ボスフリーバイクの交換と外し方!カセットスプロケットの違い

ボスフリーバイクの交換と外し方!カセットスプロケットの違い

ボスフリーバイクの基礎知識
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ボスフリーとカセットの違い

ギア側にフリー機構があるのがボスフリー、ホイール側にあるのがカセットです。

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交換に必要な専用工具

ボスフリー抜きと大型のモンキーレンチが必須。スプロケット外しは不要です。

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固着した時の外し方

ペダルを踏む力で締まる構造のため、鉄パイプなどでレンチを延長して外します。

ボスフリーのバイク

ボスフリーとは、自転車の後輪に取り付けられるギアスプロケット)の一種で、正式名称を「ボスフリー スプロケット」と呼びます。「ボスフリー バイク」という言葉は、この部品が採用されている自転車、主に安価なクロスバイク、マウンテンバイク(ルック車)、ロードバイク、そして一般的なシティサイクル(ママチャリ)を指すことが多いです。

 

現在、スポーツバイクの主流は「カセットスプロケット」ですが、ボスフリーも依然として多くのエントリーモデルやクラシックな自転車で使用されています。構造が単純でコストが安いというメリットがある反面、スポーツ走行におけるメンテナンスやアップグレードには独特の知識が必要です。特に、長年乗り続けたボスフリーのバイクは、ペダルを踏み込む力によってギアが強力に締め付けられているため、交換時に「固くて外れない」というトラブルが頻発します。

 

この記事では、ボスフリーバイクのオーナーが直面するメンテナンスの課題や、カセットスプロケットとの決定的な違い、そして7速化などのカスタム方法について深掘りしていきます。

 

参考リンク:ボスフリーとカセットフリーハブの構造的な違いと修理時の注意点について

ボスフリーのカセットスプロケットとの違い

 

ボスフリーとカセットスプロケットは、一見すると同じような歯車に見えますが、その構造は根本的に異なります。最も大きな違いは、「フリー機構(ペダルを止めたときに空転する仕組み)」がどこに内蔵されているかという点です。

 

  • ボスフリー:フリー機構がスプロケット(ギア)本体に内蔵されています。ホイールのハブ側にはネジ山が切ってあり、そこにスプロケットをねじ込んで固定します。
  • カセットスプロケット:フリー機構はホイールのハブ側(フリーボディ)にあります。スプロケット自体は単なる歯車の集合体で、それをハブの溝にはめ込み、ロックリングで固定します。

見分け方は非常にシンプルです。後輪のギアの中心部分を見てください。

 

  • ロックリングがある場合:ギアの中央にギザギザした薄いリングがあり、そこに文字が書いてあれば、それはカセットスプロケットです。
  • 窪みがある場合:ギアの中心が深く窪んでいて、内部にスプライン(溝)や丸い穴が見える場合は、ボスフリーです。

この構造の違いは、ホイールの強度にも影響します。ボスフリー式のハブ(ボスハブ)は、構造上、車軸(アクスルシャフト)のベアリング位置が内寄りになるため、カセット式に比べて車軸が曲がりやすいという弱点があります。そのため、激しいオフロード走行や重い荷物を積載する用途では、カセット式(フリーハブ)への交換が推奨されることがあります。

 

参考リンク:初心者向けに図解でわかるカセットスプロケットとボスフリーの決定的な違い

ボスフリーの交換に必要な専用工具

ボスフリーの交換には、カセットスプロケットとは異なる専用の工具が必要です。間違った工具を用意してしまうと作業ができないため、事前に規格を確認することが重要です。

 

基本的に必要な工具は以下の通りです。

 

  • ボスフリー抜き(フリー抜き):シマノ製の「TL-FW30」などが代表的です。ボスフリーの中心にある溝に差し込んで使用します。メーカーや年式によって溝の形状が異なる場合があるため(サンツアー用など)、現物合わせや規格の確認が必要です。
  • 大型のモンキーレンチ(24mm以上開くもの):ボスフリー抜きを回すために使います。ボスフリーは非常に固く締まっていることが多いため、柄が長く、トルクをかけやすいものが必須です。
  • グリス:新しいボスフリーを取り付ける際、ネジ山に塗布して固着を防ぎます。

カセットスプロケットの交換で使われる「スプロケット戻し(チェーンがついた工具)」は、ボスフリーの取り外しには原則として不要です。ボスフリーはハブにねじ込まれているだけなので、工具で反時計回りに回せば外れます。スプロケット戻しが必要なのは、カセットスプロケットのロックリングを緩める際に、フリーボディが空転しないようにギアを押さえるためです。ボスフリーの場合、工具をかけるとフリー機構ごと回そうとするため、空転せずにネジが緩みます。ただし、分解整備(オーバーホール)で蓋を開ける場合には必要になることもあります。

 

