

バイクのエンジン内部では、燃焼により発生する高温が金属部品に熱膨張という物理現象を引き起こします。ピストンは温度が50度上昇するだけで約0.1mm膨張することが実測データで確認されており、これは人間の髪の毛1本分ほどの変化です。運転中のピストン温度は70度をはるかに超えるため、実際の膨張量はさらに大きくなります。
エンジンが熱を帯びると、シリンダーは内側に膨張して直径が小さくなり、ピストンは外側に膨らんで大きくなります。
結果としてクリアランスが狭まります。
この物理現象を考慮せずに設計すると、ピストンとシリンダーが接触して焼き付きを起こす危険があります。
空冷エンジンは走行風で冷却する構造上、シリンダー周りの温度を水冷のように一定に保てません。熱膨張を前提に余裕を持たせる必要があるため、普段走っているときはピストンクリアランスが大きめに設定されています。つまり空冷と水冷では設計思想が異なるということですね。
参考)エンジンの「空冷」と「水冷」はどっちがいいの? 【今さら聞け…
バイクの冷却方式には水冷・空冷・油冷の3種類があり、それぞれ異なる物理的メカニズムでエンジンを冷却します。
参考)https://ameblo.jp/shimi-shimizoo/entry-12890378298.html
水冷エンジン
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空冷エンジン
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油冷エンジン
現在主流なのは水冷エンジンです。
高出力化が進む現代のバイクエンジンでは、冷却能力の強化が不可欠になっており、水冷システムの採用が増えています。冷却システムは1つのサーキットになっており、どこか一箇所でも機能低下があるとシステム全体の性能低下につながります。
冷却システム内部では、オーバーヒート時に気泡が発生する物理現象が起こります。冷却水が沸騰すると気泡が形成され、割れた瞬間に反発力が発生します。いわばプチ爆発に近い衝撃波を伴う物理現象です。
この爆発が冷却経路内部のパーツにダメージを与えてしまい、腐食や劣化の原因となります。水冷エンジンの場合、冷却水が熱くなると膨張し、ラジエター内のリザーブタンクの容量を超えると水漏れする恐れがあります。
冷却水やエンジンオイルは経年劣化することで冷却機能が失われます。エンジンを十分に冷却できなくなるとオーバーヒートを起こす可能性があるのです。
定期的な点検が基本です。
オーバーヒートした際の対応を誤ると、エンジン破損という大きな出費につながります。修理代は状態によって2万円以上、ラジエーター交換が必要な場合は3万円から8万円以上かかる可能性があります。
参考)バイクのエンジンが熱くなってきた際に、水をぶっかけて冷やすの…
絶対にやってはいけないこと
オーバーヒートしているエンジンに水を掛けると、掛けた場所だけ急激に温度が下がり、周囲との温度差でエンジンが割れてしまう事があります。急激な温度変化によって金属部品が割れる危険があるためです。熱い時にラジエーターキャップを開けると、高圧の熱湯が噴き出し大火傷をする恐れがあります。
参考)【ライダー必見】愛車を熱から守る!バイクのオーバーヒート完全…
正しい応急処置
「急にエンジンを止めると局所的に熱が溜まる」という話もありますが、それは冷却系が正常な場合です。そうでなければ水温が上昇し続けて危険なので、すぐにエンジンを止めて被害の拡大を防ぎましょう。
これが原則です。
ラジエター本体を冷やすのは有効な対策です。水冷エンジンは冷却水をラジエターで冷やしてエンジン全体に回す仕組みのため、ラジエターに霧吹きで水をかけるのは問題ありません。
参考)バイクのオーバーヒートとは?予兆、症状、原因、応急処置方法、…
冷却水の代わりに水道水を長期使用すると、冷却システムに深刻なダメージを与えます。水道水にはカルキ(塩素)やミネラル分が多く含まれており、これが物理的なリスクをもたらします。
