

一度観ただけでは真相を理解しにくいと思い込んでいませんか。
映画「プレステージ」は、2006年にクリストファー・ノーラン監督が手掛けたサスペンス作品です。ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールという2大スターが、ライバル関係にある天才マジシャン役で激突します。原作はクリストファー・プリーストの小説「奇術師」で、脚本はノーラン監督と弟のジョナサン・ノーランが共同で執筆しました。
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19世紀末のロンドンが舞台です。修行中の2人のマジシャン、ロバート・アンジャーとアルフレッド・ボーデンは、水槽脱出マジックの最中にアンジャーの妻ジュリアが溺死する事故に遭遇します。ボーデンが結んだロープが原因とされ、2人は決裂して激しいライバル関係となります。
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数年後、アンジャーは究極の瞬間移動マジックを完成させ観客を魅了していました。そのトリックを暴こうと舞台裏に侵入したボーデンは、水槽の中で溺死するアンジャーを目撃し、殺人容疑で逮捕されます。
つまり物語の核心ですね。
しかし逮捕されたボーデンの前に、死んだはずのアンジャーが現れるという展開が待っています。
「プレステージ」とは、マジックの完成における最終段階を指す言葉です。作中でも詳しく説明されており、マジックは3つの段階で構成されます。
第一段階は「確認(プレッジ、pledge)」で、観客に種も仕掛けもないことを証明します。第二段階は「展開(ターン、turn)」で、何かが消えたり変化したりして観客を驚かせます。
しかしこれだけでは観客は満足しません。
第三段階が「偉業(プレステージ、prestige)」で、消えたものが再び姿を現してこそマジックは完結し、観客は拍手喝采を送るのです。
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この三段階構造は映画全体の構成にも反映されています。観客をだまし、マジックを完成させるためには、仕掛けと事前の入念な準備が必要です。たとえ大きな危険や多くの犠牲を払ったとしても、観客を驚かせる瞬間はマジシャンにとって何ものにも代え難い喜びなのです。プレステージに到達することがマジックの真髄ということですね。
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映画冒頭に登場する「実は観客は何も見ていないし、何も知りたくない。騙されていたいのだ」というセリフは、作品を理解する上で重要なキーワードとなっています。
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アンジャーが最終的に編み出した瞬間移動マジックは、実は科学的な装置を使った驚愕のトリックでした。科学者ニコラ・テスラが発明した「コピー作成機」を利用したものです。ボーデンの日記に書かれた暗号「テスラ」を解読したアンジャーは、コロラドスプリングスまで赴きテスラから装置を手に入れました。
この装置は放電を浴びると物も人間もコピーされる機能を持っていました。機械により生み出されたコピーは、少し離れた場所に現れる仕組みです。アンジャーは自分でテストし、コピーされた自分を拳銃で消したと記録されています。テスラ自身は「危険だから海に捨てろ」と警告していました。
ショーの仕組みはこうです。舞台でアンジャーが装置の放電を浴びると、コピーが劇場の後方に出現します。一方、舞台にいた元のアンジャーは落とし戸から水槽に落下し、そのまま溺死します。つまりマジックのたびに1人のアンジャーが死亡していたのです。
ショックですね。
アンジャーは100個の水槽を用意し、助手のカッターにも種を教えませんでした。
参考)https://ameblo.jp/rsn48/entry-12251986561.html
ボーデンがトリックを暴こうと舞台裏に来て騒いだことで、アンジャーの溺死体が発見されました。その機会を待っていたアンジャー(コピー)は姿を消し、自分殺しの罪をボーデンに着せたわけです。
物語のもう一つの核心は、ボーデンが実は双子だったという事実です。ラストでもう1人のボーデンを見たアンジャーが「兄弟?双子か」と問うと、ボーデンは「違う」と答えますが、これは双子説とコピー説の両方の解釈を可能にする曖昧な回答となっています。
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作中には双子の存在を示す伏線が数多く散りばめられていました。修行時代、ミルトンの下積み時代の場面では、実はボーデンが2人いることが確認できます。ロープをゆるく結ぶ方と、完璧なマジックのために二重結びを提案する方がいたのです。ジュリアを殺してしまったのは二重結びをした方のボーデンBでした。
アンジャーが「どう結んだのか」と問い詰めた際、ボーデンが「すまないが、わからない」と答える場面があります。これはダブルミーニングで、視聴者は悪意を持って二重結びをしたと思わされますが、実はもう片方のボーデンBが結んだので本当に「わからない」のです。
これが真相ということです。
ボーデンの娘アンジェニアが服役中のボーデンとは別人の「ボーデン」の登場を平然と受け入れている場面も、双子の証拠となります。なんといっても彼女は「2人の」ボーデンの娘ですから。赤いゴムボールの場面に注目すると、この事実が理解できます。