参考リンク:スプロケットの外し方と工具がない場合の代用アイデアや注意点

ボスフリーの固い外し方と対処法

ボスフリーの交換において最大の難関は、「固すぎて外れない」ことです。これは、ボスフリーの構造に起因します。ペダルを踏んでチェーンがギアを引っ張る力は、そのままボスフリーをハブのネジ山に締め付ける方向に働きます。つまり、乗れば乗るほど、坂道を登れば登るほど、ボスフリーは強く締め付けられていくのです。

 

人力で外れない場合の対処法は以下の通りです。

 

  • 延長パイプを使う:モンキーレンチの柄に鉄パイプなどを差し込み、テコの原理で力を増幅させます。これが最も確実な方法です。
  • タイヤを装着したまま作業する:ホイール単体にしてしまうと、力をかけたときにホイール自体が回ってしまい、力が逃げてしまいます。タイヤを地面に押し付け、壁などに当てて固定した状態で体重をかけると緩みやすいです。
  • 潤滑剤を浸透させる:ネジ山部分にラスペネなどの浸透潤滑剤を吹き付け、一晩放置してから作業します。
  • バイス(万力)を使う:ボスフリー抜きを万力に固定し、ホイール側をその上に乗せて、ホイール全体をハンドルのように回して緩める方法もあります。

注意点として、工具のかかりが浅い状態で無理に力をかけると、ボスフリーの溝をなめてしまい、二度と外せなくなるリスクがあります。クイックリリースレバーやハブナットを使って、ボスフリー抜きが浮き上がらないように軽く固定してから力をかけるのがコツです(緩んだら固定を外します)。

 

参考リンク:ボスフリーが固すぎて外れない時の具体的な対処法とQ&A

ボスフリーの7速化と互換性

安価なクロスバイクやMTBルック車では、標準で6速(14-28T)のボスフリーが装着されていることが多いですが、これを7速にアップグレードしたいという需要があります。ボスフリーにおける多段化(6速から7速へ)は、比較的簡単に行えるカスタムの一つですが、いくつかの注意点と互換性の壁が存在します。

 

  • エンド幅の確認:6速と7速ではスプロケットの厚みが異なります。7速の方が厚いため、フレームのエンド幅(ハブを取り付ける幅)に余裕がないと、フレームに干渉したり、ホイールが入らなくなったりする可能性があります。多くの場合は誤差の範囲で収まりますが、ワッシャーの調整が必要になることもあります。
  • シフターとチェーンの交換:ギアの枚数が増えるため、手元の変速レバー(シフター)を7速対応のものに交換する必要があります。また、チェーンも6・7・8速用であればそのまま使えますが、摩耗している場合は新品に交換するのがベストです。
  • DNP製スプロケットの活用:シマノ製のボスフリー(MF-TZ510など)は、トップギアが14T始まりであることが多く、スピードが出しにくいという不満があります。これに対し、DNPなどのサードパーティ製ボスフリーには、トップ11Tという高速向けのギア設定が存在します。これに交換することで、劇的に最高速を伸ばすことが可能です(通称:11T化)。

ただし、11Tのボスフリーは形状が特殊で、フレームによってはチェーンステーと干渉することがあるため、事前の寸法確認やスペーサーでの調整が不可欠です。

 

参考リンク:ボスフリー7速化とカセットスプロケット8速化の違いと互換性について

ボスフリーのラチェット音による不調の早期発見

検索上位にはあまり出てこない、ボスフリーならではの視点として「ラチェット音の変化による不調検知」があります。ボスフリーはカセットスプロケットに比べて、ラチェット機構(カチカチという音を出す爪の部分)の密閉性が低い傾向にあります。そのため、内部のグリスの状態が音にダイレクトに反映されやすいという特徴があります。

 

  • 音が大きくなった場合:内部のグリスが乾いている、または流出してしまっているサインです。この状態で乗り続けると、ベアリングや爪が摩耗し、最悪の場合は破損して空回り(ペダルを漕いでも進まない状態)を起こします。
  • 音が不規則な場合:内部のベアリング球(鋼球)が破損しているか、ゴミが混入している可能性があります。
  • 音がしなくなった場合:グリスが固着して爪の動きが悪くなっているか、逆に粘度の高すぎるグリスを入れてしまった可能性があります。爪が起き上がらないと、トルクをかけた瞬間に「ガキン!」と歯飛びする原因になります。

カセットスプロケットの場合、フリーボディごとの交換が基本ですが、ボスフリーは安価なため、不調を感じたら「メンテナンスして直す」よりも「新品に交換してしまう」のが最もコストパフォーマンスが良い解決策です。カチカチ音が変わったなと感じたら、それは「交換の合図」であり、数千円で新品の駆動系の滑らかさを取り戻せるチャンスでもあります。この手軽さこそが、ボスフリーバイクの隠れたメリットとも言えるでしょう。

 

 


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