旋回半径とバイクの物理現象|安全な曲がり方の仕組み

旋回半径とバイクの物理現象|安全な曲がり方の仕組み

旋回半径とバイクの物理現象

この記事の3ポイント
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旋回半径の決定要因

バンク角と速度が旋回半径を決め、遠心力とのバランスで安定する

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セルフステアの役割

キャスター角が変化してバイク自身がバランスを保とうとする現象

⚠️
速度と転倒リスクの関係

運動エネルギーは速度の2乗に比例して転倒時のダメージが増大する

最小回転半径が3.8mの大型バイクは、道幅3.5mの道路では直立状態でUターンできません。


旋回半径とバンク角の計算式


バイクが旋回する際、旋回半径はバンク角と速度によって物理的に決定されます。計算式で表すと、V(速度)、M(ライダー+バイクの質量)、R(カーブの半径)、G(重力)、A(バンク角)の関係で成り立ちます。


具体的な数値で見ると、20mの旋回半径のコーナーでは、時速30kmなら70.5度のバンク角が必要ですが、時速50kmでは45.45度のバンク角が必要になります。つまり速度が上がるほど、同じ旋回半径を維持するために必要なバンク角は浅くなるということですね。


逆に言えば、同じバンク角で速度を上げれば、旋回半径は大きくなってしまいます。コーナリング中にアクセルを開けて速度を上げると、バイクが外側に膨らんでいくのはこの物理現象によるものです。


ただし、SSタイプのスーパースポーツでも16~25度まで倒れれば、タイヤは既に地面をつかめなくなる限界に近づきます。バンク角が深いほど転倒リスクが高まるのが基本です。


モトGPのような最高峰レースでは、より大きな遠心力とバランスを取るため、極端に深いバンク角でより速い速度や小さな旋回半径で走行することが可能になっています。しかし公道では、そのレベルのライディングテクニックとタイヤグリップを前提にはできません。


低速旋回と最小回転半径の関係

バイクの最小回転半径は、車体を直立させてハンドルをいっぱいに切った状態で1周回った際の半径を指します。この数値はスペック表に記載されていますが、あくまでも直立した状態で計測されたものです。


Uターンする際の基本的な低速走行では、約20km/h以下になるため、タイヤのスリップアングル(タイヤの向きと実際に進行している方向のズレ角)は無視でき、幾何学的に考えることができます。実際には、バイクを傾けて旋回すると、スペック表の最小回転半径より小さく回ることができます。


道路の1車線幅員は2.75m、3m、3.25m、3.5mの4種類があり、一般的な国道や高速道路は3.5mが多くなっています。ホンダのCL250は最小回転半径が2.6mなので2.75mの狭い道路でもUターンできますが、レブル250は2.8mなので直立状態では一発でUターンできません。


参考)「バイクでUターン!!」 その難易度に直結する「最小回転半径…


CBR1000RR-Rのような大型スーパースポーツでは最小回転半径が3.8mもあるため、最も広い3.5mの道路でも直立状態ではUターンが不可能です。


これが基本です。



押し歩きでUターンする場合を考えると、ライダーは車体の左側に立つため、右回りする時は車体を右側に傾けられず、最小回転半径はスペック表の数値になります。反対に左回りの際は、ライダー側に車体を傾けられるので、右回りより回転半径を小さくできる可能性があります。


旋回時のセルフステアとキャスター角の変化

バイクが傾くと前輪が切れ込み、転倒しないようにバイク自身がバランスを保とうとする現象がセルフステアです。よく「セルフステアにして鋭く曲がる」と言われますが、実はセルフステアにするとバンクは止まります。


バイクの前輪には必ずキャスター角が付いており、これは直進する際の安定性を高めるために必須の機構です。キャスターが寝ている(角度が大きい)方が、トレール量が長くなり安定志向になります。


つまり安定するということですね。



セルフステアでバンクする車体を止め、深いバンク角をキープしている時が、一番小さな半径で旋回できる状態です。この時はブレーキレバーを放していますから、キャスター角はブレーキを引きずりながら車体をバンクさせている最中よりも寝ている状態になります。


キャスター角を立てるとバイクの応答性が高まり、逆に寝ているとトレール量が長くなって安定志向に変わります。コーナリング中はこのキャスター角が動的に変化し続けているわけです。


ライダーが微少なハンドル入力でセルフステアを防ぎながらバンクさせていくことで、狙った旋回半径をコントロールできます。


この操作には慣れが必要ですね。



バイク旋回時の遠心力とバランスの関係

定常円旋回、つまり一定速度かつ一定の旋回半径で走行中は、遠心力との釣り合いでバイクがバランスを保っています。この定常円旋回中はバンク角も一定に保たれます。


コーナーの立ち上がりなどでスロットルを開けて速度を上げると、旋回中のバランスが崩れてバイクを引き起こすモーメントが発生し、バイクが起き上がってきます。さらにバイク自体がバランスを取ろうとすることで、旋回半径が徐々に大きくなっていくのです。


運動エネルギーは速度の2乗に比例するため、高い速度でのコーナリングほど転倒時のダメージが大きくなります。たとえば時速40kmと時速80kmでは、運動エネルギーは4倍になるということです。


速く走るために深いバンクで旋回速度を上げることは、転倒しやすく、かつその場合のダメージが大きいものになるということを意味します。


転倒リスクが増大しますね。



したがって、バイクを深く傾けることやコーナリング速度を上げることを目的にするのではなく、逆にバイクを出来るだけ傾けずに、かつコーナリング速度を上げずに、コーナーを安全かつ快適に走ることが公道では重要になります。


安全マージンを確保するのが原則です。



コーナリング中のブレーキ操作と転倒リスク

一般的には「コーナーリング前にブレーキを済ませておく」「コーナーリング中はブレーキをかけない」と習います。これは当たっていて、コーナーリング中にブレーキをかけると、かけない場合に比べて転倒のリスクは上がります。


参考)コーナーリングの難しさ その1 フロントブレーキをどこでリリ…


フロントタイヤがバイクの旋回を行っているため、フロントブレーキを追加すると簡単にタイヤの限界を超えてしまい、転倒してしまう可能性があります。


タイヤグリップには限界があるわけです。



参考)Reddit - The heart of the inte…


コーナー進入でブレーキに100を使うと方向を変えることができません。走行中に何かが急に飛び出してきてフルブレーキを掛けた場合、ブレーキでタイヤグリップを使い切っているため、方向を変えようとして方向変換に10使った瞬間に転倒している状況になります。


参考)バイクでコーナリングするときのポイント|isamu


サーキットでは200km/hオーバーから100km/hまでバンクしながらブレーキをかけて減速するようなシーンもありますが、公道でそのような操作を探っている最中に間違いなく転倒すると考えられます。車速によってブレーキの効き方も変わりますし、バンク角も徐々に深くなるのでブレーキは徐々に弱めないと転倒してしまいます。


公道でのコーナリングでは、コーナー進入前に十分減速を完了させ、コーナリング中はスロットルワークで速度をコントロールする基本を守ることで、転倒リスクを大幅に減らせます。タイヤグリップの余裕を残しておくことが大切ですね。


ブレーキ操作に関するテクニック向上を目指す場合は、公道ではなく安全が確保されたライディングスクールなどで段階的に練習することをおすすめします。


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