求心力とバイクの物理現象を理解し安全走行を実現する方法

求心力とバイクの物理現象を理解し安全走行を実現する方法

求心力とバイクの物理現象

コーナー途中でアクセルを開けるとバイクが外に膨らんで転倒します

この記事の3つのポイント
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求心力の正体

バイクを曲げているのは遠心力ではなく、タイヤが路面を押すことで得られる求心力です

⚖️
バンク角と速度の関係

時速50kmで半径20mのカーブを曲がるには45度以上のバンク角が必要になります

⚠️
コーナー中の加速の危険性

旋回中にアクセルを急に開けると遠心力が増大し、バランスが崩れて転倒リスクが高まります

求心力の定義とバイク旋回の基本原理


バイクがカーブを曲がる時、多くのライダーは「遠心力に耐えながら曲がっている」と考えています。しかし物理学的には、バイクを曲げているのは求心力(向心力)です。


参考)https://ameblo.jp/bb-myr/entry-11548116030.html


求心力とは、円運動をする物体を円の中心方向に引っ張る力のことです。バイクが旋回する際、タイヤが路面を外側に押すことで、その反作用として路面から内側への力を受け取ります。


これが求心力です。



一方、遠心力は実際には物体に働いていない「見かけ上の力」と呼ばれています。これは円運動している物体と一緒に動いている観測者(つまりライダー自身)が感じる力です。


つまり遠心力は存在しないということですね。



参考)走行理論  遠心力は存在しない。


バイクを傾けるのは、重力と遠心力(ライダーが感じる外向きの力)のバランスを取るためです。傾けることでタイヤの接地面が変化し、キャンバースラストスリップアングルという2つの要素によって求心力が発生します。この求心力がバイクを円の中心方向に引っ張り、カーブを曲がることができるのです。


直立したままコーナリングしようとすると、求心力が発生せず外側に倒れてしまいます。そのためバイクは旋回する際にコーナーの内側へ倒れて、それによって発生する求心力で外向きの力に対抗しているわけです。


参考)minibike top


バイクのバンク角と速度の物理的関係

バイクがカーブを安全に曲がるためには、速度とカーブの半径に応じた適切なバンク角が必要です。


バンク角は数式で計算できます。



参考)バイクを物理的に考えてみよう <コーナー編> - NTUCE…


バンク角θは以下の式で表されます。


θ=arctan(v2gR)θ = \arctan\left(\frac{v^2}{gR}\right)θ=arctan(gRv2)
ここで、v は速度(m/s)、g は重力加速度(9.8m/s²)、R はカーブの半径(m)です。

具体例を見てみましょう。半径20mのカーブを曲がる場合、時速30km(約8.3m/s)では約70.5度のバンク角が必要です。時速50km(約13.9m/s)では45.45度、時速60km(約16.7m/s)では35.2度必要になります。時速50kmで既に半分倒れている状態ですね。

興味深いことに、バンク角が同じであれば、高速で大きな半径を旋回している時も、低速で小さな半径を旋回している時も、ライダーが感じる遠心力はほぼ同じになります。これはバンク角45度で1Gのコーナリングフォースがかかるという計算からも確認できます。


ただし、バイクが0度まで倒れることはありません。スーパースポーツでも16〜25度倒れればタイヤは既に地面をつかめなくなる限界に達します。バイクの場合、バンク角をどれだけ傾けても約1.7Gが限界で、それ以上はステップをテコにしてタイヤが浮いてしまいます。


参考)バイクは時速何キロで曲がれるのか? - MOTONISKY


求心力を生み出すタイヤのグリップメカニズム

タイヤが求心力を生み出す仕組みには、2つの摩擦が関わっています。1つ目は粘着摩擦(凝着摩擦)、2つ目はヒステリシス摩擦です。


粘着摩擦は、タイヤのゴムと路面が分子レベルで引っ付く現象です。この摩擦が強いとグリップ力は高くなりますが、限界点を超えた時のリカバーがしづらくなります。


一気に滑るということですね。


ヒステリシス摩擦は、タイヤが変形する時と元に戻る時の振動によって生まれます。この摩擦が強い場合は最大グリップは低めですが、滑り出しが緩やかで限界付近でもコントロールしやすい特性があります。


旋回中、タイヤの接地点は移動します。加速を始めるとタイヤ接地点は後方に移り、旋回を始めるとコーナーの内側後方に接地点が移動するのです。旋回しながら加速していると、ハンドルから押されたり引かれたりする力を感じることがありますが、これは接地点の移動が原因です。


身体の力を抜くとタイヤのグリップが増えるという事実も覚えておきましょう。ライダーが緊張して身体に力を入れると、バイクの動きが硬くなりタイヤのグリップやバイクの細かな動きを感じられなくなります。リラックスした状態の方がタイヤのグリップ力を最大限に引き出せるわけです。


参考)ライテクをマナボウ「身体の力を抜くと タイヤのグリップが増え…


コーナリングでは、バンク角の深さや重心の乗せ方、ライディング姿勢によってタイヤのグリップ力が発生する位置が外側もしくは内側へと変動します。適切な重心位置を保つことが、安定したコーナリングには欠かせません。


