ウェットカーボンとFRPの違い:バイクパーツ選び強度から価格まで徹底比較

ウェットカーボンとFRPの違い:バイクパーツ選び強度から価格まで徹底比較

ウェットカーボンとFRPの違い

ウェットカーボンとFRPの基本的な違い
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繊維素材の違い

FRPはガラス繊維を使用し、ウェットカーボンは炭素繊維を使用する点が最大の違いです

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製造工程の共通点

両者とも樹脂を含浸させて硬化させるハンドレイアップ製法を採用しています

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コスト面での位置づけ

FRPが最も安価で、ウェットカーボンは中価格帯、ドライカーボンが最高価格となります

バイクのカスタムパーツや外装部品において、ウェットカーボンとFRPは頻繁に使用される素材です。両者の最も重要な違いは、使用する繊維素材にあります。FRP(Fiber Reinforced Plastics)は一般的にガラス繊維を基材として使用するため、正式にはGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)と呼ばれます。一方、ウェットカーボンは炭素繊維(カーボンファイバー)を使用した複合材料で、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)の一種です。
参考)ドライカーボン、ウェットカーボンの違いとは?

製造方法に関しては、両者とも非常に似た工程を経ています。型に繊維シートを押し付け、そこに樹脂を塗り込んでいくハンドレイアップと呼ばれる手作業での製造が主流です。繊維を何層にも重ね、ローラーで脱泡(空気を抜く作業)しながら樹脂を含浸させていく点は共通しています。
参考)カーボンには「ドライ」と「ウェット」との2種類があるが、製法…

ウェットカーボンとFRPの製法比較


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ウェットカーボンの製法は、FRPとほぼ同じプロセスを採用しています。炭素繊維を積層したところに、ポリエステル樹脂や反応前のエポキシ樹脂などを現場で含浸させて硬化させるのが基本的な流れです。この製法は「湿式カーボン」とも呼ばれ、樹脂が湿った状態で作業を行うことからこの名前が付けられました。
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製造工程における具体的な手順は以下の通りです。
参考)【DIY】FRP樹脂でカーボンパーツ作り!作業手順や必要な道…

  • 部品表面に足付け研磨を施し、樹脂の密着性を高める準備を行います
  • ノンパラフィン樹脂を最初に塗布し、接着層を形成します
  • カーボンクロスまたはガラス繊維を貼り付け、空気を抜きながら密着させます
  • 樹脂を複数回塗り重ね、繊維に十分に含浸させます
  • 常温または低温で自然硬化させ、製品として完成させます

ハンドレイアップ製法の特徴として、樹脂が多めになりがちという点があります。手作業で樹脂を塗り込むため、樹脂と繊維のコントロールが難しく、結果として重量が重くなる傾向があります。また、カーボン繊維は樹脂との相性があり、剥離が起きやすいので注意が必要です。
参考)ドライ?ウェット?インフュージョン?それぞれのカーボン製品の…

ウェットカーボンとドライカーボンの製造工程の詳細な違いについて解説されています

ウェットカーボンとFRPの強度特性

ウェットカーボンとFRPの強度面での違いは、使用する繊維素材の特性に大きく依存します。炭素繊維(カーボンファイバー)はガラス繊維よりも引張強度が高く、鉄と比較すると約2.5倍の引っ張り強度を持つとされています。しかし、ウェットカーボンの場合、製法上の制約により理論上の最大性能を発揮できないことが多いのです。
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実際の強度比較では、ウェットカーボンの強度はFRPと大差ないレベルにとどまります。これは、ウェットカーボンがFRPのガラス繊維部分の一部を炭素繊維に置き換えただけの構造であるためです。確かに炭素繊維単体ではガラス繊維よりも強度・剛性・軽量性に優れていますが、それだけで劇的に性能アップするほどではありません。
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素材 引張強度 重量比 耐熱性
FRP(ガラス繊維) 基準値 重い 低い
ウェットカーボン FRP並み やや軽い やや高い
ドライカーボン 数十倍高い 非常に軽い 高い

参考:
参考)https://www.benetec.jp/what_is_carbon

ドライカーボンと比較した場合、ウェットカーボンの機械的強度は数十分の一程度にとどまります。ドライカーボンはオートクレーブで高温・高圧で焼き上げることで密度が増し、強度が飛躍的に向上しますが、ウェットカーボンはそのような工程を経ないため、基本的にFRPレベルの強度となります。
参考)「カーボン」ってよく聞くけどどんな素材?ドライカーボンとウェ…

