
空燃比センサー、Bosch LSU4.9 O2 ワイドバンド酸素センサーと互換性あり、PLX AEM 30-2004 0258017025 と互換性あり
空燃比が薄い状態では、エンジン内部で混合気が正常に燃焼せず、未燃焼ガスがマフラーに流れ込む現象が発生します。このガスが高温のマフラー内で着火することで、アフターファイアーと呼ばれる破裂音や炎が発生します。特にアクセルを閉じたときに、混合気がさらに薄くなってエンジン内で着火しない状態になり、マフラー内で燃焼してしまうのです。電子制御バイクでは、排気ガス規制により理論空燃比14.7付近で調整されているため、アクセルオフ時に薄くなりすぎてアフターファイアーが起きやすい傾向があります。マフラー交換で抜けが良くなると、さらに混合気が薄くなってアフターファイアーが頻発し、エンジンにダメージを与える可能性もあります。
参考)第四話 ~空燃比14:1以上 薄い空燃比の場合~ - FCR…
混合気が薄い状態では、エンジンは回転しますがパワー感のないスカスカした感覚になります。FCRキャブレターのセッティングでは、ジェットニードルのクリップ段数を極端に変更すると、スロットルが軽くなって車体が軽い感じにはなるものの、明らかにパワー不足を感じます。高回転時にレブリミットまでしっかり回らず、5速の高負荷状態でも十分な加速力が得られません。特に全開加速時には、最大出力を得るために空燃比12.6:1程度の濃い混合気が必要ですが、薄い状態ではこの出力を引き出せません。発進時にも息継ぎをするような症状が現れ、スムーズな加速ができなくなります。
参考)FCRセッティング-濃い過ぎと薄過ぎの症状-空燃比計もオスス…
アイドリング時の空燃比が適正範囲から外れると、エンジン回転が不安定になり、最悪の場合はエンストする可能性があります。理論空燃比14.7よりも薄い(リーンな)状態では、混合気が失火しやすくなり、アイドリングが安定しません。CBX1000の実例では、スロットル全閉時に12.9程度、スロットル低開度時に12.5前後の空燃比が調子良く、14.0程度まで薄くするとエンジンの始動性やレーシング時のスロットル戻りに影響が出ます。キャブレター車では、アイドリング付近ではエンジンが止まらないように理論空燃比よりかなりリッチ(濃い)12~13:1程度に設計されています。インジェクション車でも、O2センサーの不良や燃料系統の問題があると、空燃比が18や19といった極端に薄い状態になってアイドリングが安定しなくなります。
参考)キャブレターの空燃比調整完全ガイド|座学編
混合気が薄すぎる状態では、燃焼温度が高くなり、オーバーヒートや焼付きといった重大なエンジントラブルを引き起こす可能性があります。空燃比が薄い状態ではエンジンが冷えにくくなり、エンジンが高温になりやすくなります。キャブレターセッティングで薄すぎる設定にすると、プラグの中心電極が白くなり、燃焼温度が高くなっている証拠となります。高回転・高負荷時には大きな発熱により温度が過度に上昇し、ピストンやバルブの溶損などのトラブルが発生することもあります。理想的なパワー空燃比は12.9~13:1程度で、これより薄い状態で長時間走行すると、エンジン内部の温度管理ができず、最悪の場合エンジンブローに至るケースもあります。薄い混合気での走行は、短期的には燃費が良く感じられても、長期的にはエンジン寿命を縮める原因となります。
参考)車の燃費に影響する「理論空燃比」とは - 【 メカニッ求 】…
プラグの焼け具合を確認することで、空燃比の状態を判断できます。正常な空燃比で燃焼している場合、プラグの中心電極(白い碍子部分)は茶色からキツネ色になります。しかし混合気が薄い状態では、燃焼温度が高くなるため、プラグの中心電極が白っぽくなります。この白い焼け色は、ガソリンの量が不足している明確なサインです。プラグチェックは走行後すぐに行うことが重要で、時間が経つと正確な判断ができなくなります。キャブレターセッティングを行う際には、プラグの焼け具合を定期的に確認しながら、空燃比を適正範囲に調整していく必要があります。濃すぎる場合はプラグが黒くススけた状態になるため、色の違いで判断できます。プラグの状態確認は、空燃比計がない環境でも実施できる有効な診断方法です。
参考)https://www.mvs.co.jp/~miz/Bike/yomimono/cabset1.html
空燃比が薄くなる主な原因は、燃料系統のトラブルにあります。燃料ポンプの劣化や消耗により、インジェクターにかかる燃圧が不足すると、燃料の噴射量が減少して空燃比が薄くなります。燃料ポンプは常に一定の圧力を維持する必要がありますが、経年劣化でうまく作動しなくなると、燃圧にバラつきが生じます。プレッシャーレギュレーターの不良や組み付け不良も、燃圧低下の原因となります。キャブレター車の場合は、マフラー交換やエアクリーナー交換により吸排気のバランスが崩れ、セッティングが狂って薄くなることがあります。インジェクション車では、O2センサーやA/Fセンサーの故障により、ECUが正しい空燃比を判断できず、結果的に薄い状態になることもあります。またインテークマニホールド付近からの二次エアー吸引や、ブレーキマスターバックからのエアー混入も原因となります。
