムでは対策が難しかった20Hz以下の低周波振動域でも、防振効果を大幅に改善できる性能を持っています。特に産業機械の防振用途では、空気バネ式は防振ゴム式より約10倍の除振性能を発揮し、その差は低周波領域で顕著に表れます。
参考)https://www.monotaro.com/s/q-%E3%83%96%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3%E7%A9%BA%E6%B0%97%E3%83%90%E3%83%8D/
防振性能の高さの理由として、空気バネは金属バネに見られるサージング(高周波伝搬)現象が起こらず、上下金具の他に空気とゴム膜で構成されているため高周波振動を絶縁でき、防音効果が優れている点が挙げられます。また、構造が柔軟であるため軸方向だけでなく横方向の変位にも対応でき、機器の設置における自由度が高いのも特徴です。
参考)https://www.powertechno.co.jp/images/catalog/Air_Springs_20240612.pdf
ブリヂストンのハイブリッドエアーダンパーEZタイプは、オリフィス板を設けて内包している空気の減衰効果により、共振時に発生する振幅を低く抑えています。荷重は主に金属スプリングで支持するため、防振ゴムで問題となるクリープ(ヘタリ)がほとんどなく、繰り返し振幅による耐久性も高いレベルにあります。温度変化による支持バネの変化が極めて少なく、幅広い温度領域で安定した性能が得られるのも大きな利点です。
参考)https://www.monotaro.com/s/c-50888/b-1494/
空気バネの防振効果は、内圧を変えることでバネ定数をほぼ比例的に調整できるため、荷重の大きさとは無関係に一定の優れた防振効果を維持できます。自動高さ制御弁(レベリングバルブ)を併用すると、負荷荷重が変わっても常に支持体の高さを一定に保つことができ、積載荷重の変動が大きい用途でも安定した性能を発揮します。
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さらに、ブリヂストンの空気バネは摺動部がなくメンテナンス性に優れており、空気の供給源等も不要なため、トータルコストを大幅に抑えられる経済性も魅力です。これらの特性により、産業機械の防振・防音用途で幅広く採用されています。
空気バネを選ぶ際は、まず使用する機器の荷重と必要なストローク量を明確にすることが重要です。ブリヂストンの空気バネには様々なサイズと荷重範囲の製品があり、締め付け型とセルフシール型の2種類から用途に応じて選択できます。標準品として、ベローズ単体からプレート付き、バルブ付き上下面板を組み合わせた完成品まで、複数の組立パターンが用意されています。
設置時には、荷重の中心を空気バネの中心に合わせることが理想的です。取付けの誤差などによりわずかに偏心した状態であれば使用可能ですが、大きな偏心は空気バネの破損や性能低下の原因となるため注意が必要です。空気を入れる前の空気バネに直接機械構造物を載せると破損しますので、必ず適切な手順で設置してください。
参考)https://www.y-yokohama.com/group/ymj/file/airsprings_catalogue.pdf
空気バネの締付リングにプレートを取り付ける際は、全てのねじを締結し、締付リングとプレートに隙間がないことを確認することが重要です。隙間があると空気が漏れたり、性能が発揮できなくなります。また、ばねがガタついた状態で設置すると垂直に加圧されず座屈を起こし、早期折損する場合があるため、設置面の平面度や水平度も確認が必要です。
参考)https://sanki.kuraka.co.jp/uploads/product_files/technology_airs-pring.pdf
設置後は、自動車タイヤ用エアーチャックを用意し、エアー源にホース等で接続して適切な空気圧を充填します。内圧の調整により、使用荷重に応じた最適なバネ定数を設定できます。補助タンクを接続する場合は、絞りを含む配管で空気バネと繋ぎ、空気減衰効果により共振を防ぐ設計とします。
参考)https://sanki.kuraka.co.jp/uploads/product_files/T18_PSD_Series.pdf
使用環境についても注意が必要で、40℃を超える環境下では空気バネの寿命が短くなる可能性があります。また、酸、アルカリ、有機溶剤、潤滑油などがゴムベローズ部に付着しないように注意してください。除振目的の機器に使用し、防振目的の機器には適用しないことも重要です。
