グリップ力 バイクの物理現象 摩擦係数と荷重移動の関係

グリップ力 バイクの物理現象 摩擦係数と荷重移動の関係

グリップ力 バイクの物理現象

タイヤを太くしてもグリップ力は増えません。


この記事の3つのポイント
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グリップ力の物理法則

摩擦力は摩擦係数と荷重の積で決まり、接地面積は無関係

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空気圧とグリップの誤解

空気圧を下げてもグリップは増えず、転がり抵抗が増加するだけ

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荷重移動の重要性

ブレーキングとコーナリングでの荷重配分がグリップを最大化する

グリップ力を決める摩擦係数と垂直荷重


バイクのタイヤが路面を捉える力、つまりグリップ力は物理学の摩擦力で説明できます。摩擦力の公式は「摩擦力(F)=摩擦係数(μ)×垂直荷重(N)」です。摩擦係数は路面とタイヤの組み合わせで決まる数値で、乾いた路面とゴムの組み合わせでは1〜2程度になります。


参考)コラム『 “グリップ力” を高めて走れ 』(仮題)の公開に向…


垂直荷重とは、タイヤが路面を押す力のことです。バイクとライダーの重量が一定なら、この荷重も基本的には一定になります。つまり摩擦係数が同じであれば、グリップ力は荷重によって決まるということですね。


この公式から分かる重要な点があります。接地面積は摩擦力の計算式に含まれていません。タイヤが太くても細くても、同じバイクで同じゴムのタイヤなら、グリップ力は理論上同じです。


参考)太いタイヤはなぜハイグリップなのか? - Webikeプラス


高校物理の教科書にも書かれている通り、面積を変えても摩擦力は変わらないのが原則です。ただし実際の走行では、太いタイヤは荷重変動に対して安定性が高いというメリットがあります。


タイヤの空気圧を下げるとグリップが落ちる理由

「空気圧を下げるとグリップが上がる」という話を聞いたことがある方は多いでしょう。確かに空気圧を下げるとタイヤがたわみ、接地面積は増えます。しかし前述の摩擦力の公式を思い出してください。


接地面積が増えても、摩擦係数とバイクの重量は変わりません。つまり物理的にはグリップ力は変わらないということです。それなのに「グリップが上がった」と感じる理由は別にあります。


空気圧を下げるとタイヤの転がり抵抗が大幅に増加します。自転車でも空気の抜けたタイヤはペダルが重いですよね。バイクも同じで、同じスロットル開度では速度が出なくなります。


そのため普段より多くスロットルを開ける必要が出てきます。「今までよりアクセルが開けられる」という事実が、「グリップが上がった」という錯覚を生むのです。実際にはグリップは変わっておらず、燃費が悪くなるだけというデメリットがあります。


ミシュランの公式解説でも、サーキットでは温度管理のために空気圧を調整するものの、公道で空気圧を下げすぎると危険だと警告しています。


適正空気圧を守るのが基本です。



ミシュラン公式:グリップ力と空気圧の関係について詳しい解説があります

バイクのブレーキングとコーナリングでの荷重移動

グリップ力は荷重で決まると説明しました。ではブレーキングやコーナリングではどうなるのでしょうか。


答えは「荷重移動を活用する」です。



ブレーキをかけると前輪に荷重が移動します。この時、前輪のグリップ力が増大するため、旋回能力が向上するのです。フルブレーキで縦方向のグリップをフル活用して素早く減速した後、徐々にブレーキを弱めることで横方向のグリップを確保できます。


コーナリング中は遠心力によって車体が路面に押し付けられ、車両重量を超える荷重がタイヤにかかります。


この荷重増加がグリップ力を高めるのです。


ただし荷重が抜けると一気に滑るリスクがあります。


参考)荷重とグリップの関係 初級者ドラテク講座2|踏みッパ@ラリー…


適切な荷重管理がフロントタイヤのグリップ力を最大限に引き出します。一気にブレーキペダルを戻すとフロント荷重が抜け、前輪のグリップが低下して旋回能力が落ちます。


段階的なブレーキリリースが重要ですね。



参考)上手い人はココが違う!バイクタイヤの減り方から読み解く、安全…


グリップ力の限界と縦横方向の配分

タイヤのグリップ力には限界値があります。この限界を超えるとタイヤはスリップしてしまいます。重要なのは、グリップ力は縦方向(加減速)と横方向(旋回)で配分して使うという点です。


