カーボンニュートラルと脱炭素の違い|取り組み方と実現への道筋

カーボンニュートラルと脱炭素の違い|取り組み方と実現への道筋

カーボンニュートラルと脱炭素の違い

この記事でわかる3つのポイント
🌱
脱炭素とカーボンニュートラルの基本概念

脱炭素はCO2排出量自体をゼロにする取り組み。カーボンニュートラルは排出量と吸収量を均衡させる考え方です。

アプローチの違いと実現方法

脱炭素は再生可能エネルギーへの転換が中心。カーボンニュートラルは排出削減と吸収活動の両面から取り組みます。

🏍️
バイク業界での取り組み

電動バイクの開発や水素エンジンの研究など、バイク業界も脱炭素化に向けて大きく動き始めています。

カーボンニュートラルの基本的な意味


カーボンニュートラル2050ビジョン
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。具体的には、人が排出した温室効果ガスの量から、植林や森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質ゼロにすることを指します。温室効果ガスの排出自体をゼロに抑えることは現実として困難なため、排出せざるを得なかった分について同じ量を吸収または除去することで、差し引きゼロ、つまり正味ゼロ(ネットゼロ)を目指す考え方です。
参考)【図解あり】脱炭素とカーボンニュートラルの違いを徹底解説

パリ協定では、21世紀後半には温室効果ガスの人為的排出量と森林などによる吸収量を均衡させることを目指しており、各締約国に森林を含む温室効果ガスの吸収源・貯蔵庫の働きを保全および強化することが規定されています。日本も2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという目標を掲げています。
参考)脱炭素・カーボンニュートラルによって車・バイクはどう変わる?…

脱炭素の基本的な意味と目標

脱炭素とは、主にCO2の削減に焦点を当て、排出量をゼロにすることを目標としています。明確な定義はありませんが、一般的には二酸化炭素排出量を完全にゼロにすることを指すことが多く、カーボンニュートラルとは意味合いが異なります。脱炭素社会とは、炭素社会を脱するという意味で、CO2排出量をゼロにすることを実現した社会を指します。
参考)脱炭素とカーボンニュートラルの違いとは?類似用語や注目される…

脱炭素化を推進する理由は主に2つあります。1つ目は地球温暖化による気候変動を回避するためで、化石燃料を燃やして得られるエネルギーは多くの二酸化炭素を発生させるため、地球温暖化の要因となります。2つ目は石油や天然ガスなどの化石燃料に代わるエネルギーが必要なためです。化石燃料には限りがあり、使用を続ければ約50年ほどで尽きるといわれています。
参考)脱炭素社会に必要な再生可能エネルギーとは? 新しい発電方法に…

カーボンニュートラルと脱炭素の違いとアプローチの差

カーボンニュートラルと脱炭素の最大の違いは、そのアプローチ方法にあります。脱炭素はCO2排出量自体を減らし、最終的にゼロにすることを意味する一方、カーボンニュートラルはCO2の排出量と吸収量を均衡させることに主眼が置かれます。
参考)https://u-power.jp/sdgs/future/000511.html

脱炭素は主に化石燃料の使用削減を通じてCO2排出を直接的に抑えることに焦点を当てています。具体的には、再生可能エネルギーの導入、エネルギー効率の向上、電動車の普及などが代表的な方法です。このアプローチは、エネルギー供給をクリーンな形に転換する長期的な視点に基づいています。化石燃料を燃やしてエネルギーとするのではなく、バッテリーを駆動させたり、再生可能エネルギーによる発電を通して動力を得たりすることが該当します。​
一方、カーボンニュートラルは排出された炭素を相殺することに注力します。炭素オフセットやカーボンキャプチャーとストレージ(CCS)技術を活用することで、全体の炭素バランスをゼロに近づけることを目指します。このため、短期的な影響を緩和しながら、脱炭素化が難しい分野でも実質的な炭素削減が可能です。少々極端に言えば、CO2排出量が現状と変わらなくても、吸収量がそれを相殺できるほど大きくなればカーボンニュートラルは実現できるということです。​

