「最恵国待遇(MFN)さえ確認すれば関税率は一律だ」と思っていると、申告ミスで荷主に損害賠償を請求されるリスクがあります。
最恵国待遇(MFN:Most Favored Nation)とは、WTO加盟国同士が「最も有利な関税率」を互いに適用し合うことを義務付けた原則です。 つまり、ある国に低い関税率を設定したなら、他の全WTO加盟国にも同じ率を適用しなければならない、というルールです。これが国際貿易の「土台」とされてきました。 ja.wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%80%E6%81%B5%E5%9B%BD%E5%BE%85%E9%81%87)
ところがトランプ政権は、この原則を事実上無力化しつつあります。
2025年4月、トランプ大統領は貿易赤字・非関税障壁・補助金などを考慮した国別の「相互関税」を導入しました。 日本には24%、EU圏には国別に20〜34%など、同じWTO加盟国でも大きく異なる税率が設定されています。これはWTOのGATT第1条(最恵国待遇条項)に違反するとの指摘もあります。 rieti.go(https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/urata/16.html)
つまり根本は「WTO体制の崩壊リスク」です。それが分かれば、なぜ通関実務が複雑になったかが見えてきます。
2025年1月23日、米議会に超党派法案が提出されました。 内容は、中国に対する「恒久的最恵国待遇(PNTR)」を取り消し、段階的に関税率を大幅引き上げるというものです。 jp.reuters(https://jp.reuters.com/world/security/CX3FQU23BRLSBDE4DS3R2BXINM-2025-01-23)
法案が通過した場合の税率は衝撃的です。
デミニミスの廃止は特に注意が必要です。現行では800ドル以下の少額貨物は申告不要でしたが、廃止されると越境EC由来の小口貨物が大量に正規申告の対象となります。通関件数が急増し、申告書作成・審査の業務負荷が跳ね上がる可能性があります。
「いずれトランプ政権は終わるし、MFNに戻るはずだ」と考えていると、準備が大幅に遅れます。
JETROの報告によれば、2025年8月から始まった米国の相互関税は「向こう10年という単位で継続する見通し」とされています。 これはトランプ政権の一時的な気まぐれではなく、WTO体制を根本から作り替えようとする意志の表れです。 jetro.go(https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/17d854f110936534.html)
USTRのグリア代表は、相互関税交渉後に成立した新しい2国間合意の枠組みを「ターンベリー・システム」と命名しました。 名称の由来はスコットランドにあるトランプ大統領のゴルフクラブです。この新体制では、国・品目・原産地によって関税率が全く異なるため、画一的な「MFN税率」での申告は通用しなくなります。 jetro.go(https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/17d854f110936534.html)
通関業者にとって実務的な意味では以下が変わります。
実際にはWTOを基軸とした85%の国々が自由貿易体制を守ろうとする動きもあり、 今後の通商秩序は二分化される可能性が高い状況です。 jetro.go(https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/17d854f110936534.html)
「日本は最恵国待遇を確保している」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
2025年9月、赤沢経済再生担当大臣は、トランプ大統領が打ち出した医薬品への100%関税について、日本は「最恵国待遇を確保している」と表明しました。 これは品目ごとに交渉の結果が異なるという意味であり、全輸入品に最低税率が保証されているわけではありません。 jp.reuters(https://jp.reuters.com/world/japan/XUKCNFN5PZJ3TFUDRG3C4CBJ4Q-2025-09-26/)
重要なのは「品目」と「交渉結果」の組み合わせです。
通関業者として見落とせないのは、「同じ荷主・同じ仕入先」でも品目が変わると適用関税率が全く異なる点です。過去のHSコード申告履歴に頼ったまま業務を進めると、関税分類の誤りが生じます。HSコードの見直しは今すぐ実施すべき作業です。
参考:経済産業省「米国関税措置一覧・品目別適用状況」
米国の関税措置の概要(経産省)|品目別の追加関税適用状況を確認できます
「顧客から急に関税率が変わった、と言われても困る」という場面が増えています。
通関業実務として、以下のアップデートが急務になっています。
関税率変更の情報源としては、JETROの「ビジネス短信」やPwC Japanのニュースレターが実務レベルで活用しやすいリソースです。
参考:JETROによる米国相互関税の解説(2025年9月更新版)
米国が挑む新たな国際通商システム(2)最恵国待遇のない世界|JETRO|通商専門家によるMFN消滅後の世界の分析
参考:RIETIによるトランプ関税とWTO体制への詳細分析
トランプ関税と世界貿易体制崩壊のリスク|RIETI(経済産業研究所)|WTO原則との整合性と関税違反リスクの学術的解説
| 品目区分 | 簡易税率(目安) |
| --------- | -------- |
| 食料品・飲料 | 無税〜10% |
| 繊維製品(衣類等) | 10~12% |
| 革製品・靴 | 10〜20% |
| 電気製品・機械 | 無税〜3% |
| 陶磁器・ガラス製品 | 無税〜6% |
| ステップ | 内容 |
| -------- | ----------------------- |
| ①NACCS加入 | 利用申込→ID・PW発行→パッケージソフト受領 |
| ②申告事項登録 | 貨物情報・蔵入先保税地域コードなどを登録 |
| ③本申請(IS) | 登録情報をもとにNACCSで承認申請を送信 |
| ④税関審査 | 税関がNACCS上で審査・承認処理 |
| ⑤承認通知受領 | NACCSから申請者・税関双方に通知 |
| 申告等種別コード | 申告名称 | 対象貨物 |
| -------- | ------------- | ------------- |
| C | 輸入申告(申告納税) | 通常輸入貨物 |
| K | 蔵出輸入申告(申告納税) | 蔵入承認済み保税蔵置場貨物 |
| D | 蔵出輸入申告(賦課課税) | 同上(賦課課税) |
| U | 移出輸入申告(申告納税) | 移入承認済み保税工場貨物 |
| B | 総保出輸入申告(申告納税) | 総合保税地域蔵置貨物 |
| R | 蔵出輸入(引取・特例)申告 | 特例申告対応の蔵出し |