絶縁破壊メカニズム:バイク配線劣化トリーイング高分子材料

絶縁破壊メカニズム:バイク配線劣化トリーイング高分子材料

絶縁破壊メカニズム

絶縁破壊の基本プロセス
電子雪崩現象

高電圧により電子が加速し、分子に衝突して新たな電子を放出、雪崩的に増加する現象

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トリーイング進展

樹枝状の亀裂が徐々に成長し、絶縁材料内部を浸食していく劣化プロセス

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完全破壊

劣化が進行すると絶縁性能が失われ、最終的にショートや火災事故につながる

絶縁破壊の基本原理と電子雪崩増倍現象


絶縁破壊電圧 1.5KV以上 シリコンガラスチューブ (黄) 内径2mm 1M品 10本入り
絶縁破壊は、通常電流を通さない絶縁材料が高電圧の印加により急激に導電性を持つ現象です。気体、液体、固体のいずれの絶縁材料でも、共通した電離現象に基づくストリーマ機構によって破壊が進行します。絶縁体内部では、ごくまれに電子が分子から飛び出すことがありますが、高電圧がかかっているとこの電子がプラス極に向かって加速し、他の分子に衝突します。衝突を受けた分子は新たに電子を放出し、このプロセスが繰り返されることで電子が雪崩的に増加する「電子雪崩増倍現象」が発生します。
参考)https://core.ac.uk/download/pdf/59121319.pdf
​youtube​
バイクの配線や電気設備では、製造時の欠陥や経年劣化によって絶縁材料の性能が低下すると、印加される電圧が絶縁体の固有破壊限界を超えた箇所で局部的な破壊が始まります。この局部破壊は一度発生すると徐々に進展し、最終的には全路破壊に至るため、機器の設計・保守において重視すべき問題となっています。絶縁破壊の進行過程では、空気などの気体中で火花放電が始まり、普段は電流を通さない空気が絶縁破壊を起こします。youtube​
参考)https://meiji.repo.nii.ac.jp/record/5789/files/rikougakuhoukoku_23_41.pdf

絶縁破壊における電気トリー劣化進展メカニズム

電気トリーは、高分子絶縁材料において電極不整や金属性異物、誘電性異物などによる局部的高電界部分から発生する樹枝状の劣化現象です。ボイド(空隙)内の部分放電による放電先端の高電界部分が固体の持つ固有破壊限界を超えると、局部破壊が起こり徐々に樹枝状に進展します。電気トリーのメカニズムには、ボイド放電、イオン衝撃、誘電発熱などの複数の要因が関与しています。​
実際の電力ケーブルや電気機器において電気トリーが発生すると、相当な肉厚の絶縁材料で保護されているにもかかわらず破壊路が進展し、最終的に貫通破壊に至ります。電気トリーは1951年にMasonによって最初に指摘され、1958年にはKitchinらが高電圧用ポリエチレンケーブルにおいて破壊の初期に電気トリーが存在することを実際に見いだしました。電気トリーの抑制には、電圧安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤の添加が有効とされています。
参考)http://www.nts-book.co.jp/item/detail/summary/kobunsi/20210100_177.html

絶縁破壊と水トリー現象の発生メカニズム

水トリーは、高圧電力ケーブル(CVケーブル)の絶縁層に使われる架橋ポリエチレン中に微量の水分や異物が侵入し、交流電界の影響で樹枝状の亀裂が発生・進展する現象です。水トリーは0.1〜1μmの無数の水滴の集合体であるため、周辺の絶縁体に比べて導電性が高くなり、ケーブルの絶縁性能を大きく低下させます。水トリーのメカニズムには、水の蒸発・凝集による圧力や分子鎖切断などの要因が関与しています。
参考)【書籍】高分子の絶縁破壊・劣化メカニズム(No.2083BO…