コーナリング中は横方向にグリップを使っているため、前後方向に使えるグリップが減ります。深いバンク角で横方向に多くのグリップを使っていると、加速や減速に使える余力が少なくなるということですね。


グリップ力をベクトルで考えると分かりやすいです。縦方向と横方向の力を合成したベクトルが、グリップ力の限界を示す円の内側にあれば安全です。円周に達すると限界ギリギリの状態になります。


コーナー手前でブレーキを使い切っている場合、横方向に使えるグリップはほぼゼロです。グリップ力に余裕がある速度なら、挙動が急に不安定にならないという利点があります。サーキット走行では限界を攻めますが、公道では余裕を持つことが安全につながります。


参考)【グリップ力とは?】コーナリングやブレーキング時のタイヤの使…


バイクのタイヤが微妙に滑るとグリップが最大になる

意外に思えるかもしれませんが、タイヤは微妙に滑るか滑らないかという状態の時に最大のグリップ力を発揮します。加速時の後輪で考えると、路面に薄っすらとブラックマークが描かれているけれど、ライダーはスリップを認識していないくらいの状態です。


これは高校物理で習う静止摩擦と動摩擦の違いに関係しています。完全に止まっている状態から、わずかに滑り始める瞬間が最も摩擦係数が高くなります。


滑り出すと摩擦係数はちょっと下がります。



ブレーキングでも同じ原理が働きます。タイヤと地面の間に「滑り出さないギリギリまで大きな力」を加えた時に、ブレーキの効力(グリップ力)が最大になります。滑り始めてしまうとブレーキの効力が落ちるだけでなく、車体のコントロールも困難になるのです。


参考)https://yppts.adam.ne.jp/hobby/bike/slip.html


現代のABSはこの原理を利用しています。タイヤの変形率から滑り出しを検知し、滑る前にブレーキを緩めることで最大のグリップを維持します。


レーシングライダーが「タイヤの限界を感じる」と表現するのは、この微妙な滑りを体で感じ取っているからです。ただし一般ライダーがギリギリのグリップ力を使うのは危険なのでやめましょう。路面状況は刻一刻と変わるため、余裕を持ったライディングが賢明です。


身体の力みがグリップ感覚を鈍らせる物理的理由

ライディングテクニックでよく「身体の力を抜け」と言われますが、これは精神論ではなく物理的な理由があります。身体に力が入っているとタイヤのグリップ力も、グリップ感(フィーリング)も悪くなるのです。


バイクはその構造上、自身がスムーズに曲がる機能を持っています。しかしライダーの身体に力が入っていたり、車体に余計な力を加えると、この曲がる機能をスポイルしてしまいます。


全身のあらゆる部分を駆使してタイヤの接地感を探っているのがライダーです。ハングオフで腰をずらしすぎると、下半身のホールド不足や上半身の力みにつながり、お尻などのセンサーが鈍感になります。シートの端にお尻の割れ目があるくらいが、腰をずらす量の目安です。


尻はシートに触れた状態を保ち、お尻でリアタイヤのグリップを感じることが大切です。加速時はスロットルオンによる駆動力でトラクションを高めながら、ライダーもシートに荷重して後輪を地面に押し付ける意識を持ちましょう。


力を抜くことで、バイクが持つ本来の性能を引き出せます。これが「バイクレースは物理学だ」と言われる所以ですね。


参考)https://blog.goo.ne.jp/broccobird/e/008547db164cd3f396171b5f39f1a1f3


クシタニ公式:身体の力を抜くとタイヤのグリップが増えるメカニズムの詳細解説




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