各種カーボン製品の強度を科学的に比較し、製法による性能差を詳しく解説しています

ウェットカーボンとFRPの重量比較

バイクパーツにおいて重量は非常に重要な要素です。炭素繊維は鉄の約5分の1、アルミの約半分の重量しかないため、カーボンパーツは軽量化に有利とされています。しかし、ウェットカーボンの場合、製法の特性上この利点を十分に活かせていないのが現実です。
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ウェットカーボンは一般的にFRPより重いケースが多く見られます。これは、ハンドレイアップ製法において樹脂が多めになりがちで、プライ数(重ねる枚数)によっては予想以上に重量が増加するためです。中国製の安価なパチもの商品が見た目は全く同じでも、重量が大きく違うのはこうした製造工程の違いによります。​
比較表:バイクパーツの重量比較(同サイズのカウル想定)

パーツ素材 相対重量 軽量化効果
純正ABS樹脂 100% -
FRP 80-90%
ウェットカーボン 75-90% 小〜中
ドライカーボン 50-60%

参考:
参考)https://www.lafs.co.jp/dry_carbon/

ドライカーボンは硬いため剛性が高く、製品を薄く作ることができます。薄くすることで同じ強度を保ちながら軽量化を実現できるのですが、ウェットカーボンではこのような製造が困難です。
参考)ウェットカーボンとドライカーボンの違い

ウェットカーボンとFRP価格の違い

コスト面では、ウェットカーボンはFRPとドライカーボンの中間に位置します。FRPが最も安価な選択肢であり、一般的なバイクのカウルに広く使用されています。ウェットカーボンは比較的安価でありながら、見た目にカーボン柄を楽しめるため、ドレスアップを目的とする場合に選ばれることが多い素材です。​
市販のバイクパーツにおける価格帯の目安を見てみましょう。
参考)カーボンボンネットのメリット・デメリットを徹底解説

  • FRP製カウル: 3万円〜6万円程度
  • ウェットカーボン製パーツ: 5万円〜15万円程度
  • ドライカーボン製パーツ: 15万円〜数十万円以上

ウェットカーボンのコストメリットは、その製造工程にあります。大掛かりな設備が不要で、製造上の圧力が低いことから製品型への負担が少なく長持ちするため、商品の生産コストを比較的安価に抑えることができます。オートクレーブのような高価な装置を必要とするドライカーボンと比較すると、製造コストが大幅に削減できるのです。​
見た目をカーボンにしたいが、重量はそれほど気にしないという用途であれば、ウェットカーボンは良い選択肢となります。ただし、修理や交換時のコストも考慮する必要があります。カーボンパーツは修復が難しく、破損した場合は新品交換が前提となるため、維持費用も含めた総合的なコスト計算が重要です。
参考)劣化したウェットカーボン素材を修繕します。(スバル レヴォー…

FRP、CFRP(カーボン)、ABSの価格差とメリット・デメリットを詳しく比較しています

ウェットカーボンとFRPの耐久性とメンテナンス

バイクパーツとして長期使用する際、耐久性とメンテナンス性は重要な判断基準です。ウェットカーボンとFRPは、どちらも環境要因による劣化に注意が必要な素材です。特に紫外線による劣化は両素材にとって大きな問題となります。
参考)カーボンフレームは結局のところ「へたる・疲労する・劣化する」…

紫外線への露出により、コーティングされていないカーボン繊維や含浸樹脂は経時的に弱くなり、ダメージを受けることが知られています。この理由から、多くのカーボンパーツには不透明なペイントやUV保護(紫外線阻害または吸収)処理が施されます。ウェットカーボン製品でクリアー塗装を施していない場合、紫外線で樹脂がバキバキになる可能性が高いため、必ずクリアコートなどの対策が必要です。
参考)カーボンパーツの劣化を防ぐ方法とは?
​youtube​
耐久性における意外な特徴として、ウェットカーボンは熱に対する耐性がFRPよりやや高い一方で、ドライカーボンには大きく劣ります。これは使用される樹脂の種類と硬化方法の違いによるものです。​
メンテナンスの実践的なポイント:

  • 定期的なワックスがけやコーティング処理で紫外線から保護します
  • 洗車時は中性洗剤を使用し、強力なケミカルは避けるべきです
  • 破損時の修理はガラス繊維とポリエステル樹脂で補修可能ですが、カーボンの目は完全には復元できません
  • ボルト締め付け部分は圧縮破壊されやすいため、適正トルクでの締め付けが重要です

参考:
参考)【カーボンパーツ】長く綺麗を維持するたったひとつの方法とは?…
​youtube​
ガラス繊維を使ったFRPはぶつけると意外と簡単に裂けるように破損してしまいます。ウェットカーボンも強度的にはFRPと大差ないため、同様の注意が必要です。ただし、適切なケアをすれば長期間使用できる耐久性を持っており、パーツによってはライダーよりも長生きする可能性があります。
参考)意外と簡単?FRP補修のやり方

カーボンパーツの劣化を防ぐための具体的なメンテナンス方法が詳しく解説されています