水トリーは架橋ポリエチレン中のボイドや異物を起点として樹状に広がり、徐々にコロナ放電が発生して繰り返されることで絶縁層が浸食されます。最終的には短絡や地絡に至り、自家設備の停電だけでなく電力会社側への波及事故を引き起こす可能性があります。水トリーが発生するケーブルは通常6600Vなどの高電圧の電気を流すため、絶縁破壊事故が発生すると高圧地絡に発展し、設備全域や周辺地域まで巻き込んだ停電になるケースもあります。30年以上経過したCVケーブルは劣化が進んでいるため、早急な劣化診断の実施が推奨されています。
参考)水トリーとは?発生原因や対策方法|松定プレシジョン

絶縁破壊における部分放電と高分子材料劣化

部分放電は、絶縁材料の製造時の欠陥や経年劣化によって絶縁性能が低下した箇所で発生する微弱な放電現象です。高電圧が印加されると、不純物が含まれたりわずかな隙間が空いたりした欠陥部分で微弱な放電が生じます。部分放電は外側から見分けがつきづらく、わずかな部分放電は機器の機能に大きな影響を与えないため見過ごされるケースが多いですが、放置すると放電箇所から絶縁材料の劣化が徐々に進行します。
参考)絶縁材料の劣化による事故を未然に防ぐ「部分放電」の定量評価|…

絶縁材料の基本的な劣化要因は「熱」であり、材料の熱劣化は主として酸化や分解といった材料自身の変質によるものです。これによって絶縁層の構成変化(ボイド、クラックの発生など)が起こります。部分放電が繰り返されるにつれ、絶縁不良の箇所・範囲が徐々に拡大し、部分放電の強度や頻度が増加していきます。つまり部分放電現象の進行は絶縁劣化の進行と相関があり、部分放電現象を把握することで絶縁材料の不良あるいは絶縁破壊の兆候を捉えることができます。劣化した絶縁材料はやがて絶縁破壊を起こし、機器の故障だけでなく漏電や火災、大規模な停電などの事故につながる危険性があります。
参考)部分放電測定について|株式会社サンコーシヤ

バイク配線における絶縁破壊予防とメンテナンス

バイクの電気系統において、配線の絶縁破壊は重大な事故の原因となります。配線がショートすると大量の電流が流れ、ヒューズが切れる原因となります。配線の被覆が破れてむき出しになっている部分や、配線が接触している部分がショートの原因となりやすく、特に経年劣化や振動によって配線が傷んでいる場合はショートのリスクが高まります。
参考)バイクのヒューズが切れる原因と対処法 – 修理費用も解説

バイクの配線メンテナンスでは、定期的な目視チェックが重要です。特にガソリンタンク下やフレームと接触している部分、エンジン周りの配線は振動で断線しやすいため重点的に確認する必要があります。配線が破れている場合は、絶縁性のある自己融着テープや熱収縮チューブで補修を行います。むき出しになった電極や配線の芯線が車体金属部に触れないよう、配線テープを巻き付けることで絶縁処理を施すことができます。元は赤色だったバッテリーに直結した電源線が車体に接触すれば、車体にはバッテリーのマイナスがつながっているため当然ショートし、メインスイッチとの間にあるヒューズが切断して電気が遮断されます。
参考)つぎはぎだらけの電気配線は事故の元。絶版車や旧車にありがちな…

配線の異常箇所を特定するには、マルチメーター(テスター)を使用して導通チェックを行うことが効果的です。作業中のショートを防ぐため、まずバッテリーを外してから測定を行い、ヒューズ端子の片側とフレーム(アース)間の抵抵を測定します。ゼロに近い場合はショートの可能性が高いと判断できます。古いバイクの配線カプラーは経年劣化により硬くなったり端子が劣化したりするため、定期的なメンテナンスが必要です。経年劣化や錆などでヒューズが切れる前に、全てのヒューズを定期的に点検し、接続部分がくすんでいたり錆が発生していたりする場合は新しいヒューズに交換することが推奨されます。
参考)https://bikeman.jp/blogs/bikeparts/motobike-118

 

 


絶縁破壊電圧 1.5KV以上 シリコンガラスチューブ (黒) 内径3mm 1M品 10本入り