

低速走行時はセルフステアが働かず転倒リスクが高まります。
バイクのステアリング軸とは、ハンドルやフロントタイヤが左右に首を振る際の回転中心線のことです。この軸が路面と交わる点から、フロントタイヤの接地面中心までの距離が「トレール」と呼ばれます。
トレールがあると、フロントタイヤはステアリングヘッドに押されるのではなく、引っ張られる形で進みます。はがきの横幅程度である約100mmのトレール量が、多くのバイクで採用されている理由がこれです。
この構造により、バイクは走行中に自然と直進状態を保てます。
ショッピングカートの前輪と同じ原理ですね。
駐車場での取り回しや極低速のUターンでは、この仕組みが十分に働きません。速度が遅すぎると、トレールによる安定化効果が得られないからです。
参考)https://gra-npo.org/lecture/ride/Qamp;A/Full_Lock/Full_Lock.html
そのような場面では、ハンドルを手動で積極的に切る必要があります。セルフステアに頼りすぎると、思い通りに曲がれず立ちごけのリスクが高まります。
キャスター角は、路面に対してステアリング軸がどれだけ傾いているかを示す角度です。現在の表記では、垂直線からの角度で示されることが主流となっています。
例えば27度のキャスター角なら、ステアリング軸は垂直から27度傾いています。ホンダCB750FOURの場合、昔の表記では63度でしたが、現代的には27度と表現されます。
キャスター角が大きいほど、直進安定性が向上します。高速道路で手放し運転ができる(推奨はしませんが)のも、この角度のおかげです。
一方で、この角度だけではハンドリング特性は決まりません。実はトレール量の方が、走行状態での操舵感に直接影響します。
業界では「コーナー進入時にはフロントに荷重をかけてキャスターを立てて旋回性を」という解説が常識化していますが、これは工学的に正しくない神話です。走行中に変化するのはキャスター角ではなく、トレール量だからです。
セルフステアとは、バイクが傾くと自動的に前輪の舵が切れていく物理現象です。車体が傾いて後輪が旋回を始めると、ステアリング中心軸と路面の交点に向かって前輪の接地点が引っ張られます。
参考)ハンドルは切らない!? なぜバイクは傾けると曲がるのか その…
この現象が起こるのは、トレールとキャスター角の組み合わせによるものです。走行中、前輪はステアリングヘッドの動きに追従する形で自然に曲がっていきます。
バイクを右に傾ければ、ハンドルは自動的に右へ切れます。
つまり「傾ければ曲がる」です。
ただし、セルフステアが機能するには一定以上の速度が必要です。時速10km以下の極低速では、この効果はほとんど期待できません。
駐車場でのUターンやフルロックターンを行う際は、バイクをバンクさせ、速度を落とし、セルフステアの邪魔をしないことが条件となります。無理にハンドルを切ろうとすると、タイヤが滑ったり車体が立ち上がってしまいます。
ジャイロ効果とは、回転する物体が姿勢を安定させようとする物理現象のことです。バイクのホイールが回転すると、この効果が働いて倒れにくくなります。
回転軸の方向と直角に力が働き、回転物が重く回転速度が大きいほど強くなります。
独楽が回転中に倒れないのと同じ原理ですね。
旋回時には、バイクを傾けた方向と逆の力が発生します。つまり、安定して旋回するにはジャイロ効果に打ち勝つ力でバイクを傾ける必要があるのです。
ホイールが軽いとジャイロ効果が減少し、切り返しが軽快になります。サスペンションへの負担も減るため、タイヤの路面追従性が向上し、燃費や加速性能、ブレーキ性能まで向上する効果があります。
高速走行時には、ジャイロ効果によってバイクを傾けるのが難しくなります。このため、多くのライダーは無意識のうちにカウンターステアリングという技術を使っています。
カウンターステアリングは、右に曲がりたい時に一瞬ハンドルを左に切る技術です。この逆操作によってバイクが右に傾き、セルフステアが働いて自然と右に曲がっていきます。
具体的には、右カーブの入口で右ハンドルを軽く前へ押します。すると前輪はカーブとは逆方向に向き、バイクは右側へ傾こうとします。
車体が傾いたところで押すのを止めると、前輪は自然と曲がる方向へ切れていきます。
これがセルフステアです。
多くのライダーは、自分がカウンターステアリングをしていることに気づいていません。高速走行時には特に顕著で、ジャイロ効果に対抗するために自然と使っています。
倒し込みの強弱を調整することで、バンク角をコントロールできます。ワインディングロードの連続するカーブで、リズムよく進路を変えたい場面で非常に役立つ技術です。
