


[エムズ部品] イグニッションコイル 4本 プレサージュ TNU31 TU31 IC7
プレイグニッションは、スパークプラグが火花を散らす前に混合気が自然着火してしまう異常燃焼現象です。燃焼室内のスパークプラグ電極や排気バルブ、ピストン頂面などが高温になることで、これらの部分が着火源となって点火時期より早く燃焼が始まってしまいます。
参考)ノッキングとプレイグニッションの違い ともにエンジンに大ダメ…
点火前に燃焼が始まると、圧縮行程でピストンが上昇している最中に混合気が燃えるため、燃焼ガスはピストンの上昇によってさらに圧縮されます。その結果、燃焼圧力と燃焼温度が異常に上昇し、エンジン内部に強烈なダメージを与える可能性があります。プレイグニッションが連続して発生すると「暴走プレイグニッション」と呼ばれる状態になり、燃焼室の一部やピストン頂面が溶損することもあります。
参考)ノッキング・プレイグニッション・デトネーションの原因と対策|…
燃焼室に蓄積したカーボンや、熱価が低すぎるスパークプラグ、点火時期が進みすぎている場合など、燃焼室内に高温部分が形成されやすい条件下で発生しやすくなります。バイクでは特に高回転高負荷運転時や、長時間の低速走行でカーボンが蓄積した状態で急に高負荷をかけた際に発生リスクが高まります。
参考)https://bikeman.jp/blogs/bikeparts/motobike-38
ノッキングは、スパークプラグによる正常な点火後、火炎が燃焼室全体に伝播する前に、燃焼室端部の未燃混合気が自然発火してしまう現象です。正常な燃焼では火炎が順次広がっていきますが、ノッキングでは広がった火炎によって端部の未燃混合気が急激に断熱圧縮され、自着火温度に達することで発生します。
参考)プレイグニッションとノッキングとは?点火前の熱面着火と点火後…
この自然発火により高温高圧の激しい燃焼が起こり、燃焼室内に高周波の圧力振動が発生します。この圧力振動が「カリカリ」「カンカン」といった特有の金属的なノッキング音として聞こえるのが特徴です。高速運転で激しいノッキングが発生すると、シリンダー内壁やピストンに大きなダメージを与え、最悪の場合は熱によって燃焼室やピストンが溶損します。
参考)畑村博士に訊く点火と燃焼の基礎知識——ノッキングを知ればエン…
ノッキングは高圧縮比エンジンや過給エンジン、エンジン温度や吸気温度が高い場合、点火時期が進角しすぎている場合、低オクタン価の燃料を使用している場合などに発生しやすくなります。バイクでは登坂時にシフトダウンせずにアクセルを大きく開けた際や、真夏の渋滞走行でエンジンが過熱状態にある時などに起こりやすい現象です。
参考)バイクのノッキングとはどんな症状?対処法も紹介します CHA…
プレイグニッションとノッキングは密接に関連しており、プレイグニッションがノッキングを誘発する悪循環を引き起こすことがあります。プレイグニッションによって点火時期が早まったのと同じ状態になると、これがノッキングの引き金となります。
そのノッキングによって燃焼室内の温度がさらに上昇すると、連続してプレイグニッションが発生し、より強烈なノッキングに至ることがあります。この悪循環を「暴走プレイグニッション」と呼び、だんだん着火時期が早くなって最終的にはエンジンが破壊されてしまう危険な状態です。
参考)プレイグニッション - Wikipedia
シリンダー内壁には通常、数十ミクロンの空気層が存在し断熱層の役割を果たしていますが、ノッキングによる圧力振動でこの層が壊されると、直接シリンダーやピストンに熱が伝わります。その結果、ピストン温度が上がって焼き付きやピストンリング固着が起こり、酷い場合はプレイグニッションを誘発してピストンに穴が開いたり溶けたり、コンロッドが曲がったりすることもあります。
参考)B18C/B16B(インテグラType-R/シビックType…
デトネーションは「爆轟」とも呼ばれ、エンジン内部で混合気が急激に爆発して衝撃波が発生する異常燃焼です。多くの資料ではデトネーションとノッキングを同義として扱っていますが、厳密には異なる現象を指す場合もあります。
参考)エンジンノッキング