参考)https://wiple-service.com/column/coolant-vs-tap-water-engine-lifespan-cost-safety/
水道水で補充した場合、ラジエーターやウォーターポンプ内部でサビやスケール(石灰質の付着物)が発生しやすくなります。硬水エリアでは腐食リスクが最大5倍に上るとの検証データも報告されています。スケールが付着すると冷却経路の目詰まりに直結し、冷却性能が低下します。
冷却水には凍結への対策や防錆効果などの加工が施されており、気温に左右されずに安定して役割を果たします。
一方で水道水は無加工のただの水です。
長期使用するとタンク内が錆びることや、凍結を起こすことで冷却水としての役割を果たせなくなるケースもあるでしょう。
参考)バイクの冷却水は水道水で代用できる?注意点も紹介【矢野】 –…
ただし一時的な応急処置として水道水を使用することは可能です。ツーリング中のトラブルなどで冷却水を補充しなければならなくなった場合、一時的な使用であれば水道水を使っても構いません。応急処置後は早めに専用の冷却水に交換する必要があります。
参考)https://www.goobike.com/magazine/maintenance/cost/138/
冷却水を希釈する際には水道水を使えます。そもそも水道水で希釈されることを見込んで、防錆剤などの濃度が調整されているためです。
これは例外です。
エンジンオイルは温度上昇により粘度が変化する物理現象を示します。オイルの粘度は温度が上がっていくにつれて低下し、シャバシャバになってくるのがオイルの特性です。
参考)バイク用エンジンオイルの粘度って?気温やオイルの温度に注目!
エンジンオイルの粘度表記は「10W-40」のように表され、前半が低温粘度、後半が高温粘度を示します。低温粘度はエンジンをかけてすぐの状態を表し、オイルが低温のときは粘りが強いとエンジンを動かしにくくなります。
高温粘度は「どのくらい油膜が切れないか」を表しています。エンジンオイルが100度になったときにどのくらい粘度があるかがチェックできます。後半の数字が大きいほど粘度が高く、熱に強いエンジンオイルだとわかるでしょう。
冷却水やエンジンオイルはエンジンを冷やす役割も担っています。しかし経年劣化することで冷却機能が失われ、エンジンを十分に冷却できなくなってしまうのです。
定期的な交換が必須です。
適切なエンジンオイルを選ぶことで、温度管理がしやすくなり冷却システムの負担を軽減できます。愛車の取扱説明書に記載された推奨粘度を確認し、走行環境や季節に応じて選定することをおすすめします。
サーモスタットは冷却システムの要であり、故障すると深刻な問題を引き起こします。サーモスタットは始動後、冷却水温が上昇するまで弁を閉じてエンジン内で冷却水を循環させ、設定温度(80℃前後)に達すると弁を開いてラジエターに循環させます。
参考)サーモスタット点検方法
サーモスタット故障で起きる症状は、基本的に弁が「閉じたまま」か「開いたまま」のどちらかです。
弁が閉じたまま故障した場合
弁が開いたまま故障した場合
簡易点検方法として、エンジンを始動させラジエター全面に手のひらを当てて覆います。ラジエター下部は熱が伝わり徐々に暖かくなるがラジエター上部は冷たいままなら正常です。サーモスタットが開くと一気にラジエター全体が熱くなります。
冷却システムの定期点検を怠らず、サーモスタットの動作を確認することで、オーバーヒートによるエンジン破損を未然に防げます。バイクショップでの定期点検や、自分でできる簡易チェックを習慣化しましょう。温度が上がり過ぎると金属材料の強度低下や熱歪みによる亀裂の発生、焼き付き、ノッキングなどのトラブルが発生します。トラブルが悪化すると最悪エンジンを壊してしまいます。
参考リンク:サーモスタットの詳しい点検方法について
サーモスタット点検方法
参考リンク:バイクのオーバーヒート対策の詳細
バイクがオーバーヒートした際の直し方は?原因や対策方法も解説…

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