ボーデンが双子だったという真相は、作中の様々な矛盾を説明します。ボーデンには妻サラと愛人オリヴィアという2人の女性がいました。サラはボーデンに違和感を感じており、時に「愛している」と言ったり言わなかったりする夫の態度に苦しんでいました。
この矛盾の理由は明白です。双子のうち一方はサラを愛しており、もう一方はオリヴィアを愛していたのです。2人で1つの「ボーデン」という人生を演じていたため、それぞれの愛する相手が異なっていました。サラが感じた違和感は、実際に別人と接していたからです。
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ボーデンの瞬間移動マジックのトリックも、双子だからこそ可能でした。一方が舞台に立ち、もう一方が別の場所から登場することで、瞬間移動を演出していたのです。二重結びのヒモへのこだわりも、双子の秘密が明かされることで理解できます。
参考)よく考えると怖い…謎めいたラストの意味は? 映画『プレステー…
アンジャーは毎回コピーを作り出し、元の自分を殺すという「手を汚す」方法を選びました。対照的にボーデンは一度だけファロンを作り(あるいは最初から双子で)、2人で半分ずつボーデンの人生を生きることを選択したのです。
つまり選択の違いですね。
この対比が映画のテーマの一つとなっています。
映画全体を貫くテーマは、冒頭のカッターのセリフ「観客は騙されたいと願っている」に集約されています。作品では「誰も欺いていなどいない」という逆説的な構造が採用されています。登場人物たちは実は誰も嘘をついていないのです。
参考)SF装置は嘘か本当か?ノーランの難解映画『プレステージ』|奇…
トリックを使うため、登場人物が本当のことを言わないという前提で観ていると、実は違うことに気づきます。テスラの装置を「SF的な本物」と見るか、アンジャーの「狂気の嘘」と見るかで、物語の印象が全く異なります。装置が本物だと観客に信じ込ませること自体が、映画というマジックのプレステージ(仕上げ)なのかもしれません。
ストーリーは「装置は本物」として進行しますが、「観客は騙されたいと願っている」というテーマ通り、真偽の境界が意図的に曖昧に描かれています。実は通常通りの替え玉トリックだった可能性も示唆されているのです。たくさんの複製死体が明確に出てこない描き方は意図的です。
ボーデンはトリックを見抜く天才なので、アンジャーの装置が本物かどうか見抜いていた可能性があります。2度目の鑑賞では「嘘だと思って伏線探しをする」と、なかなか楽しめます。
いいことですね。
ノーラン監督が仕掛けた映画自体のマジック構造を理解することで、作品の深みが増すのです。
この映画は一度観ただけでは理解しきれない複雑な構造を持っています。2回目以降の鑑賞で気づく伏線や仕掛けが数多く存在するため、繰り返し観ることでより深く楽しめる作品です。
参考)【プレステージ】感想、考察。どっちがどっちか分からんくなる …
注目すべき場面がいくつかあります。冒頭の大量のシルクハットは、後にわかるコピー装置の示唆となっています。修行時代の場面でボーデンが2人いることや、赤いゴムボールの場面も重要な伏線です。ボーデンの指が欠けている場面も、双子のうち一方だけが犠牲を払ったことを示しています。
U-NEXTやAmazon Prime Videoなどの動画配信サービスで視聴可能です。U-NEXTでは31日間の無料お試し期間があり、見放題作品として何度でも観ることができます。初回視聴では物語の展開に驚き、2回目以降は伏線探しを楽しむという鑑賞スタイルがおすすめです。
参考)「プレステージ(吹き替え/字幕)」の映画を動画フルで無料視聴…
映画.comでは3.6点、Filmarksでは3.8点の評価を得ています。クリスチャン・ベールの演技に引き込まれたという感想や、ラストまで気を抜けない展開が楽しめたという声が多く寄せられています。デヴィッド・ボウイがテスラ役で出演していることも見どころの一つです。
参考)プレステージ - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配…
映画.com プレステージ作品情報 - キャスト・スタッフ・評価の詳細
Wikipedia プレステージ - タイトルの意味と三段階構造の解説
ボーデンは双子なのかコピーなのか?という疑問は多くの視聴者が抱きます。アンジャーが「君とファロンは双子か」と問うと、ボーデンは「違う」とはっきり否定しています。この回答から、コピー説が濃厚だとする解釈もあります。
しかし双子説を支持する証拠も多数存在します。作中の伏線や、2人で1つの人生を生きるという選択は、双子であることの方が自然に説明できます。どちらが正しいかは個人の解釈に委ねられており、ノーラン監督は意図的に曖昧にしているのです。
アンジャーのコピーはどこへ行ったのか?という疑問も重要です。ショーを行うたびにアンジャーは自殺していました。舞台から姿を消したアンジャーは、舞台の下に予め設置されていた水槽に落ち、そのまま息絶えます。一方、コピーされたアンジャーが劇場の後方から現れて観客を驚かせます。
参考)映画 プレステージ ネタバレ感想 オリジナルは死んだ。お前…
最初の瞬間移動のお披露目をした時にオリジナルが死亡し、そこからマジックのたびにコピーの方が生き残るという解釈もあります。最終的にボーデンに撃たれたアンジャーが、何人目のアンジャーなのかは明確にされていません。
それが謎ですね。
テスラの装置は本物なのか?という根本的な疑問については、映画は明確な答えを出していません。「装置は本物」として物語は進行しますが、実は大がかりなトリックのための仕掛けにすぎず、通常通りの替え玉トリックだった可能性も残されています。この曖昧さこそが、ノーラン監督の仕掛けた映画というマジックのプレステージなのです。