デトネーションは、プレイグニッションによる早期着火とスパークプラグによる正常な着火の2つの火炎が燃焼室内でぶつかり合うことで発生します。ピストンの端から自然燃焼が始まり、上死点でスパークプラグからも着火されると、どちらからも広がる高温高圧の燃焼がぶつかり合い、デトネーション(爆轟)が起きるというメカニズムです。
通常の燃焼では火炎が毎秒数mから数十mの速度で伝播しますが、デトネーションでは衝撃波を伴う急激な燃焼となり、エンジン内部に強い衝撃が発生します。高温高圧環境、低オクタン価燃料の使用、点火タイミングの早すぎなどが主な原因となり、ピストンやシリンダー内に強い衝撃を与えてエンジン破損につながります。
近年注目されているのが「低速プレイグニッション(LSPI)」と呼ばれる現象で、過給ダウンサイジングエンジンにおいて低回転高負荷時に発生するものです。シリンダー内に飛び込んだオイル飛沫の自着火や、燃焼室から剥がれたデポジット(堆積物)が着火源となってプラグ点火前に着火してしまいます。
参考)LSPI (Low Speed Pre-Ignition :…
通常のプレイグニッションとの違いは、着火源となるものが燃え切ってしまえば収まるため、暴走プレイグニッションにはならない点です。また、水温が低いほうが起きやすいなど特異な現象があり、世界中で原因究明が進められていますが、原因が諸説あって特定されていないのが現状です。
バイクでは直接的な過給ダウンサイジングエンジンは少ないものの、低回転域で高負荷をかける走行パターン、例えばギアが高すぎる状態でアクセルを大きく開ける場合などに類似の現象が起こる可能性があります。エンジンオイルの品質や燃焼室のカーボン堆積状態が発生に影響するため、定期的なメンテナンスが重要です。
参考)カーボンの蓄積箇所と対策方法
ガソリンのオクタン価は、ノッキングやプレイグニッションの起こりにくさを表す重要な指標です。日本産業規格(JIS規格)では、オクタン価が89以上のガソリンをレギュラー、96以上のガソリンをハイオクと定めています。オクタン価が高いほど自然発火しにくく、異常燃焼を起こしにくい特性があります。
参考)https://bikeman.jp/blogs/bikeparts/motobike-109
高圧縮比エンジンや高性能バイクでは、燃焼室内の圧力と温度が高くなるため、より高いオクタン価の燃料が必要になります。取扱説明書で指定された燃料を使用することが基本ですが、レギュラー指定のバイクにハイオクを入れても問題はなく、むしろカーボン除去効果のある洗浄剤が含まれているハイオクを使用することで燃焼室を清浄に保つ効果も期待できます。
参考)https://www.goobike.com/magazine/maintenance/maintenance/161/
逆に、ハイオク指定のバイクにレギュラーを入れると、オクタン価不足によってノッキングやプレイグニッションが発生しやすくなり、エンジン性能の低下だけでなく、深刻なエンジン破損につながる危険性があります。特にスポーツ系バイクや輸入車では、燃料の選択がエンジン保護において極めて重要な要素となります。
参考)今更聞けないバイクの話「レギュラーとハイオクはどう違うの?」…
スパークプラグの熱価は、プラグが受ける熱を発散する度合いを示す数値で、プラグ自体の冷却性を表しています。熱価の選択はプレイグニッション防止において極めて重要で、適切な熱価のプラグを使用しないと異常燃焼を引き起こす原因となります。
参考)プラグの熱価とは、どのようなことですか? - プラグの基礎知…
スパークプラグの中心電極温度が約500~950度の範囲内にある時、プラグは最大限の性能を発揮します。プラグ温度が950度を超えると「イグニッション」という現象が起こり、プラグから火花を飛ばさなくても混合気が自動で点火してしまう異常燃焼、つまりプレイグニッションが発生します。
参考)https://www.monster-sport.com/faq/faq_sparkplug.html
逆にプラグの冷却性を高めすぎて温度が500度未満になると、火花がきちんと飛ばなくなったり、プラグにカーボンが付着して性能が低下します。熱価が低すぎるプラグ(冷却性が低い)を使用すると、中高速の高負荷でプレイグニッションが発生しやすく、点火時期が進みすぎたのと同じ状態となってノッキングを誘発します。車種ごとの特徴や走り方に合った熱価のプラグを選択することが、異常燃焼防止の基本となります。
