

スリップアングル10度超えると旋回力が下がります
スリップアングルとは、バイクのタイヤが向いている方向と、実際に進んでいる方向との間に生じるズレの角度のことです。このズレは一見すると「滑っている」と勘違いされがちですが、実はバイクが曲がるために必要不可欠な物理現象です。
タイヤは弾性体であるため、コーナリング時に横方向の力が加わるとサイドウォールが変形します。この変形によって、ホイールの向き(タイヤの真の向き)と車両の進行方向にズレが発生します。つまり、タイヤの接地面部分は路面にグリップして進行方向に沿って進むため、タイヤ全体にねじれが起きるのです。
このねじれの反発力こそが、バイクをイン側に横押しする力、つまりコーナリングフォースの正体です。スリップアングルが生まれることで、タイヤは現在の進行方向からタイヤの向いている方向へ針路を変えようとする力を発揮します。
これが基本原理ですね。
バイクは直進時にハンドルを切ると、フロントタイヤからスリップアングルがつき、コーナリングフォースが生まれます。このメカニズムはライダーが意識しなくても常に働いており、すべてのコーナリングの基礎となっています。
参考)https://blog.goo.ne.jp/takkikazuhito/e/f356afc649daafb94bef4dc7eb99042b
コーナリングフォースは、スリップアングルの大きさに応じて変化する特性を持っています。最初の数度に対してはほぼ線形に増大しますが、その後は非線形に増大し、約10度で最大値に達します。
つまり10度が天井というわけです。
10度を超えるとコーナリングフォースは徐々に減少し始め、旋回力が低下します。
この減少には3つの原因があります。
第一にタイヤグリップの限界、第二に接地面の滑り、第三にサイドウォールの過度な変形です。スリップアングルが過度に増大すると、タイヤのグリップ力が限界に達し、横方向の力を支えきれなくなります。
バイクのタイヤは前後で異なる働きをします。フロントタイヤは操舵角が一定でもバンク角が深まるにつれ、旋回力が高まる特性があります。これはバンクによるコーナリングフォースに見合ったスリップアングルが稼げるためです。
一方リアタイヤは、ステアリング軸を持つ前輪ほど大きな影響を受けません。厳密にはタイヤの接地点移動とスリップアングルから微少な変化はありますが、前輪と比較すると変化は小さいのです。
ここが前後の違いですね。
バイクが曲がるメカニズムには、スリップアングルによるコーナリングフォースだけでなく、キャンバースラストという力も関係しています。キャンバースラストは、タイヤの断面が半円形であることから生まれる力で、バンク角(車両の傾き)によって決まります。
低速でバンク角が浅いときは、前後タイヤともにキャンバースラストが小さいため、スリップアングルを稼がなければなりません。ゆっくり走りながらバイクを倒していくと、この関係性を体感できます。
逆に高速度かつ深いバンクになるほど、キャンバースラストだけでは遠心力に対抗できず、スリップアングルによるコーナリングフォースが必要になります。つまりハンドルを切ることで、スリップ角によるコーナリングフォースを発生させて不足分を補うわけです。
バイクのバンク角の限界は、レース用の車両やタイヤであれば55度程度、一般的な公道用スポーツタイヤも同程度とされています。中には62度までバンクできる高性能タイヤも存在しますが、これはレース専用レベルです。
限界に近づくほど転倒リスクが高まります。
前輪のスリップアングルが急激に増加すると、極めて危険な状況に陥ります。元ヤマハエンジニアの分析によれば、スリップアングルが急激に増加することで前輪の横力が大きくなるだけでなく、その向きも急激に変化し、旋回半径が小さくなろうとします。
この状態では前輪のグリップが簡単に限界を超える域に到達し、二輪の臨界(物理的な限界)バンク角度に近づいている可能性があります。一度この状態に入ると、コントロールを失い転倒につながります。
特に危険なのは、前輪の荷重が減少した状態でステアリングを回すケースです。例えば対向車が来る前にUターンしようとしてステアリングを切りながら加速すると、荷重が後方に移動し前輪の荷重が減少します。車輪にかかる荷重こそグリップの源なのに、それが抜けた状態でステアリングを回したことになり、前輪のグリップが減ってしまうのです。
参考)第328回 スリップアングル – YRS BLO…
この時、4本のタイヤの接地面を見ることができれば、前輪のスリップアングルがとてつもなく大きく、後輪のそれは無に等しい状態になっています。
前輪だけが限界を超えている状況ですね。
こうした危険を避けるには、コーナリング中にリアブレーキを使った速度調整が有効です。ライダーが焦らず落ち着いてハンドルに極端な変化を与えるような力を加えなければ、バイクのバンク角は変化することなく、車速だけが減速していきます。
スリップアングルを理解することで、より安全で効率的なライディングが可能になります。まず基本として押さえるべきは、急激なステア操作を避けることです。急ステアでアンダーステアが出る理由は、スリップアングルが急激に大きくなりすぎて、タイヤのグリップ限界を超えてしまうためです。
参考)スリップアングルとグリップの関係 初級ドラテク講座4|踏みッ…
スムーズなステア操作を心がけると、スリップアングルは適切な範囲内に収まり、安定したコーナリングフォースが得られます。
目安となる数値を覚えておくと役立ちます。
アスファルト路面では約10度で最大摩擦力が発生するとされています。
参考)【WEBライディングを科学するVol.12】2次旋回において…
タイヤ選びもスリップアングルの観点から重要です。スリックタイヤはグリップが高く、トレッド剛性も高いのでコーナリングフォースが高く、結果として旋回力が高くなります。公道用であれば、グリップ性能とトレッド剛性のバランスが取れたスポーツタイヤを選ぶと、スリップアングルを効果的に活用できます。
ブレーキリリースのタイミングも、スリップアングルと密接に関係しています。コーナー進入時にブレーキを残しすぎると前輪の荷重は増えますが、ステアリングの自由度が制限されます。適切なタイミングでブレーキをリリースすることで、スリップアングルが自然に発生し、スムーズな旋回が可能になります。
セルフアライニングトルクという現象も知っておくと有益です。接地面の長さに沿った横すべりの非対称性により、横すべりの力は接地面の幾何中心からずれており、タイヤ上にトルクを作り出します。この力はハンドルを通じてライダーに伝わる接地感の正体の一つです。
スリップアングルを体感するには、低速で安全な場所で練習するのが効果的です。ゆっくり走りながらバイクを倒していくと、バンク角とスリップアングルの関係性が実感できます。公道では決して限界走行をせず、サーキットやライディングスクールで正しい技術を学ぶことをおすすめします。
元ヤマハエンジニアによる二輪運動力学の詳細解説(ライダーズクラブ)
タイヤの力学とコーナリングフォースの科学的解説(セイクレッドグランド)

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