


わかる!使える!プレス加工入門<基礎知識><段取り><実作業>
プレス加工と板金加工の最も大きな違いは、使用する金型の種類にあります。プレス加工では製品ごとに専用の金型を作成し、その金型を使って金属板を特定の形状に成形していきます。専用金型は製品の形状に完全に合わせて設計されるため、複雑な形状や深い絞り加工など、高度な成形が可能になります。
参考)板金加工とプレス加工の違いを解説!それぞれのメリット・デメリ…
一方、板金加工では汎用金型と呼ばれる基本的な形状を加工する金型を使用します。汎用金型は曲げの角度や角Rなどで分類されていますが、同じ角度の曲げであれば異なる部品の加工にも使えるという柔軟性があります。プレスブレーキという機械でV字形状のダイとパンチを使って材料を挟み、圧力をかけて曲げ加工を行うのが特徴です。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/metal-machining/19782/
板金加工の汎用金型は直線形状をしているため、基本的に直線曲げのみが可能です。例えば金属製の弁当箱の底のような曲線を描く角Rや、深鍋やボウルのような立体的な形状は加工できません。これに対してプレス加工では、専用金型を用いることで深鍋、スプーン、自動車部品など多様な形状を実現できます。
参考)精密板金加工とプレス加工の違いについて - 精密板金加工コラ…
プレス加工と板金加工では、適した生産量と作業方式に明確な違いがあります。プレス加工は大量生産に特化した加工方法で、金型と自動化されたプレス機を使って同じ形状の製品を高速かつ連続的に製造します。トランスファープレスのような機械では、単工程の金型が順に並び、材料が自動で送られて加工されていくため、人手をほとんど介さずに大量の部品を短時間で生産できます。
参考)【必見】板金加工の技術とその応用事例 - カナメタメディア
板金加工は少量から中量生産に適しており、手作業が主体の加工方法です。穴あけ工程、曲げ工程などそれぞれ異なる機械を使い、作業者が手作業で素材をセットして加工し、終わったら次の工程の機械に素材を運ぶという流れになります。この手作業による柔軟性が、少量多品種生産や試作品製造を可能にしています。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/metal-machining/25619/
バイクのカスタムパーツや特注部品のように少量しか必要ない製品は、板金加工で製造されることが多くなります。逆に自動車の車体パネルや家電製品の筐体のように数万個以上必要な製品は、プレス加工による大量生産が選ばれます。
参考)[技術コラム]機械設計で必須!金属加工の種類とその特徴を徹底…
プレス加工と板金加工では、コスト構造が大きく異なります。プレス加工は専用金型の設計・製作に数十万円から数百万円の初期費用がかかり、さらに大型のプレス機械も必要になるため、初期投資が非常に高額です。試作用の金型材料や調整工程のコストも加わり、小ロット生産では金型費用を回収できないという問題があります。しかし大量生産になると、1個あたりの製造コストは大幅に下がり、材料の無駄も少なく高い経済性を発揮します。
参考)プレス加工のメリット・デメリット - 野口製作所
板金加工は汎用金型を使用するため金型費用がほとんどかからず、少量生産でも低コストで製造できるのが最大のメリットです。数個から数十個程度の製品でも、切削加工に比べて短時間かつ安価に製造できる可能性があります。ただし、力を加えて板材を変形させるという性質上、加工精度はプレス加工や切削加工ほど高くなく、高精度が求められる部品の加工には不向きです。
参考)【板金加工の基礎知識】メリット/デメリットを解説
プレス加工のもう一つの大きなデメリットは、形状の自由度が低いことです。一度金型を作ると形状変更が難しく、大きな変更には金型の作り直しが必要になり、追加の費用と時間がかかります。板金加工は汎用金型を使うため、設計変更への対応が比較的容易です。バイクのワンオフパーツや試作段階での形状検討には、板金加工の柔軟性が活きてきます。
参考)プレス加工のメリットとデメリットについて
プレス加工には目的に応じてさまざまな種類があり、それぞれ異なる形状を作り出せます。代表的なのが抜き加工で、金属板に穴を開けたり外周を切り抜いたりする加工です。曲げ加工は金属板を特定の角度に曲げる加工で、曲げ金型を使用して板を成形します。絞り加工は金属板を内側に絞り込む技術で、容器や筒状の形状を作り出すことができます。パンチ(雄型)とダイ(雌型)が一対の金型で材料を挟み、引張力を加えながら型と同じ形状に加工していきます。
参考)プレス加工の種類について代表的な加工法を紹介|ダイマガ
深い形状を作る場合は、1回のプレスでは目的とする深さまで変形できないため、複数回に分けてプレスを行い、少しずつ深さを出していく方法が使われます。これは板金加工では実現できない高度な技術です。引き抜き加工は金属板を金型の中で引き抜き、複雑な形状を作る加工で、自動車部品や精密機器の部品製造に使われています。
成形加工では薄い金属板に圧力をかけて所定の形状を作り上げます。プレス加工は大きな圧力で形状を作り出すため、強度や耐久性の高い部品が作れるという特徴があり、バイクのフレーム部品やエンジンカバーなどにも応用されています。金型を使用するため同一の形状を短時間で複数回生産可能で、品質の安定性が高いのもプレス加工の大きな利点です。
板金加工で扱える素材と板厚には一定の範囲があり、精度にも特徴があります。一般的な板金加工では板厚1mm〜10mm程度の金属板を扱い、主な材質は鉄(SS材)、ステンレス(SUS304など)、アルミニウムです。一方、精密板金加工では0.1mm〜3.0mm程度、場合によっては0.1mm以下の薄い金属板も加工可能で、鉄やステンレスに加えて銅、真鍮、黄銅なども扱えます。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/metal-machining/32344/
板金加工の寸法精度は、製品の大きさにもよりますが寸法公差は±0.5〜2.0mmくらいです。比較的単純な形状のものを製造するため、この程度の精度で問題ない用途に使われます。精密板金加工になると、電子機器の部品や医療機器の筐体のように複雑で精密な部品を製造するため、曲げ加工で±0.2mm以下、抜き加工で±0.05mm以下という厳しい寸法公差を満たす必要があります。
参考)https://bankin-labo.com/column/657
板金加工の加工限界は板厚・材質・形状・穴種によって設定されており、これらの限界値を下回ると加工ができません。例えばSPCC(ミガキ鋼板)であれば0.4mmから6.0mmまで、ステンレスはバネやシムに使用される0.05mmという薄板から4.0mmまで、アルミは0.4mmから2.0mm、銅・真鍮であれば0.1mmから加工可能です。バイクの軽量化パーツを作る際には、これらの材質と板厚の選択肢を理解しておくことが重要です。
参考)ものづくり基礎知識21 機械加工/金属加工の知識:板金加工に…