参考)https://sanki.kuraka.co.jp/uploads/app_product_catalogs/1/1/11-catalog_file-20240710141009.pdf
空気バネの寿命は、使用状況やメンテナンスの頻度によって異なりますが、一般的には10万キロメートル程度とされています。産業用途では使用時間や環境条件により変動しますが、高品質な空気バネは適切なメンテナンスを行うことで、さらに長期間使用することが可能です。
定期的なメンテナンスとして最も重要なのは、空気圧のチェックと適正な調整です。空気圧が低下すると防振性能が低下するだけでなく、ゴムベローズに過度な変形が生じ、劣化を早める原因となります。定期的に適正空気圧を確認し、必要に応じて補充することが寿命延長の鍵です。
外部からの損傷や空気漏れがないかの確認も欠かせません。ゴムベローズにヒビ割れ、亀裂、摩耗などの異常が見つかった場合は、速やかに修理や交換を行う必要があります。特に外観に変化がなくても、空気圧の低下が頻繁に起こる場合は、微小な空気漏れの可能性があるため詳細な点検が必要です。
清潔な環境を維持することも空気バネの内部機構の劣化を防ぐために重要です。ゴムベローズ部に油や化学薬品が付着すると、ゴムの劣化が加速されるため、作業環境の管理にも配慮が必要です。メーカーの指示に従い、専門のサービスセンターでの点検を定期的に受けることも推奨されます。
参考)http://motion-trust.net/Resource/flowersimg/202208/6ea43e858642440f9c34358837260f57.pdf
空気バネの素材はタイヤと同じくゴムであるため、経年劣化は避けられません。2~3年を目安に外観チェックを行い、劣化の兆候が見られる場合は早めの交換を検討してください。温度変化や紫外線の影響を受けやすい環境では、劣化のスピードが早まる可能性があるため、より頻繁な点検が望ましいでしょう。
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摺動部がない構造のため、給油などの複雑なメンテナンスは不要であり、この点が空気バネの大きな利点です。ただし、補助タンクや配管を使用している場合は、これらの接続部からの空気漏れや配管の詰まりがないかも定期的に確認することが重要です。
空気バネと金属バネ(コイルバネ)の最大の違いは、固有振動数と防振効果の範囲です。空気バネの固有振動数は2.0~3.0Hzと非常に低く、金属バネの5~10Hzと比較して大幅に低い値を実現しています。この低い固有振動数により、空気バネは広い周波数帯域で高い防振効果を発揮します。
防振性能の観点では、空気バネは防振ゴム式より約10倍の除振性能を持ち、特に低周波領域でその差が顕著に表れます。金属バネは高周波領域で一定の防振性能を持ちますが、サージング未対策の場合、実際には空気バネよりも防振性能が低くなることがあります。空気バネは高周波振動を絶縁でき、防音効果が優れている点でも金属バネを上回ります。
参考)防振技術
構造的な特徴として、空気バネは取付け高さの割にストロークを大きく取れるという利点があります。金属バネは装置高さが180~250mm程度必要ですが、空気バネは140~200mm程度で設置でき、コンパクトな設計が可能です。また、空気バネは横方向の変位にも対応できる柔軟性を持つため、多方向の振動に対する防振効果も期待できます。
減衰性能については、空気バネは装置内に制振装置を内蔵することで対応可能ですが、金属バネ単体には減衰性能がありません。空気バネは補助タンクと絞りを組み合わせることで空気減衰効果が得られ、共振時の振幅を効果的に抑えられます。一方、金属バネは別途ダンパーを組み合わせる必要があります。
メンテナンス面では、空気バネは給油の必要がなく保守が極めて簡単ですが、定期点検が必要です。金属バネは定期点検が不要で、この点では手間がかかりません。ただし、金属バネは疲労による折損のリスクがあり、使用環境によっては腐食の問題も生じます。
コストの観点では、空気バネは初期コストが高めですが、トータルコストでは金属バネと同等以下に抑えられることが多いです。金属バネは中程度のコスト、防振ゴムは低コストとなっており、用途と求める性能に応じて選択することが重要です。空気バネは偏荷重により傾きが発生する可能性があり、自動レベリング装置内蔵のモデルを選択するか、適切な設置管理が必要です。
参考情報:ブリヂストンの空気バネ製品に関する詳細な技術資料や取扱説明書は、各地区の販売窓口で入手できます。専門的な選定や設置に関するご相談は、お近くの取扱店にお問い合わせください。
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