
再生可能エネルギーは、枯渇しない自然のエネルギー源を利用して発電する方法であり、2020年の日本の全発電電力量の20.8%を占めています。主な種類は太陽光発電が8.9%、水力発電が7.8%、バイオマス発電が3.4%、風力発電が0.9%、地熱発電が0.3%となっています。これらの再生可能エネルギーは、石油や石炭などの化石燃料と異なり、太陽・風・水・地熱などの自然界に存在する資源を活用するため、資源が枯渇しない特徴があります。
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日本政府は2050年カーボンニュートラル達成に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大を推進しており、2050年には太陽光発電の導入量を400GW(4億kW)まで拡大する見通しを立てています。FIT制度(固定価格買取制度)やFIP制度(フィードインプレミアム制度)などの政策により、電力会社が一定の価格で再生可能エネルギー由来の電力を買い取る仕組みが整備され、導入促進が図られています。
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各エネルギー源の特性を理解することで、地域や用途に応じた最適な再生可能エネルギーの選択が可能になります。
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太陽光発電は、太陽電池モジュール(ソーラーパネル)を使って太陽の光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電方式です。日本では2022年度の年間電力需要量のうち9.6%を太陽光発電が占めており、再生可能エネルギーの中で最も導入が進んでいます。
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発電容量1kWあたりに必要な設置面積は約10~15平方メートルとされ、例えば10kWの発電設備を設置する場合、130~180平方メートルの有効面積が必要です。住宅用のソーラーパネルは一般的に3~5kWの容量が多く、年間で約3,000~6,000kWhの発電が見込まれます。
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太陽光発電の変換効率は技術革新により向上を続けており、次世代型のペロブスカイト太陽電池では最高記録で26.7%の変換効率を達成しています。設置場所としては南向きで設置角度30度が最も発電効率が高く、屋根や空き地などの未利用スペースを有効活用できる点が大きなメリットです。
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風力発電は、風の力で風車を回転させ、その動力を発電機に伝達して電気を生み出す発電方式です。日本では2022年度の年間電力需要量の1.0%を占めており、導入コストの高さから太陽光発電に比べて普及が遅れていますが、洋上風力発電の大きなポテンシャルが注目されています。
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政府は「洋上風力産業ビジョン」の中で、2030年までに10GW、2040年までに30~45GWの洋上風力発電導入目標を掲げています。現在の日本の洋上風力発電は年間58.6MWですが、2030年の目標は約170倍に相当する規模となり、秋田・青森・長崎・千葉などの地域で設備開発が進んでいます。
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日本は海に囲まれた地理的条件から排他的経済水域が広く、広範囲にわたる海岸線を持つため、洋上風力発電の技術的可能性は合計で9,000TWh/年以上とされています。風力発電は昼夜を問わず発電できる特性があり、変換効率も比較的高いため、安定した電力供給源として期待されています。
参考)日本の風力発電の利点と将来性
水力発電は、水が高いところから低いところへ流れる落差を利用して水車を回し、発電する方式です。日本では2020年に7.8%の電力供給を担い、太陽光発電に次ぐ主要な再生可能エネルギー源となっています。水力発電の最大の特徴は、水量を調整することで電力需要の変動にすばやく対応できる点であり、変換効率も高い優れた発電方式です。
大規模なダム式水力発電はほぼ開発済みのため、今後は小水力発電(出力10,000kW以下)の導入拡大が期待されています。小水力発電は地域密着型のエネルギー源として注目されており、北海道で15件・1,200kW、東北で25件・2,500kW、関東で30件・3,000kWなど、全国各地で導入が進んでいます。
参考)小水力発電の国内普及状況とは?導入実績と地域分布データ
小水力発電はダムなどの大型施設を必要とせず、農業用水路や河川の小さな落差を活用できるため、まだ開発できる地点が多く残っており、地域の活性化や分散型エネルギーの供給源としての役割が期待されています。
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地熱発電は、地下深部の熱水や蒸気を取り出してタービンを回す発電方式で、日本は世界第3位の地熱資源を持つ国です。2020年時点で全発電電力量の0.3%を占めていますが、潜在的なポテンシャルは非常に高い状況です。地熱発電の導入が進まない理由として、地熱資源の多くが国立公園内や温泉地に位置し、土地利用規制が厳しいこと、温泉事業者との調整が必要なこと、調査・掘削に多額の費用と時間がかかることが挙げられます。
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バイオマス発電は、動植物から生まれた生物資源(木質チップ、家畜排泄物、食品廃棄物など)を燃焼または発酵させて発電する方式で、2020年には3.4%の電力供給を担っています。FIT制度施行後、5,000kW級以上の大規模木質バイオマス発電所が全国で56ヶ所稼働していますが、燃料の集荷範囲が数十km圏と広くなる課題があります。
