

スピードウェイのバイクにはブレーキがありません。
FIMスピードウェイアンダー21世界選手権は、1977年から国際モーターサイクリスト連盟(FIM)が主催する若手ライダー向けの年次イベントです。競技は楕円形のダートトラックを左回りに周回するスタイルで、ブレーキを装備しないという極めて特殊なルールが採用されています。
参考)Speedway Under-21 World Champi…
この大会は世界選手権としてのステータスを1988年に獲得しました。それ以前はFIM主催の若手大会として開催されていたものの、正式な世界選手権としての格付けはなかったのです。これにより若手ライダーにとっての価値が大きく向上しました。
参考)FIM Speedway - FIM Speedway Wo…
2022年以降、タイトルはFIMスピードウェイ世界選手権のSGP2カテゴリーで競われる形式に変更されました。
つまり上位カテゴリーと同時開催される仕組みです。
若手育成の場として機能しており、多くのトップライダーがこの大会出身者となっています。エミル・サイフトディノフ選手は2007年と2008年に2度優勝を果たし、初の連覇チャンピオンとなりました。
参加資格には厳格な年齢制限が設けられています。ライダーは最低16歳の誕生日から出場可能となり、上限は21歳です。具体的には21歳になった年の年末まで参加できる仕組みとなっています。
この年齢設定には明確な理由があります。スピードウェイは非常に高い技術と反射神経を要求される競技であり、16歳未満では身体的・精神的な発達が十分でないと判断されているためです。21歳という上限は、若手カテゴリーとシニアカテゴリーの境界線として機能しています。
若手時代にこの大会で実績を積むことが重要です。
多くのライダーが18歳から20歳の間に最も競争力を発揮する傾向があり、この時期に結果を残すことでスポンサー獲得やキャリアアップにつながります。若手育成システムとして機能している証拠といえるでしょう。
年齢制限により、ライダーは限られた期間内で結果を出すプレッシャーに直面します。そのため大会は常に高い緊張感と激しい競争が繰り広げられる舞台となっているのです。
スピードウェイ競技用バイクは、一般的なバイクとは全く異なる構造を持っています。最も特徴的なのはブレーキが一切装備されていない点です。この設計は安全性を高めるための意図的な選択となっています。
ブレーキがない理由は大事故を防ぐためです。平均時速100km、最高時速150kmという高速で密集走行する競技において、誰かが急ブレーキをかけると後続車が追突する危険性が極めて高くなります。ブレーキを排除することで、全車が一定のペースを維持しやすくなるわけです。
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エンジンは500cc単気筒で約70馬力を発生します。この出力は250ccロードバイクの約3倍に相当する驚異的な数値で、車重がわずか77kg程度しかないため、パワーウェイトレシオは現代のスーパースポーツバイクを上回ります。
燃料にはメタノールが使用されています。メタノールは高圧縮比エンジンに適しており、ガソリンよりも高出力を引き出せるためです。ただし燃費は悪く、短距離スプリントレースに特化した選択といえます。
減速はエンジンブレーキのみで行います。アクセルを戻すと強力なエンジンブレーキが作動し、コーナー進入時の速度調整が可能になるのです。ライダーは体重移動とスロットルワークだけでマシンをコントロールする高度な技術が求められます。
国別のメダル獲得状況を見ると、圧倒的な強豪国が浮かび上がります。ポーランドが金メダル18個、銀メダル16個、銅メダル10個の合計44個のメダルを獲得し、他国を大きく引き離しています。
ポーランドが強い理由は何でしょうか?
同国ではスピードウェイが国民的スポーツとして定着しており、若手育成システムが充実しています。地方レベルから国際レベルまで段階的に選手を育てる仕組みが機能しているため、継続的に優秀なライダーを輩出できるのです。
オーストラリアは金メダル7個、銀メダル4個、銅メダル5個の計16個で2位につけています。ダート走行文化が根付いている同国では、若い頃からオフロードバイクに慣れ親しむ環境があり、スピードウェイへの適応が早いという利点があります。
デンマークは金メダル7個ながら銅メダル10個と合計21個のメダルを獲得しており、安定した強さを誇ります。イギリスは金メダル5個、銀メダル7個、銅メダル9個の計21個で、歴史的にモータースポーツ大国としての地位を維持しています。
日本からの参加実績はほとんど確認されていません。スピードウェイ競技自体が日本国内でほぼ普及していないため、若手ライダーがこの競技に触れる機会が極めて限られているのが現状です。国内にダートオーバルトラックの常設施設がないことも、普及の障壁となっています。
競技用バイクには厳格な技術規定が設けられています。ハンドルバーの幅は650mmから850mmの範囲内と定められており、これより広い・狭いハンドルは使用できません。ライダーの操作性と安全性のバランスを考慮した規定です。
チタン部品の使用は全面的に禁止されています。チタンは軽量で強度が高い素材ですが、高額であるため経済的格差が競技結果に直結することを防ぐための措置です。同様にコーティングされていないセラミック部品も禁止され、全参加者が同等の条件で競える環境が整えられています。
エレクトロニックコントロールユニット(ECU)の搭載も認められていません。現代のバイクでは一般的なトラクションコントロールやパワーマッピングといった電子制御技術が使えないため、ライダーの純粋な技術が結果を左右します。
これが原則です。
過給機やターボチャージャーの装備も禁止されています。自然吸気エンジンのみが認められており、出力の上限を実質的に制限することで、極端なマシン性能差を防いでいるのです。
遠隔測定部品の搭載も制限されており、タイム計測を除いて禁止されています。リアルタイムでのデータ収集とマシン調整を制限することで、チーム間の技術格差を最小限に抑える狙いがあります。ライダーの感覚と経験が重視される競技特性を維持するためです。
安全装備については、ダートデフレクターと呼ばれる泥除けが後方に装着されます。これは後続ライダーの視界を確保し、巻き上げられたダートによる事故を防ぐための必須装備となっています。
競技中の接触事故を最小限に抑えるため、走行ライン上での急激な進路変更には厳しいペナルティが科されます。密集走行が常態化する競技特性上、予測可能な走行が安全確保の鍵となるためです。
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