

低速でバンクすると転倒します。
バイクがコーナーを曲がるとき、外側へ飛び出そうとする力が働きます。
これが遠心力です。
スピードが出れば出るほど、そしてカーブが急であればあるほど、この力は強くなります。遠心力の大きさは速度の2乗に比例するため、同じカーブであっても速度が2倍になれば遠心力は4倍に大きくなります。
つまり速度の影響は非常に大きいということですね。
参考)【バイクでバンクが怖い人へ】曲がらない・転倒の理由と遠心力の…
ライダーは車体を内側に傾けることで、重力を使って外側への遠心力を打ち消し、バランスを取っています。興味深いのは、バンク角が同じであれば、高速で大きな半径で旋回している時も、低速で小さな半径で旋回している時も、遠心力はほぼ同じになるという点です。
バンク角の計算は物理の法則に従います。摩擦を考えない場合、バンク角θは「tanθ = v²/(gR)」で求められます(vは速度、gは重力加速度9.8m/s²、Rは曲率半径)。速度が上がるか旋回半径が小さくなると、必要なバンク角は大きくなります。
参考)カーブのバンク角の計算
実際の検証では、60km/hと比べ80km/hでは旋回半径が2倍以上になることが確認されています。速度が上がるにつれて回転半径が大きくなるのは、遠心力の増加に対応するためです。
参考)速度と路面によって変化!二輪車の制動や旋回の特性を検証:マピ…
バイクを旋回させるためには、旋回時の遠心力と釣り合うコーナリングフォースが必要です。二輪車を旋回させる力は、車体のキャンバー角によるキャンバースラストが主となります。
参考)https://www.bridgestone.co.jp/products/tire/mc/howto/role.html
キャンバースラストとは、回転するタイヤが地面から受ける横方向の力のうち、タイヤの横方向への傾き(キャンバ角)と接地面の広がりに由来する成分を指します。タイヤの外径は直進時が最大で、フルバンクに近づくほど小さくなります。この差異を利用して曲がるのがキャンバースラストです。
参考)高田速人さんのスポーツライディングブートキャンプ|Vol.4…
コーナリング時の遠心力に対し、キャンバースラストだけでは不足する場合には、ハンドルを切ることにより、スリップ角によるコーナリングフォースを発生させて補います。旋回しているタイヤのグリップ力は、キャンバースラストとコーナリングフォースの2つの要素に分けて考えることができます。
参考)https://grandprix-book.jp/files/978-4-87687-385-2.pdf
バンクしてコーナリングするから、遠心力が働きます。そして、シートからも、タイヤを路面に押しつける方向で荷重されるため、タイヤのグリップ力も引き出せます。結論は遠心力がグリップ力を高めるということです。
コーナーの曲率半径に対して、コーナリングスピードが低いのに、バンクさせても、遠心力が働かないため、成り立ちません。どういうことでしょうか?
ある程度の速度、遠心力があればタイヤやサスペンションを押し付ける力も上がるため安定性もグリップ力も上がります。逆に初心者がふとしたところで転倒するのも、きちんと遠心力を活かしきれてない場合があります。
水の入ったバケツを上下に振り回すのと同じことです。適切な速度がないと、バケツの水は遠心力で外側に押し付けられず、こぼれてしまいます。バイクも同様に、低速でバンクさせるとふらふらするでしょう。
コーナリングスピード、バンク角、遠心力、コーナリングGをうまくバランスをとっていくことが大事です。低速走行時には、無理にバンクさせようとせず、適切な速度を維持することが転倒回避の基本です。
実際の走行では、コーナーに進入する前に適切な速度まで加速し、その速度に応じたバンク角で曲がることが安全につながります。荷重をかけられてないと表現される状態は、グリップ力が不足している危険な状態を意味します。
ハングオフ(ハングオン)と呼ばれる技術があります。自分の体重(重心)をカーブの内側に移動させることで、車体を無理に傾けすぎなくても、強い遠心力に耐えられるようになります。
プロのレーサーは、その限界を超えて肘まで接地させることがあります。これは、現代のタイヤの進化と、ライダーの驚異的なバランス感覚、そして物理法則が完璧に噛み合った証です。
つまり高度な技術の結晶です。
体重移動によって重心位置を変えることで、同じ遠心力に対してより浅いバンク角で対応できるようになります。バイクを傾けて遠心力に身を任せる状態が、安定した二次旋回を生み出します。
タイヤのグリップ感がしっかり伝わってくるから、安心感があります。安心感があるから、適正なバンク角までもっていけます。バンクしてコーナリングするから、遠心力が働き、シートからも、タイヤを路面に押しつける方向で荷重されるため、タイヤのグリップ力も引き出せます。
ハングオン技術を習得する際は、まず適切な速度で遠心力を発生させることが前提条件です。遠心力がないまま体を内側に倒しても、バランスが崩れて転倒リスクが高まるだけです。
段階的な練習が必要です。
300km/h時のバイクのタイヤには、驚異的な遠心力がかかります。Ninja H2のリヤタイヤ(7kg)の場合、300km/hで走行すると、タイヤ全周にかかる遠心力は13トン以上になることが計算されています。
参考)blueskyfuji: 300km/h時、N…
7kgの鉄球のハンマー投げで、回転半径2m、回転速度2回転/秒で回すと、鉄の球が233.8kg重になります。この小さな球がバーベルと同じ位の重さになるほど、遠心力はすごいということですね。
300km/h時、タイヤの半径は32.6cm、タイヤ円周は2mなので、300km/hではタイヤが2500rpmで回転します。タイヤを1kg軽量化することで、300km/h時の遠心力は約2トン軽減されます。
高速走行でタイヤがバーストする事例は実際に発生しています。あるライダーの最高速アタックでは、330km/hあたりでタイヤがバーストし、制御不能になってコースアウトして大クラッシュしました。マシンは大破しましたが、ライダーは生きていたのが奇跡的でした。
タイヤのバーストがここまで引き起こすことがあるため、高速走行時にはタイヤの状態確認が必須です。特に長時間の高速走行では、タイヤに極めて大きな負荷がかかります。すごく遠心力がかかって負荷が大きいタイヤの管理は、安全走行の基本です。
定期的なタイヤの点検とメンテナンスを行うことで、バースト事故のリスクを大幅に減らせます。空気圧のチェック、摩耗状態の確認、タイヤの製造年月日の把握などが重要になります。バイク用品店やディーラーでの定期点検も活用しましょう。
ブリヂストン公式サイト:二輪車用タイヤの役割とキャンバースラスト、コーナリングフォースの詳細な解説