カーボンニュートラル実現のための温室効果ガス削減と吸収の仕組み

カーボンニュートラルを実現するためには、温室効果ガスの削減と吸収の両面からのアプローチが必要です。カーボンニュートラルを目指すということは、「温室効果ガスをできるだけ排出しないようにすること」と「温室効果ガスをできるだけ多く吸収すること」を目指して活動するということになります。
参考)【入門編】カーボンニュートラルとは?メリットや取り組み例をわ…

排出量削減の具体的な取り組みとしては、再生可能エネルギーの導入が中心となります。太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーは、発電時に二酸化炭素を排出しないため、脱炭素化の鍵を握っています。また、省エネ性能の高い設備の導入やガソリン自動車から電気自動車への切り替えといった直接的な脱炭素の手法も重要です。
参考)カーボンオフセットとは|メリット・注意点・事例を網羅的に解説…

吸収量増加の取り組みとしては、植林活動や森林管理が挙げられます。カーボンオフセットという考え方では、企業の事業活動上、削減が難しい排出に対して他の方法で埋め合わせをします。具体的には、他の場所で実施されている温室効果ガスの削減・吸収活動への投資などをおこなうことで、自社が排出する温室効果ガスと相殺・埋め合わせをし、総合的に見て排出量を減らすという方法です。
参考)カーボン・オフセットとは?その仕組みやメリット、課題をわかり…

バイク業界におけるカーボンニュートラルへの独自の取り組み

バイク業界では、カーボンニュートラル実現に向けて電動化と内燃機関の活用という2つの方向性で取り組みが進められています。2021年11月のバイクラブフォーラム(BLF)では、「二輪車産業政策ロードマップ2030」が発表され、カーボンニュートラル達成への貢献が政策課題の一つとして挙げられました。2030年ゴールイメージとして、電動車や合成燃料対応車等によるカーボンニュートラル達成への貢献が設定されています。
参考)二輪車産業政策ロードマップ2030要点チェック!カーボンニュ…

電動化の取り組みとしては、ホンダカワサキ、スズキ、ヤマハの4社により、2019年4月にバッテリーコンソーシアム(電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム)が立ち上げられました。このコンソーシアムは、電動バイクのバッテリーやバッテリー交換システムを統一し、バッテリーの相互利用を可能にすることを目指しています。4社の電動バイクが同じバッテリーで走り、出先で充電済みのバッテリーとすぐに交換できる環境が整えば、電動バイク普及の大きな一歩になると期待されています。​
一方、従来の内燃機関(エンジン)を使いながらカーボンニュートラルを目指す取り組みも検討されています。バイクは非常に趣味性が高い乗り物で、エンジンが醸し出す鼓動やサウンド、乗り味を含めた世界観が大きな魅力になっているため、エンジンを残しつつ環境負荷を低減する方法が模索されています。カワサキとヤマハは、バイクへの搭載を視野に入れた水素エンジンの共同研究について検討を開始すると発表しており、今後はホンダとスズキも加わり、4社でバイクにおける内燃機関を活用したカーボンニュートラル実現の可能性を探っていく予定です。
参考)二輪も脱炭素 ヤマハ発など4社、水素エンジン共同研究 - 日…

各メーカーの具体的な目標として、ホンダは2030年までに二輪車のグローバル販売での電動化比率を2割近くまで引き上げることを目標にしています。ヤマハは世界の新車販売に占める電動バイクの割合を、2035年に20%、2050年に90%にする方針を打ち出しています。カワサキは日本や欧米などで販売するバイクの主要機種を、2035年までに電動化することを宣言しており、まずは先進国で2025年までに10車種以上を投入する予定です。
参考)ROLLING INTO THE FUTURE

バイク業界のカーボンニュートラルへの取り組みは、電動化という新しい技術と、エンジンという伝統的な魅力を両立させながら進められています。バイクに乗る方々にとって、環境に配慮しながらも走る楽しさを失わない選択肢が増えていくことが期待されます。
参考)脱炭素化に向けて電動バイクの開発が加速!日本の現状と将来の展…

二輪車のカーボンニュートラル実現へ向けて | Honda Stories
ホンダの二輪車カーボンニュートラルへの具体的な取り組みや開発戦略について詳しく解説されています。

 

二輪車産業政策ロードマップ2030 | BLF バイクラブフォーラム
バイク業界全体のカーボンニュートラル達成に向けた政策課題と実施施策が詳しく記載されています。

 

 


超入門カーボンニュートラル (講談社+α新書)