重心三角形とバイクの物理現象|安定性と転倒防止の原理

重心三角形とバイクの物理現象|安定性と転倒防止の原理

重心三角形とバイクの物理現象

重心が高いほどバイクは不安定になると思われがち。


この記事のポイント
📐
重心三角形が安定のカギ

前輪接地点・後輪接地点・重心位置の3点が作る三角形と重力ベクトルの関係で転倒が決まる

⚖️
理想の重心配置は45度の三角定規

ホイールベース中央で重心高とホイールベースの比が2:1の時、ウィリー・ジャックナイフ・スリップの限界がバランスする

🏍️
ライディングで重心を操作できる

前傾やハングオフによる重心移動で接地荷重が変化し、コーナリング性能や安定性を高められる

重心三角形とバイクの基本原理


バイクは走行中、前輪と後輪の2点でしか地面に接していないのに転倒せず安定しています。この不思議な安定性を説明するのが「重心三角形」という概念です。


重心三角形とは、前輪の接地点と後輪の接地点、そしてライダーの体重も含めた車両全体の重心位置の3つの点を結んで描ける三角形のことです。


これが基本です。



参考)https://global.yamaha-motor.com/jp/design_technology/technical/publish/pdf/browse/47gr01.pdf


バイクが一定速度で走行している状態では、重心に地球の引力によって鉛直方向に荷重が発生しており、この力を「重力ベクトル」と呼びます。重力ベクトルの延長線と重心三角形の面が重なっている間は、バランスが保たれてバイクは自立した状態を維持できるのです。


逆に言えば、重力ベクトルが重心三角形の面からはみ出すと転倒モーメントが発生し、バイクは倒れてしまいます。この原理を理解すれば、なぜバイクが倒れるのか、どうすれば安定するのかが見えてきますね。


重心三角形の理想形は45度の三角定規型

バイクの理想的な重心配置には、明確な基準が存在します。路面とタイヤの摩擦係数がμ=1.0(一般道の舗装路と通常タイヤの組み合わせ)の場合、ライダーを含んだ重心がホイールベースの中央で、ホイールベースと重心高の比が2:1という配置が理想です。


これを図形で表すと、直角二等辺三角形、つまり45度の三角定規のような形になります。


つまり三角定規の形が基本ということですね。



この配置では、ウィリー限界とジャックナイフ限界、ホイールスピン限界の3つがすべてバランスしている状態になります。クルマと違ってバイクは旋回時にリーン(車体を傾ける)するため、重心が高くても大きな問題にはなりません。


実際のバイクがこの理想形からどれだけずれているかによって、加速時にウィリーしやすいか、減速時にジャックナイフしやすいかが決まります。設計者はこのバランスを考慮してバイクの寸法や重量配分を決定しているのです。


参考)ホンダ・ゴールド ウィングのサスペンション[モーターサイクル…


バイクのウィリーとジャックナイフの物理的限界

急加速でフロントが浮くウィリーと、急ブレーキリアが浮くジャックナイフは、重心三角形の原理で説明できます。ウィリーが起きると前輪の荷重はゼロになり後輪だけが接地し、ジャックナイフでは後輪の荷重がゼロになり前輪だけで接地する状態です。


ジャックナイフ開始減速度は「前輪から重心までの水平距離÷重心高」という式で計算できます。


これは実用的です。



ジャックナイフしやすい条件は重心が高く、かつ前方にあることです。逆にウィリーしやすい条件は重心が高いのは同じですが、前後位置は後方になります。つまり同じ「重心が高い」という条件でも、前後位置によって真逆の挙動を示すわけです。


一旦ジャックナイフでリアが浮くと、さらに重心高が上がり前輪から重心までの距離も小さくなるため、ジャックナイフを維持するにはブレーキを緩める側のコントロールが必要になります。バイクでウィリーやジャックナイフが起きやすいのは、クルマよりもずっと重心が高く、ホイールベースが短いからなのです。


重心三角形とライディングポジションの関係

ライダーが上体を前傾させると、ライダーの重心がやや前方へ移動し、同時に上下方向でもやや下側へ移動します。車両も含めた全体の重心が移動することで、前輪の接地荷重が増加し、後輪の接地荷重はやや減少します。


逆に上体を起こすと後輪の接地荷重が増加することになります。このような荷重変化により、コーナリング時の安定性や加速・減速時の挙動が変わってくるのです。


ハングオフでは体重がイン側に移動(体重移動)し、車両を含めた総重心位置もイン側に移動します。その結果、実バンク角は車体のバンク角よりも深くなり、より大きな遠心力とつり合うため、コーナーをより速い速度または小さな旋回半径で回ることが可能になります。


参考)301 Moved Permanently


もし体重移動でバイクが傾くだけなら、体重移動したままではバイクは傾き続けて転倒してしまうはずですが、実際は遠心力とつり合ってバランスが取れるため転倒しません。これはライダーの慣性モーメントによる反力発生作用によるものです。


重心三角形とジャイロ効果による走行安定性

バイクの安定性には重心三角形だけでなく、ジャイロ効果も大きく関与しています。走行中に右に微妙に車両が傾いた場合、前輪のジャイロモーメントによって前輪が右に転舵されます。


バイクは前進しているので前輪の接地点は右側へ移動し、重心三角形と重力ベクトルが重なって安定状態を獲得し、転倒モーメントがゼロになります。高速では0.1度以下の微少な転舵を繰り返すことで安定を保っているのです。


エンジン回転数を上げるとクランクシャフトが高速回転するため、ジャイロ効果の影響が強くなりバイクは安定します。


厳しいところですね。



高速道路で風に煽られる場合は、いつもより1つ低いギアに入れて敢えてエンジンの回転数を高めにすることで、車体を安定させて煽られにくい状態を作ることができます。これは重心三角形の制御とジャイロ効果を組み合わせた実践的なテクニックと言えます。


参考)バイクのジャイロ効果とは?影響と例を初心者向けにわかりやすく…


重心三角形を意識した低速転倒の防止法

バイクの転倒事故で多いのが、停止時や極低速時の立ちゴケです。またがった時の足つきが悪く傾いたバイクを支えられなかった、取り回し中にバイクの重さに耐えられなかった、極低速時にエンストやバランスを崩して倒れた、といったケースが典型的です。
低速時は前輪のジャイロ効果が弱く、重心三角形と重力ベクトルを一致させるための転舵応答が遅れるため、バイクは不安定になります。このため、低速では意識的に重心三角形を管理する必要があるのです。


具体的には、停止前に車体をできるだけ直立に近い状態に戻しておく、停止時は片足を確実に接地してから車体を支える、取り回し時はバイクを自分の体に引き寄せて重心を近づける、といった対策が有効です。


意外ですね。


また、重心の高いバイクや重量のあるバイクほど、わずかな傾きでも大きなモーメントが発生するため、早めの足つきと確実な支持が重要になります。重心三角形の概念を理解していれば、どのタイミングで足をつけばバランスを保てるかが予測できるようになります。


元ヤマハエンジニアによる二輪運動力学の詳細解説(ライダースクラブ)
理想の重心位置に関するモーターサイクル運動学講座(Motor-Fan)
ヤマハ技術資料:二輪の走行メカニズムと重心三角形(PDF)




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