

キャスター角を立てれば旋回性が上がるはダメ
キャスター角とは、地面に対してステアリング軸がどれだけ傾いているかを示す角度です。フロントフォークが垂直線に対してどれだけ斜めになっているかを表す数値で、この角度によってバイクの挙動特性が大きく変わります。
角度が小さい場合を「キャスターが立っている」、大きい場合を「キャスターが寝ている」と表現します。一般的なスポーツバイクでは24度前後、クルーザーモデルでは30度を超える設定も珍しくありません。
この角度設定は、タイヤの接地点と操舵軸の延長線が地面と交わる点との距離、つまりトレール量と密接に関係しています。トレール量は通常90〜120mm程度に設定され、バイクの安定性を左右する重要な要素です。
参考)https://necurasu.com.tr/%5Dzjvcfvlt/tszswf.html
キャスター角は単なる設計上の数値ではありません。自転車の前輪が斜めになっているのと同じ原理で、バイクが倒れずに走行できる物理的な仕組みの根幹を担っています。
「キャスター角が大きいほど直進安定性が高い」という常識は、実は二輪車では正確ではありません。四輪車と異なり、バンク(傾斜)を前提とする二輪車の場合、キャスター角だけに直進安定性を依存できないのです。
参考)https://gra-npo.org/lecture/bike/caster_myth/caster_myth.html
二輪車の直進安定性は、実はホイールベース(前後ホイール中心間距離)に大きく影響されます。ホイールベースが長いほど直進安定性が高くなるという物理法則が働いています。トレール量も安定性に関わりますが、フロントタイヤは後輪が設定した進行方向に「追従」する役割を果たしているに過ぎません。
実際、リアタイヤの摩擦力と駆動力により進行方向が設定され、フロントタイヤはトレール効果によってその直進性を補助する構造になっています。つまり、直進性を生み出すのは後輪であり、キャスター角はあくまで補助的な要素なのです。
この誤解が広まったのは、1980年代にメーカーの広報資料をそのまま雑誌が伝えたことが原因とされています。工学的に正しい説明がされず、見た目やイメージ優先の情報が「キャスター神話」として定着してしまいました。
参考)“キャスター神話” は、 捨てなさい !! - 妖怪大魔王…
走行中のキャスター角は固定されているわけではありません。ブレーキングによるフロントフォークの沈み込みで、キャスター角は最大5度も変化することがあります。
参考)【バイクを縦方向に操るライテク】曲がれる車体のメカニズム -…
ブレーキをかけるとフロントが沈み、キャスター角が立つ(小さくなる)ため、トレール量が10〜20mmも短くなります。この状態ではバイクの応答性が高まり、ライダーの操作に対してクイックに反応する車体姿勢になります。
逆に加速時はフロントが浮き上がり、キャスター角が寝る(大きくなる)ため、安定志向の特性に変わります。コーナリング中でブレーキを放した状態では、ブレーキをかけていた時よりもキャスター角が寝ています。
参考)キャスター角の不思議な力〜X-ADVからレブルへ乗り換えて分…
この動的変化を理解すると、コーナリングテクニックの幅が広がります。ブレーキをクリッピングポイント付近まで引きずってフロントフォークを沈めた状態をキープすることで、キャスター角が立ち、バイクにとって「よく曲がる」姿勢を作ることが可能になります。
走行状況に応じてキャスター角が5度も変化するということは、スペック表の数値はあくまで静止時の参考値に過ぎないということですね。
キャスター角とトレール量は切っても切れない関係にあります。キャスター角が寝ている(角度が大きい)ほど、トレール量は長くなり、安定志向の特性になります。
トレール量とは、ステアリング軸の延長線が地面と交わる点と、タイヤの接地点との水平距離のことです。この距離が長いと、タイヤが進行方向に「追従」しようとする力が強くなり、直進性が保たれやすくなります。
具体的な数値で見ると、スポーツバイクはキャスター角24度・トレール102mm程度、クルーザーモデルはキャスター角30度以上・トレール量も長めに設定されています。この組み合わせによって、各車種の「味付け」が決まります。
しかし、ローダウンやホイール径の変更を行うと、バイクの姿勢が前下がりになり、結果的にトレールが減少します。17インチホイールに交換した場合、本来なら30〜50mm以上フロントフォークを延長しないと必要なトレール量が確保できません。
カスタム時はキャスター角だけでなく、トレール量の変化も必ず確認する必要があります。