参考)小規模木質バイオマス発電
小規模木質バイオマス発電(1,000kW未満)は、燃料調達の集荷範囲を狭め、発生する排熱を周辺で利用できるため、地域主導での地産地消エネルギーとして期待されています。
日本の再生可能エネルギーの導入コストは、欧州諸国と比較して非常に高い水準にあります。2020年度時点での電力買取価格は、太陽光発電(事業用)が12円/kWh、陸上風力発電が18円/kWh、バイオマス発電が24.0円/kWhですが、欧州では太陽光発電・風力発電ともに日本の半分を切る価格となっています。
参考)再生可能エネルギーのコストを削減するには? 技術・アイディア…
特に太陽光発電システムの1kWあたりの工事費・システム費用は、欧州が15.5万円であるのに対し、日本では28.9万円と約2倍の差があります。この高コストの主な理由は、建設コストの高さ、土地整備費用、送電網への接続工事費などが挙げられます。
参考)日本の再生可能エネルギーのコストが高額な理由と対処法を解説!…
日本は国土が狭く、発電所の建設に適した平地が少ないため、土地の整備や自営線の整備に大きなコストがかかります。また、年間平均で約25個の台風が発生し、そのうち約3個が日本に上陸するため、自然災害対策や発電施設の維持・修理にも多くのコストが必要です。こうした地理的・気候的条件が、日本の再生可能エネルギー導入コストを押し上げる大きな要因となっています。
参考)日本の再生可能エネルギーのコストは高い?現状と取り組みも解説…
電動バイクは走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、エンジンバイクに比べて大気中のCO2排出量を大幅に削減できます。電動バイクへの電力補給を再生可能エネルギーにすることで、全体的なCO2排出量をさらに削減でき、温暖化の抑制に貢献できます。
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日本では再生可能エネルギーの電力だけで走行する電動バイクが登場しており、モーター出力500W、48V・13Ahの蓄電池を搭載し、5~6時間の充電で35~40km走行できる製品が販売されています。充電はACアダプタでコンセントから行う仕組みで、家庭で太陽光発電システムを導入している場合、自家発電した電力を電動バイクの充電に活用できます。
参考)再エネ電力で走る電動バイク
Hondaが開発したMobile Power Pack(MPP)などのバッテリー交換式システムも実用化されており、複数の電動バイクメーカーが共通規格のバッテリーを採用することで、バッテリーステーションでの交換が可能になりつつあります。今後、充電ステーションへの再生可能エネルギー導入が進めば、バイクライダーが環境負荷を最小限に抑えながら走行できる時代が到来します。
参考)環境にやさしい車・バイク(ZEV)事業
再生可能エネルギーの最大のメリットは、資源が枯渇せず、発電時にCO2をほとんど排出しない点です。化石燃料は可採年数に限りがありますが、太陽光・風力・水力などの再生可能エネルギーは自然界に無尽蔵に存在するため、持続的な利用が可能です。また、エネルギー自給率の向上にも寄与し、エネルギー安全保障の観点からも重要な役割を果たします。
参考)注目の再生可能エネルギー
一方で、デメリットとして気象条件による発電量の変動があります。太陽光発電は夜間や曇天時に発電できず、風力発電も風が弱い時には十分な電力を得られません。この出力変動を吸収するため、火力発電所などの調整力のある発電方式や、蓄電池などのエネルギー貯蔵設備が必要となります。
参考)燃料多様化と負荷追従性に優れた微粉炭燃焼技術の開発
導入コストの高さも課題であり、初期投資の回収に時間がかかる点が普及の障壁となっています。しかし、技術革新により太陽光パネルや風力タービンの製造コストは年々低下しており、長期的には経済性が向上する見通しです。また、FIT制度やFIP制度などの支援策により、事業者の参入ハードルが下がり、導入拡大が進んでいます。
参考)https://www.mdpi.com/2071-1050/15/2/1418/pdf?version=1673927252
日本の再生可能エネルギーは、2012年のFIT制度(固定価格買取制度)導入以降、急速に普及が進みました。FIT制度では、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることが義務付けられており、事業者にとって収益の予測が立てやすくなりました。太陽光発電を中心に導入量が大幅に拡大し、平地面積当たりの導入量は主要国で最大級の水準に達しています。
参考)FIT法とは?制度の仕組みや申請方法・改正法のポイントを紹介…
2022年からは、市場価格に一定のプレミアムを上乗せして買い取るFIP制度(フィードインプレミアム制度)が導入され、再生可能エネルギー事業者が電力市場と連動した事業運営を行う仕組みに移行しつつあります。この制度変更により、再生可能エネルギーが市場で競争力を持つ主力電源として成長することが期待されています。
参考)https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energykihonkeikaku2021_kaisetu01.html
政府は2050年カーボンニュートラル達成に向けて、再生可能エネルギーを最大限導入する方針を掲げており、太陽光発電400GW、洋上風力発電30~45GWなどの具体的な目標を設定しています。技術開発の進展、コスト低減、地域との共生、系統安定化対策などの課題に取り組みながら、再生可能エネルギーが日本の主力電源として確立される未来が見えてきています。
参考)https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_SolarIP_202412.pdf