トレール量は走行状態やライダーの操作によって常に変化します。フロントフォークが沈むとトレール量が減少し、伸びると増加するのです。
ロングフォークやホイール交換などのカスタムをすると、トレール量が減少しやすくなります。適正値より少なくなると、高速走行時にハンドルや車体がふらつく原因になります。
トレール量が極端に少なくなると、バンク時にハンドルが切れた際、接地点が前方に移動しすぎてグリップが破綻します。
これは非常に危険な状態です。
対策としては、トリプルツリーのオフセットを変更してトレール量を最適化する方法があります。カスタムを行う際は、バイク全体のディメンションを把握する必要があります。
適正なトレール量であれば、ふらつきを減らせます。直進安定性とクイックなハンドリングのバランスを取ることが重要ですね。
キャスター角とトレール量の正しい理解についての詳細解説(GRA公式サイト)
ステアリング軸周りの慣性モーメントは、前輪系がどれだけ回転しにくいかを示す値です。この値が大きいほど、ハンドル操作に必要な力が増えます。
前輪系の運動方程式では、ライダーによる操舵モーメント、路面からの反力、バンク角などが複雑に関係します。専門的な計算式が必要になりますが、実走行では体感的に理解できます。
重いホイールを装着すると、ジャイロ効果が増して走行時の安定感が向上します。一方で軽量ホイールなら、切り返しの軽快感が得られます。
ハブセンターステアリングという特殊な機構では、操舵機能と衝撃吸収機能を完全に分離しています。リンクとロッドでハンドルと前輪を接続し、テレスコピックフォークのような摺動抵抗やたわみがありません。
参考)“操舵” と“衝撃吸収” で常識を覆すハブセンターステアリン…
ブレーキング時のノーズダイブがほとんど発生せず、車体姿勢やハンドリングの安定度が格段に高いのが特徴です。とはいえ、セルフステアの仕組み自体は通常のバイクと同じなので、ハンドルに力を入れるのは避けるべきです。
極低速では、セルフステアがほとんど機能しなくなります。特にバンク角が小さい場合、ハンドル操作を加えた際のグリップ力不足で転倒リスクが高まります。
時速5km以下のフルロックターンでは、まずバイクをバンクさせ、速度を落とし、タイヤをグリップさせることが条件となります。
セルフステアの邪魔をしないことも重要です。
フルロックが入らないからといって、強引にハンドルを切ると失敗します。タイヤが滑ったり、アウト側に倒れる力が強くなり、バイクが立ち上がってしまうからです。
正しい手順は以下の通りです。進入時にリアブレーキを軽く踏んでバンクを始め、バンクを深くし、フルバンク状態でブレーキングします。するとセルフステアでハンドルが切れ、フルロックになります。
ふらつきそうになったら、クラッチまたはリアブレーキを一時的に解除して駆動力を高め、速度を上げて車体を安定させます。車体が安定したら元の状態に戻し、速度を下げればOKです。
参考)https://ameblo.jp/touringriders/entry-12137467005.html
フルロックターンの詳しい練習方法(RIDE LIKE A PRO公式サイト)
ステアリング軸の物理を理解すると、速度域に応じた適切な操作ができるようになります。高速走行ではセルフステアとカウンターステアリングを活用し、低速では手動操作を組み合わせるのが基本です。
タイヤの断面は楕円形状になっており、バンク時にはセンター部とサイド部が同時に接地します。直径の小さいサイド部に向かって曲がっていく物理現象も、セルフステアに貢献しています。
コーナリング時には、タイヤが進行方向に対して若干斜めになる「スリップアングル」が発生します。これによってタイヤがイン側に横押しされる力、つまりコーナーリングフォースが生まれます。
車体姿勢の変化を最小限に抑えることで、タイヤの接地感を保ちやすくなります。ブレーキングやアクセル操作は、サスペンションの動きを考慮しながら滑らかに行いましょう。
トライアル競技では、セルフステアをほとんど使わず速度ゼロの状態で操作します。これは例外的なケースで、通常のライディングとは異なるバランス技術が求められます。
参考)バイクの乗り方 Vol.5:「セルフステア・曲がるの正体②」…
ステアリング軸の理論を意識しすぎると、かえって自然な操作ができなくなります。基本原理を頭に入れたら、実走行で体に覚え込ませることが大切ですね。

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