セルフステアとは、バイクが傾くと前輪が自動的に切れ込んで、転倒しないようにバランスを保とうとする現象です。キャスター角があることで、車体が傾いた方向に自然とハンドルが曲がり、バイク自身がバランスを取って走行できます。
実は「セルフステアにして鋭く曲がる」という表現は誤解を招きます。実際にはセルフステアが作動するとバンク(傾斜)は止まります。ライダーは微少なハンドル入力でセルフステアを防ぎながらバイクをバンクさせているのです。
バイクを傾ける際は、イン側に切れ込もうとする前輪をほぼ真っ直ぐに保ち、重心バランスと前輪接地点のバランスが取れて安定するのを防がないと、バンクが進みません。
この状態を「非セルフステア」と呼びます。
深いバンク角をキープしている時が、最も小さな半径で旋回できる状態です。この時はセルフステアでバンクする車体を止めている状態であり、キャスター角はブレーキを引きずっていた時よりも寝ています。
つまり、コーナリングはセルフステアを「使う」のではなく、適切に「コントロールする」技術なのです。
スポーツバイクとクルーザーでは、キャスター角の設定思想が大きく異なります。スポーツモデルはキャスター角が立っている(角度が小さい)ため、ライダーの操作に対する応答性が高く、クイックなハンドリング特性を持ちます。
一方、ツーリングユースが多いクルーザーモデルは、キャスター角が寝ている(角度が大きい)設定になっています。トレール量も多く取られており、直進安定性を重視した設計です。長距離走行でも疲れにくい特性が求められるためです。
参考)https://ameblo.jp/take032007/entry-12699940414.html
しかし、キャスター角が立っているスポーツバイクでも、深いバンク角でのコーナリング中はキャスター角が寝た状態になり、安定志向に変わります。逆にクルーザーでもブレーキング時はキャスター角が立ち、応答性が高まります。
これが物理現象の面白いところです。
キャスター角の設定は、バイクの「テイスト」を調節する重要な要素です。メーカーは車種のコンセプトに応じて、キャスター角とトレール量のバランスを緻密に計算して設計しています。
スペック表の数値を見比べると、各メーカーの設計思想が見えてきますね。
ローダウンやホイール径の変更は、キャスター角とトレール量に大きな影響を与えます。フォーク長を短くしたり、ホイール径を変更すると、バイクの姿勢が前下がりになり、結果としてトレールが減少します。
17インチホイールへの交換が流行していますが、本来なら30〜50mm以上フロントフォークを延長しないと、必要なトレール量が確保できません。しかし「キャスター神話」の影響で、フロント下がりでキャスター角が立った"改悪車"が多く誕生する結果になっています。
低車高仕様にした場合、静止時は問題なくても、荷物満載やタンデム乗車時にリアが沈むと、さらにフロント下がりの姿勢になります。この状態では低速時の方向安定性が著しく低下し、安全性に問題が生じる可能性があります。
キャスター角を変更する改造を行う際は、専門知識を持ったショップに相談することが重要です。見た目やイメージだけで判断せず、トレール量の実測値を確認し、必要に応じてフォーク長やオフセットの調整を行うべきです。
バイクの基本性能に関わる部分なので、安易な改造は避けるのが原則です。
自転車でもキャスター角0度の実験では、手を離すと即座に倒れてしまいます。キャスター角があることで、傾いた方向に自然とハンドルが曲がり、バランスを保って走行できる仕組みが機能しているのです。バイクも同じ原理で、キャスター角は走行安定性の基礎となる重要な設計要素です。
段差などで衝撃を受けた際も、キャスター角があることで衝撃を吸収しやすくなります。これは、ステアリング軸が斜めになっていることで、垂直方向の衝撃が分散されるためです。キャスター角は単なる操縦性だけでなく、乗り心地や安全性にも関わっています。
バイクの物理現象を正しく理解することで、より安全で楽しいライディングが可能になります。
GRAのキャスター神話解説ページでは、工学的な観点からキャスター角の誤解について詳しく説明されています。バイクの整備や改造を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
ライダースクラブの縦方向操作テクニック解説では、ブレーキングによるキャスター角変化を活用したコーナリング技術が紹介されています。実践的なライディングスキル向上に役立つ情報です。

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