
pa-man 緊急脱出用スパイクEasy spike乗用車用駆動輪2本分タイヤ幅約165~265mm
スパイクタイヤの使用禁止は1991年4月1日から施行されました。正式には1990年6月27日に「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」が公布・施行され、禁止条項が翌年4月に発効、罰則規定は1992年4月1日から適用されています。この法律制定の背景には、1980年代に深刻化したスパイクタイヤによる粉じん公害がありました。
参考)スパイクタイヤはいつから禁止となったのか?
スパイクタイヤは1963年から国内で販売が開始され、1970年代に急速に普及しました。1985年にはスパイクタイヤの販売がピークを迎え、年間800万本、冬用タイヤの68%を占めるまでになりました。しかし、タイヤに打ち込まれた金属製のピンがアスファルト路面を削ることで大量の粉じんが発生し、環境問題へと発展していきました。
参考)スパイクタイヤ - Wikipedia
法律施行を受けて、国内大手タイヤメーカー7社は1990年12月末でスパイクタイヤの製造を中止し、1991年3月末には販売も中止しました。1988年6月には公害等調整委員会によって、タイヤメーカー各社が製造・販売中止する調停が成立していたことも、この流れを加速させました。
参考)https://www.zurich.co.jp/carlife/cc-prohibition-spiked-tires/
スパイクタイヤによる粉じん公害は、特に仙台市で深刻な問題となりました。仙台市では「仙台砂漠」という言葉が生まれるほど街中に粉じんが広がり、昼間でも空が薄曇りの状態で、多くの市民がマスクを着用して外出する状況となっていました。この粉じんは、スパイクタイヤの金属ピンがアスファルトを削ることで発生する微細な粒子で、呼吸器系への影響が懸念されていました。
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粉じん問題は仙台市だけでなく、長野市や北海道などの積雪地域でも発生していました。1986年には通商産業省がスパイクタイヤの出荷削減を指導し、全国積雪寒冷地の176市が6省庁へスパイクタイヤ使用規制法制化を要望するなど、全国的な問題として認識されるようになりました。特に都心部では道路粉じんの濃度が高く、鼻水や目の痛みなどの症状を訴える住民が増加していました。
参考)スパイクタイヤ問題解決の歩み/札幌市
健康被害の具体的な因果関係については議論もありましたが、潜伏期間が長い可能性があり、被害が証明されたときには汚染が広範囲に広がって手遅れになる恐れがあるという指摘もなされていました。このような環境と健康への懸念が、スパイクタイヤ禁止法の制定を後押しする大きな要因となりました。
参考)https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/101/syuh/s101008.htm
スパイクタイヤとスタッドレスタイヤは、雪道や凍結路面での走行を目的とする点では同じですが、グリップ方法が根本的に異なります。スパイクタイヤはタイヤのトレッド面に金属製のピン(スパイク)を打ち込んだ構造で、このピンが雪や氷に突き刺さることで強力なグリップ力を発揮します。一方、スタッドレスタイヤはピンを使わず、低温でも柔軟性を保つ特殊なゴムと、トレッド面に刻まれた無数の細かな溝によって路面に密着することでスリップを防ぐ仕組みです。
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スパイクタイヤは圧雪路面やアイスバーンでの制動性能が非常に高く、凍結路でもスタッドレスタイヤを上回る効果を発揮します。しかし、その反面、金属ピンが路面を削るため粉じんが発生し、環境問題や健康被害を引き起こすという重大な欠点がありました。また、アスファルトが露出している路面を走行すると道路の損傷も激しくなります。
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スタッドレスタイヤは1984年に日本自動車タイヤ協会によって制動試験が実施され、1990年7月には大型車用スタッドレスタイヤの生産が開始されました。近年のスタッドレスタイヤは技術進化により、豪雪地帯や凍結路でも安全に走行できる性能を備えており、環境への配慮と地域住民の健康保護の観点から、スパイクタイヤからの切り替えが推奨されています。
スパイクタイヤの使用は全面的に禁止されているわけではなく、法律では「指定地域内の道路が積雪または凍結状態にない場合」に使用することが禁止されています。指定地域は環境大臣が指定するもので、住居が集合している地域やスパイクタイヤ粉じんの発生を防止することにより住民の健康を保護する必要がある地域が対象となります。具体的には北海道、東北地方、北陸地方など雪の多い地方の他、山梨県、長野県、岐阜県、鳥取県、島根県などの山岳地域も含まれています。