参考)https://www.goobike.com/magazine/ride/technique/8/


バイクのコーナリング中に加速すると起きる現象

コーナーの途中でアクセルを開けて加速すると、バイクにはどのような力が働くのでしょうか?実はこれが転倒の大きな原因になります。


通常のコーナリング時、バイクは外側への遠心力とバランスを取って傾斜をつけています。しかしコーナー途中で加速すると、外側にかかる遠心力に加えて前に引っ張られる力が発生します。左カーブを曲がっている時に加速すると、右斜め前にかかる力がいきなり強くなるのです。


この合成された力は、ライダーが想定しているバンク角では支えきれないほど大きくなります。結果として、バイクは外側に膨らんだり、バランスを崩して転倒するリスクが高まります。


物理的に説明すると、速度vがv'に加速すると遠心力が増加します。遠心力は速度の2乗に比例するため、少しの加速でも大きな影響があるということです。その結果、旋回中のバランスが崩れてバイクを引き起こすモーメントが発生し、バイクが起き上がってきます。


カーブの立ち上がりで意図的にアクセルを開けるのは、バイクを起こすための正しいテクニックです。しかし、コーナーの途中で急にアクセルを開けるのは危険行為になります。スロットルを上手に微調整しながら曲がり、カーブの出口が見えるあたりで徐々に加速させるのが原則です。


参考)バイクでカーブを安全に曲がるには?


リアタイヤからのスリップダウンも、立ち上がりでのアクセルの開け過ぎが原因です。タイヤのグリップ力と相談しながら徐々にアクセルを開けることが重要ですね。


求心力を意識した安全なコーナリング技術

求心力の物理現象を理解したら、次は実践的なライディングテクニックに活かしましょう。カーブを安全に曲がる基本は「スローイン・ファーストアウト」です。


まず、カーブに差し掛かる前にブレーキで十分に速度を落とします。スピードが速いほど遠心力も大きくなって、カーブを曲がりきれない可能性が高まるからです。


カーブ進入時の減速は必須です。



参考)https://www.zurich.co.jp/motorbike/guide/cc-turn-curve-clutch/


必要に応じて最適なギアシフトダウンしておくことも重要です。コーナー中にクラッチレバーを握ると、路面との接続が不安定になり危険な状態になります。


カーブ前にシフトダウンを完了させましょう。



参考)バイクのコーナリングが下手すぎる!から楽しく走れるにはどうす…


カーブ中は一定の速度を保ちながら、少しのアクセルで失速を防ぎます。完全にアクセルを閉じると、かえって不安定になることがあります。


軽めにアクセルを当てておくのがコツです。



ハングオフ(ハングオン)というテクニックも効果的です。これは体重(重心)をカーブの内側に移動させることで、車体を無理に傾けすぎなくても強い遠心力に耐えられるようにする技術です。お尻を大きくイン側にずらすことで重心位置が変わり、より安定したコーナリングが可能になります。


目線はカーブの出口方向に移し、路面状況などを情報収集することも忘れずに。


視線の先にバイクは進んでいきます。


カーブの出口が見えたら、アクセルを少しずつ開けていくと自然と車体が起き上がってきます。車体が十分に起き上がったら、徐々に加速させましょう。


コーナー中にフロントブレーキを使うのは転倒の原因になります。バンキング中にフロントブレーキを握り過ぎると、フロントタイヤのグリップ力が限界を超えてスリップダウンします。速度調整が必要な場合はリアブレーキを使うのが基本です。


求心力を理解することで得られるライディングスキル向上

求心力とバイクの物理現象を正しく理解すると、ライディングスキルは大きく向上します。なぜなら、バイクの挙動を予測できるようになるからです。


例えば、カーブが膨らむ現象の原因が理解できます。カーブに入るスピードが早すぎると、より大きく傾ける必要があります。バイクの傾きが不十分だと、遠心力(外向きの力)が勝って理想的なラインよりも外側に膨らんでしまうのです。


これが分かれば対策も明確です。



S字コーナーでは切り返しのタイミングで、アウト側グリップを押すかイン側グリップを引くことで前輪の接地点がイン側へ移動します。すると重心三角形と重力ベクトルにズレが生じ、バイクを引き起こすモーメントが発生するという仕組みが理解できます。物理を知っていれば応用が効くということですね。


転倒の原因も物理的に説明できます。急ブレーキによるタイヤのロック、水や砂が浮いた路面など摩擦が低い状態でのグリップ喪失、危険を避けようと急ハンドルを切ることによるスリップダウンなど、すべて求心力とグリップ力の関係から理解できます。
上級者のマネをしても上手くいかない理由も物理で説明がつきます。見た目が同じでも、重心の配分が大きく異なることがあります。視覚を頼りに形だけマネをしても、重心が高い状態になってしまうと不安定になります。


参考)なぜ上級者のマネをしても曲がれないのか?コーナリングの謎を解…


求心力を意識したライディングを続けることで、タイヤのグリップやバイクの動きを感じられるようになります。これによってバイクライディングをより奥深く楽しめるようになるでしょう。物理の知識は実践的なスキルに直結するのです。


JAFのバイクでカーブを安全に曲がる方法
カーブの安全な曲がり方の基本テクニックが詳しく解説されています。


クシタニのライディングテクニック解説
身体の力を抜くことでタイヤのグリップが増えるという実践的なアドバイスが参考になります。




マルホランド・ドライブ