燃焼室内に蓄積したカーボンは、プレイグニッションの主要な着火源となります。カーボンは熱を蓄積しやすい性質があり、高温状態が続くと火種となって混合気を早期に着火させてしまいます。ピストンヘッドやバルブ周辺、燃焼室壁面に堆積したカーボンが高温になることで、スパークプラグの点火前に自然発火が起こるのです。
カーボン堆積が起こる主な原因は不完全燃焼です。エンジン温度が低い状態での走行、いわゆる「チョイ乗り」を繰り返すと、ガソリンと酸素が上手く結びつかず二酸化炭素にならず、カーボン(炭素)として燃焼室内に残ってしまいます。また、低回転域での走行や暖気不足の状態で走り出すこともカーボン蓄積の原因となります。
参考)バイクで起こる〇〇現象~カーボン噛み|ハーレーライフを10倍…
カーボンが蓄積すると、燃焼室の圧縮比が実質的に上昇し、混合気の圧縮温度が高くなってノッキングやプレイグニッションが発生しやすくなります。さらにカーボンが剥がれてバルブの閉まる際に噛み込む「カーボン噛み」が起こると、圧縮が漏れて低回転時のトルクが大幅に低下し、最悪の場合はエンジンが停止することもあります。
参考)バイク高回転時のノッキング | エンジンオイル屋
プレイグニッションとノッキングを防ぐ最も効果的な対策は、燃焼室内の温度を適正に保ち、カーボンの蓄積を防ぐことです。まず基本となるのが、適切なオクタン価の燃料を使用することで、取扱説明書で指定された燃料を必ず使用しましょう。高圧縮比エンジンや高性能バイクでは、ハイオクの使用が必須となります。
参考)https://www.zurich.co.jp/carlife/cc-high-octane-gasoline/
カーボン除去については、年1回程度の燃料添加剤の使用が効果的です。WAKO'Sフューエルワン、YAMAHAのPEAカーボンクリーナー、NUTEC NC-220などの製品が推奨されており、規定量を燃料タンクに入れてエンジンを暖機後、高回転で回し続けることでカーボンを除去できます。キャブレタークリーナーをプラグホールから吹き込む方法より、燃料添加剤での除去の方が作業性と効果の両面で優れています。
参考)エンジンパワーの減衰は燃焼室の「カーボン堆積」が最大の原因!…
日常の運転方法も重要で、エンジンが温まるまで走行し、定期的に高回転まで回すことでカーボンの蓄積を遅らせることができます。チョイ乗りが多い場合は、時々10分以上の走行をしてエンジンを高温状態にすることが推奨されます。また、適切な熱価のスパークプラグを使用し、点火時期を正確に調整することも異常燃焼防止の基本です。
参考)エンジン内にカーボンが溜まる走り方(後編)
プレイグニッションやノッキングによるエンジン破損は、バイクにとって最も深刻なトラブルの一つです。軽度の場合は金属を叩くような異音と振動が発生する程度ですが、放置すると最悪の場合はピストンに穴が開いたり溶けたり、コンロッドが曲がるなどの重大な破損につながります。
参考)バイクの修理は可能?バイクの主な故障原因や修理料金についても…
具体的な破損パターンとしては、まずピストンの焼き付きやピストンリングの固着が起こります。燃焼室各部の熱負荷が急増するため、ピストン頂面が溶損したり、バルブやバルブシートに損傷が生じることもあります。スパークプラグの電極が溶損するケースも報告されており、これらの症状が複合的に発生すると、エンジンブロー(完全な破損)に至ります。
トルク変動や出力の低下も深刻な問題で、プレイグニッションが発生したシリンダーでは出力が激減したり、逆転力が働く場合もあります。走行中に突然パワーが出なくなったり、エンジンが不安定になる症状が現れた場合は、異常燃焼の初期段階である可能性が高く、早急に点検に出す必要があります。修理費用は破損の程度によりますが、エンジンオーバーホールが必要になると数十万円規模の出費となるため、予防が何より重要です。
参考)https://d1-chemical.com/carbon
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