

バイクの「トレッド」は、タイヤが路面と接している面(接地面)で、溝とブロック(またはリブ)で構成されています。ここに刻まれた溝は“飾り”ではなく、特に公道ではウエット路面で水を逃がしてグリップを残すための機能部品です。溝が摩耗で浅くなるほど、排水が間に合わない状況が増え、滑りのリスクが上がります。
その摩耗限界を視覚的に示すのが「スリップサイン」です。スリップサインは、溝の底にある“盛り上がった部分”で、摩耗が進んでトレッド面と同じ高さになった時点が使用限界とされています。二輪車用タイヤには、トレッド全周の4か所または6か所(製品により異なる)に設けられ、位置はサイド部の▲マークで示されています。
見つけ方はシンプルです。
ここで意外に重要なのが「全周チェック」です。走り方や空気圧、サスペンションの状態で摩耗は均一になりません。ある一部だけ先に摩耗し、そこだけスリップサインが出るケースも現実にあります。だからこそ、△マークを起点に“全部見る”のが基本になります。
参考:スリップサインの位置(△マーク/TWIの延長線)や、全周チェックの具体手順
https://2rinkan.jp/ridersacademy/archives/793/
結論から言うと、二輪車用タイヤの溝の深さは「0.8mm以上」が基準です。つまり、残り溝が0.8mmを下回る状態で公道を走ると、基準を満たさない状態になり得ます。スリップサインは、その“法的な限界付近”を誰でも判別できるようにした仕組みです。
ただし、実務として「0.8mmまで粘ればOK」という発想は危険です。溝は排水のために存在するので、法定限界ギリギリは、雨の日に最も弱い状態に近づきます。特にバイクは、四輪より接地面積が小さく、荷重変動も大きいので、ウエットでの余裕が削られやすいです。
安全寄りに考えるなら、次のように“2段階”で捉えると判断がブレません。
そしてもう一つ、溝の「深さ」だけでなく「状態」も見ます。溝の角が丸まっていたり、ブロックが波打っていたりすると、残り溝があっても挙動が不安定になりやすいです。これは“パターンがあるのに効かない”状態で、初心者ほど見落としがちです。
スリップサインが「一部だけ先に出る」最大要因のひとつが偏摩耗です。偏摩耗は、トレッドの中央・端・片側など、特定部位だけが強く減る現象で、ライダーの入力だけでなく、空気圧や荷重、車体側の状態で発生します。
点検の基本は「目視+触感+全周」です。
偏摩耗対策で現実的に効くのが「空気圧管理」です。空気圧が低いとタイヤがたわみ、発熱や摩耗が増え、結果として寿命も性能も落ちやすいです。逆に高すぎても接地の使い方が変わり、乗り心地やグリップ感に影響が出ます。見た目で判断しづらいので、エアゲージで測るのが前提になります。
また、スリップサイン確認の“ついで”に見つかる危険サインもあります。釘や小石の刺さり、側面の傷、トレッドの一部がえぐれている状態などです。刺さり物は抜かずに、空気漏れの有無も含めてショップ相談が安全です。
雨の日に怖いのは「急に軽くなる」「ブレーキが効きにくい」といった、予兆の少ない挙動変化です。溝が浅くなると排水性が落ち、タイヤと路面の間に水膜が残りやすくなります。その結果、滑りやすさが増し、制動距離が伸びたり、コーナーでの安心感が急に消えたりします。
特に注意したいのは、雨が降り始めの路面と、轍(わだち)に水が溜まる路面です。そこでは「水の逃げ場」がタイヤ側にも路面側にも少なくなりやすく、トレッドが水をさばけないと一気に限界が近づきます。二輪は姿勢変化が大きいので、フロント荷重が抜けた瞬間に“すべる方向”が分かりづらく、立て直しも難しくなります。
雨天での現実的な対策は、技術より先に“状態づくり”です。
なお、溝がなくなってさらに摩耗が進むと、トレッド下の構造が露出し、最悪の場合バーストなど重大トラブルにつながる可能性があるとされています。摩耗は「滑る」だけでなく「壊れる」方向にも進むので、スリップサインは“最後通告”だと捉えるのが安全です。
参考:二輪タイヤのスリップサイン(0.8mmの盛り上がり、▲マーク表示、摩耗継続の危険)
https://dunlop-motorcycletyres.com/dictionary/safe_use/
検索上位の記事は「スリップサインを見よう」で止まりがちですが、実は一歩進めるだけでタイヤ管理は“予防整備”になります。おすすめは、デプスゲージで溝深さを測って記録することです。これは車体いじりが得意でない人ほど効果が大きく、「なんとなく不安」を数値に変えられます。
やり方は難しくありません。
この記録が効いてくるのは、次の2点です。
さらに、意外と見逃されるのが「スリップサインの“出方”」です。スリップサインは複数ありますが、出現がバラつくなら、単純な寿命ではなく“使い方の歪み”が入っています。そこで、空気圧の点検頻度を上げたり、荷物の積み方を見直したり、サスのプリロード設定を適正に寄せるだけで、同じ銘柄のタイヤでも納得感が変わります。
最後に、点検を習慣化するコツは「作業を短くする」ことです。
こうして“短い点検を積む”と、トレッドの変化に気づけるようになり、交換の判断が速くなります。結果として、雨天の不安や、ツーリング先でのトラブルも減らせます。

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