

サイレンサーはマフラーを構成するパーツの一部で、排気口付近に装着され、排気音を低減する役割を担います。排気ガスはエキゾーストパイプを通り、サイレンサー内部で膨張や収縮などを繰り返すことで圧力波が減衰し、音量が下がるのが基本の考え方です。
同じ「静かにする装置」でも、内部構造の思想は大きく2つに分かれます。ストレートタイプは排ガスの抜けを重視した構造で軽量化しやすい一方、消音材に吸収されない圧力波が残りやすく、静粛性は高くなりにくいとされています。
隔壁タイプは隔壁で3〜4つ程度の部屋に仕切り、細い通路を通して段階的に膨張させることで、圧力と熱を落として静粛性を得やすい構造です。ただし隔壁やボディに厚みが必要になりやすく、重量が増える傾向があります。
ここで意外と見落とされるのが、「音の大きさ」だけが評価軸ではない点です。サイレンサーは排気をスムーズにして排気効率を高める一方で、排圧のかかり方が変わるとトルク感が変化する場合もある、と整理されています。
つまり、サイレンサー交換は“音量を下げる/上げる”だけでなく、「車種の使い方(街乗り・ツーリング・高速・峠)に合う特性へ寄せる作業」になりやすい、というのが現場のリアルです。
車検や規制を語るとき、実務で効いてくるのが「近接排気騒音」の測り方です。JMCAの試験フローでは、排気流方向より45°外側・50cmの位置にマイクを置き、所定の回転数条件で近接排気騒音を測定する、と説明されています。
またJMCAのページでは、近接排気騒音だけでなく、定常走行騒音・加速走行騒音という別種の測定があること、加速走行騒音は20m区間を全開で加速して測定することも示されています。
ここが「意外な落とし穴」になりやすく、停車状態で静かに感じても、加速で一気に音が立つ仕様だと、規制との整合が難しくなる可能性があります(特に体感だけで判断している場合)。
もう一つ重要なのが、JMCA側が排ガス試験にも触れている点です。排出ガス規制適合車のマフラーは排ガス試験も行う旨、試験成績書がないと車検を受けられない場合がある旨が明記されています。
つまり「音が静かならOK」という単純な話ではなく、騒音と排ガスの両方が“車検で詰まるポイント”になり得る、ということです。
インナーサイレンサー(マフラー出口に挿入する消音パーツ)は、やり方としては分かりやすく、音量を下げたい人が最初に思いつきやすい選択肢です。実際、インナーサイレンサーはネジで取り付けるだけで消音効果が高まるアイテムだ、と説明されています。
ただし、重要な注意点があります。容易に着脱できるインナーサイレンサーを取り付けられるマフラーは保安基準を満たさないため車検に通らない、と明記されており、「とりあえず入れとく」が通用しないケースがある点は強く意識すべきです。
ここで実務的なチェック観点を、文章で整理しておきます(車両や地域、検査官の確認のされ方で実際の運用は変わり得ます)。
✅ チェック観点(考え方)
・「簡単に外せる状態」になっていないか(容易に着脱できるものはNGになり得る)
・走行中に脱落しない固定か(安全面)
・音量だけでなく排気漏れが出ていないか(漏れると別の意味で音が増えやすい)
さらに安全面の話も現実的です。サイレンサーのボルトが緩むと排気で外れる可能性があり非常に危険で、定期的な確認が必要とされています。
参考)https://www.hos.pub/articles/hveh1010001/pdf
この「緩み」は、静粛性の問題以前に、後続車や歩行者へのリスクにつながるため、カスタムの優先順位として上位に置くべきポイントです。
サイレンサーの消音材として代表的に挙げられるのがグラスウールで、穴の空いた金属パイプの周りに巻き付けられている、という基本構造が説明されています。
長く乗っていて「前より音が荒くなった」「同じ回転数でも音が刺さる」と感じる場合、サイレンサー本体を丸ごと交換する前に、“消音材が劣化していないか”を疑う価値があります。実際、消音効果が落ちた場合にグラスウール等の消音材を交換すると消音効果が回復するケースがある、とされています。
ここで意外なポイントは、「劣化=穴が開く」だけではないことです。サイレンサーは内部で圧力波を減衰させる設計物なので、消音材の状態が変わると“音量”だけでなく“音質(角が立つ/軽くなる)”にも影響が出やすく、結果として周囲の印象も変わります(静かでも不快に聞こえる、など)。
また、サビ等で固着する恐れがあるとも書かれており、保管時に雨風が当たらない工夫が推奨されています。
「音対策」と言うと排気側ばかり触りがちですが、保管と点検で劣化スピードを遅らせるほうが、結果的にお金も手間も減ることがあります。
静粛性を上げるとき、最短ルートは「消音材を増やす」「出口を絞る」になりやすい一方、車検・安全・気持ちよさを同時に満たすには“順番”が大事になります。まず、排気漏れを潰す(ガスケット、差し込み、ボルト固定)だけで音量が下がることがあり、しかもこれは保安上の正攻法です。
次に、構造の方向性を理解して選ぶことです。ストレートタイプは軽量化や抜けの良さに寄りやすい一方で静粛性は高くなりにくく、隔壁タイプは静粛性に寄せやすいという整理は、選定ミスを減らします。
そして最後に、規制や検査の「測られ方」に合わせた対策へ寄せます。近接排気騒音はマイク位置(45°・50cm)と回転数条件が前提として示されているため、“家の前での体感”だけでなく、条件を寄せて確認すると読み違いが減ります。
この順番にすると、ありがちな失敗(インナーサイレンサーを入れたのに車検の不安が増える/締結が甘くて結局うるさい/静かになったが乗り味が変わって後悔)を減らしやすいです。
🔍 ひとことメモ(実務的)
・点検:ボルトの緩みは「音」より先に「危険」に直結します。
・選定:静粛性重視なら隔壁タイプの考え方が合うことが多いです。
・適合:JMCAは騒音だけでなく排ガス試験にも言及しており、書類や成績書の扱いが絡む場合があります。
参考)https://www.mdpi.com/1424-8220/24/10/3094/pdf?version=1715609110
車検・騒音試験(近接排気騒音、加速走行騒音など)の測定方法と考え方(JMCA公式)
https://jmca.gr.jp/about_muffler/flow/
サイレンサーの構造(ストレートタイプ/隔壁タイプ)、インナーサイレンサーと車検注意点、交換時の確認ポイント
https://www.zurich.co.jp/motorbike/guide/cc-whatis-bike-muffler/