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北海道では地域ごとに使用規制期間と使用抑制期間が設定されています。道央・道南地域では4月1日から11月20日までが使用規制期間、11月21日から翌年3月31日までが使用抑制期間となっています。道北地域は4月10日から11月10日まで規制、11月11日から翌年4月9日まで抑制、道東地域は4月10日から11月20日まで規制、11月21日から翌年4月9日まで抑制という具合です。
消防自動車や救急自動車など政令で認められている車両に関しては、禁止規定の対象から外れており、どのような状態でもスパイクタイヤを装着できます。ただし実際には、これらの緊急車両もほとんどスタッドレスタイヤを使用しているのが現状です。また、雪の積もることのないトンネル内や橋の下の道路部分では走行が認められています。
「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」に違反した場合、10万円以下の罰金が科せられます。この罰則規定は1992年4月1日から施行されています。違反となるのは、指定地域内で積雪や凍結がない道路でスパイクタイヤを使用した場合です。実際の運用では、たとえ雪道であってもアスファルトが全く露出していない状態はほとんどなく、アスファルトに乗った瞬間に法律違反となってしまうため、現実的には一般道路でスパイクタイヤを使用することは困難です。
現在、国内でのスパイクタイヤの製造と販売は完全に中止されており、一般的にはほとんど見る機会がなくなりました。1990年9月には通商産業省が外国タイヤ輸入業者に対してもスパイクタイヤの輸入自粛を要請し、輸入品も含めて市場から姿を消しています。うっかり違反をしてしまうリスクもあるため、環境への配慮や地域住民への健康被害を防ぐ観点からも、スタッドレスタイヤの使用への切り替えが強く推奨されています。
バイクについては、地域の条例によって異なりますが、125cc以下のバイクは冬の期間にスパイクタイヤの使用が認められている場合があります。ただし、バイク用のスパイクタイヤでもアスファルトが見えるような路面を走ると粉じんの原因になるため、降雪量が少ない地域では使用できず、降雪量が多い地域でも冬場に限定されます。
参考)https://www.yes-i-do.co.jp/column58.html
日本ではほぼ全面的に使用が規制されているスパイクタイヤですが、海外では現在も使用されている国や地域があります。特に北欧諸国では、厳しい冬季の気候条件からスパイクタイヤが主流となっています。スウェーデンなどでは一般的に使われていますが、近年は地球温暖化の影響でアスファルト舗装が露出する機会が増え、スパイクタイヤによる道路の削れが問題視されるようになってきました。そのため環境に優しい日本のスタッドレスタイヤの需要が北欧でも高まっており、カナダやニュージーランドなどにも輸出されています。
参考)スパイクタイヤが主流の北欧でも注目!? 厳冬期のスウェーデン…
アメリカでは州によって規制が異なり、一部の雪の深い地域ではスパイクやタイヤチェーンの使用が認められていますが、それ以外の州では使用禁止となっています。カナダでも地域によって規制が異なり、例えばアルバータ州では規制がありませんが、隣のBC州では制限があるなど、各州の条例に従う必要があります。このように海外でもスパイクタイヤの環境への影響が認識され始めており、徐々に規制の動きが広がっています。
参考)海外移住生活。氷点下30℃の世界、カナダの冬タイヤ|𝒦𝐸𝒩𝐼…
バイクでの使用については、前述の通り125cc以下であれば日本でも条件付きで使用が認められています。しかし、バイクは四輪車と比べて重量が軽く接地面積が小さいため、スパイクタイヤを使用しても凍結した路面の凹凸で滑る危険性があり、かなり慎重な走行が必要です。また、バイク用スパイクタイヤは自動車用と構造が異なり、スパイクピンの配置や突出量が調整されていますが、それでもアスファルト露出部分を走行すると粉じんが発生するため、使用には十分な注意が必要です。雪国でバイクに乗る方や、早朝・夜間など凍結路面を走ることが多い方以外は、基本的にスパイクタイヤの使用は避け、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンなど他の手段を検討すべきでしょう。
参考)バイクの雪道走行、対策は?違法となるケースも! - SBIの…
環境省「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律の施行について」
法律の施行に関する詳細な情報が記載されており、規制内容の理解に役立ちます。
札幌市「スパイクタイヤ問題解決の歩み」
スパイクタイヤ問題の歴史的経緯が年表形式でまとめられており、全体像を把握できます。