参考)マフラー交換の落とし穴:電子制御バイクのアフターファイアーと…
キャブレターのセッティングで空燃比を適正化するには、メインジェット、スロージェット、ジェットニードルの調整が必要です。空燃比が薄い場合は、これらのパーツを番手の大きいものに交換して燃料供給量を増やします。メインジェットは高回転域の空燃比を担当し、番手を上げることで全開時の燃料を濃くできます。スロージェットはアイドリングから低開度域を制御するため、アイドリング不調がある場合はこちらの調整が有効です。ジェットニードルのクリップ段数を変更すると、中開度域の空燃比が変化します。クリップ位置を下げる(ニードルを上げる)と燃料供給が増えて濃くなります。セッティング作業は必ず暖機後に行い、試走しながら徐々に調整していく必要があります。空燃比計を使用すると、現在の空燃比が数値で確認できるため、プロでなくてもセッティングが容易になります。理想的なパワー空燃比12.6~13:1を目標に調整し、プラグの焼け具合も併せて確認することが重要です。
参考)濃い? 薄い? キャブレターセッティングの心得【微調整の勘所…
インジェクション車で空燃比が薄い場合、まず燃圧の確認が最優先です。燃料ポンプの劣化や燃圧レギュレーターの不良により燃圧が低下していないかチェックします。燃圧計を使って規定圧力が出ているか測定し、低い場合は燃料ポンプ交換や燃圧系統の修理が必要です。O2センサーやA/Fセンサーの故障も空燃比異常の原因となるため、診断機でエラーコードを確認します。P0171などのリーン異常コードが出ている場合は、センサー交換を検討します。マフラー交換などでセッティングが変わった場合は、サブコンピューターやフューエルコントローラーで燃料噴射量を補正します。ECUの燃料マップを書き換えることで、各回転域の空燃比を最適化できます。インジェクター自体の詰まりも空燃比を薄くする原因となるため、走行距離が多い車両では清掃や交換も視野に入れます。抜けの良いマフラーに交換した場合、燃調調整なしでは薄くなりすぎてエンジンを痛める可能性があるため、必ず適切なセッティングを行うことが重要です。
参考)マフラーから炎を噴くのは「アフターファイヤー」です! えっ?…
空燃比が薄い状態では、一見燃費が良くなるように思えますが、実際にはエンジン効率が低下してトータルの燃費は悪化することがあります。理論空燃比14.7:1よりも薄いリーン状態では、燃焼効率は低下し、パワーが出ないため結果的にアクセル開度が大きくなってしまいます。経済空燃比と呼ばれる最も燃費の良い空燃比は17前後とされていますが、ハーレーダビッドソンなどのインジェクション設定では14.6が限度で、それ以上薄くすることはできません。極端に薄い空燃比16:1以上での走行は、水温上昇やエンジン内部の高温化に直結し、推奨できません。巡航時には理論空燃比14.7前後から場合によっては16:1程度まで薄くすることで燃費向上が期待できますが、これはあくまで負荷の低い状態に限定されます。薄すぎる設定では三元触媒が正常に機能しなくなり、排気ガス性能も悪化します。適切なセッティングは、走行条件に応じて空燃比を変化させることで、燃費とパワーのバランスを取ることが重要です。
参考)ハーレーのキャブレター調整方法!濃い薄い症状別|ハーレーエン…
エンジンチェックランプが点灯し、診断機でP0171などのリーン異常コードが表示された場合、速やかな対処が必要です。このコードはECUが理想空燃比に近づけるために燃料補正をしているものの、補正値がプラス35%以上になった場合に点灯します。原因として最も多いのは、エアフロメーターの不良です。エアフロメーターが正確な吸気量を測定できないと、ECUが誤った燃料噴射を行い、結果的にリーン状態になります。その他の原因として、燃料ポンプの劣化、インジェクターの詰まり、O2センサーの故障、二次エアーの吸い込みなどがあります。ブレーキマスターバックからのエア漏れも意外な原因として報告されており、マスターバックへのホースを外してブロックプラグを取り付けると症状が改善するケースがあります。リーン異常を放置すると、燃焼温度が上昇してエンジンにダメージを与えるため、早期の診断と修理が重要です。オシロスコープを使った詳細診断により、真の原因を特定できます。
参考)意外と気づかない【燃圧低下】最悪エンジンブローにも!?
空燃比異常の診断方法について、O2センサの信号変化と真の原因の見極め方を解説した技術資料(大分県自動車整備振興会)
大津市の整備事例:空燃比リーン異常P0171コードとブレーキマスターバック関連トラブルの修理実例