排ガス規制一覧でバイク乗りが知るべき規制の変遷と影響

排ガス規制一覧でバイク乗りが知るべき規制の変遷と影響

排ガス規制一覧

この記事でわかること
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規制の歴史

1998年から現在までの排ガス規制の変遷と各年度の規制値を網羅

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バイクへの影響

各規制によって生産終了となった名車や技術的変化を解説

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今後の展望

2025年以降の新規制と新基準原付の登場による業界変化

排ガス規制の年代別変遷と規制値の推移


KN企画 スーパーJOGZR スーパージョグZR アプリオタイプ2 3YK 4LV ZR アプリオTYPE2 排ガス規制前JOG系 ブレーキレバー ブレーキアーム レバー KN デュアルカラーレバー ブラック/ゴールド
バイクの排ガス規制は1998年に初めて設けられ、その後段階的に強化されてきました。最初の規制では一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の3つの有害物質が対象となり、特に2ストロークエンジン車に厳しい基準が課されました。​
1998年規制では4サイクル車のCO値が13.0g/km、HC値が2.00g/km、NOx値が0.30g/kmと定められ、2ストローク車はCO値8.0g/km、HC値3.00g/km、NOx値0.10g/kmとされました。この規制により、NSR250を始めとする多くの2ストローク車が生産終了に追い込まれる結果となっています。
参考)https://www.goobike.com/magazine/ride/rule/16/

バイク排ガス規制の詳しい歴史と数値の推移(bike-lineage.org)

排ガス規制の最も厳しい2006年規制とその影響

2006年に施行された平成17年排ガス規制は、バイク業界に最も大きな衝撃を与えた規制として知られています。この規制では1998年の規制値から7~8割削減という極めて厳しい数値が設定され、CO値2.0g/km、HC値0.30g/km、NOx値0.15g/kmとなりました。
参考)https://jmca.gr.jp/about_muffler/emissions_regulations/

さらに追い打ちをかけたのが、測定方法の変更です。従来の暖気モード(暖機後測定)から冷機モード(いきなり測定)に変わったことで、冷機時に綺麗に燃焼できないキャブレター車や空冷エンジン車が全滅する事態となりました。ゼファーやXJR400といった人気モデルが姿を消したのはこの規制が原因です。​
この急激な規制強化の背景には、1997年の京都議定書で日本が議長国として2012年までに温室効果ガス-6%という厳しい数値を課したことがあります。バイクメーカーは段階的な規制強化を求めましたが、国際的なメンツがかかった政府は聞く耳を持たず、結果として各メーカーのラインナップが壊滅状態に陥りました。
参考)バイクの排ガス規制が強化された理由や変化とは?規制後の選び方…

排ガス規制の国際基準調和とWMTCモードの導入

2012年の規制からは国際基準調和の流れが本格化し、国連の自動車基準調和世界フォーラム(UNECE/WP29)で策定されたWMTC(Worldwide-harmonized Motorcycle Test Cycle)という測定方法が導入されました。この変更により、規制値は2006年よりもわずかに緩和され、CO値2.62g/km、HC値0.27g/km、NOx値0.21g/kmとなっています。​
WMTCモード導入に伴い、クラス分けも新たに設定されました。クラス1は50cc~150ccかつ最高速度100km/h未満、クラス2は150cc未満かつ最高速度130km/h未満または150cc以上かつ最高速度130km/h未満、クラス3は最高速度130km/h以上と定義されています。​
規制が国際協調される理由は、環境問題や安全性が地球規模の課題であることに加え、自動車メーカーにとっても国ごとにセッティングや部品を作り変える必要がなくなり、大幅なコスト削減につながるためです。​
全国二輪車用品連合会による公式規制情報(JMCA)

排ガス規制のEURO4準拠と車載式故障診断装置の義務化

2016年10月に施行された平成28年規制では、欧州のEURO4とほぼ同等の規制水準となり、クラス3でCO値1.14g/km、HC値0.17g/km、NOx値0.09g/kmという厳しい基準が設けられました。排出ガス規制値の強化だけでなく、OBD(車載式故障診断装置)の搭載が義務化されたことが大きな転換点となっています。
参考)あなたのバイクは大丈夫?排ガス規制とはいったい何?

OBDは専用機器を繋ぐことで断線や異常を検知する自己診断機能で、センサーなどを完備していない既存車の多くがこの規制によってカタログ落ちしました。バイクメーカーが販売網再編(実質ディーラー化)に動いた理由の一つもここにあります。
参考)【バイク情勢】「EURO5」って一体なにもの?メーカー苦肉の…

排出ガス浄化に使われる三元触媒には、プラチナやロジウムといったレアアースが必要で、これが車体価格の高騰に直結しています。CB400SFが以前は60万円程度だったものが100万円にまで上昇したのは、こうした規制対応コストが反映された結果です。​

排ガス規制の令和2年規制とEURO5相当の最高水準

2020年末から施行された令和2年排ガス規制は、欧州のEURO5に準拠した世界最高水準の厳しさとなっています。規制値はクラス分けなく一律で、CO値1.00g/km、THC値0.10g/km、NOx値0.060g/kmと設定され、「外の空気より排気ガスの方が綺麗」と言われるほどのレベルです。​
新型車は2020年12月から、継続生産車は2022年11月から適用されましたが、原付一種については2025年10月末までという猶予期間が設けられました。この猶予はメーカーが悲鳴を上げたことによる措置ですが、結果として50cc以下の原付は2025年11月以降の生産が実質的に終了することになりました。
参考)【これが正解】勘違いが多い「新基準原付」を詳しく解説 

OBDもSTAGE2となり、従来の回路故障と排ガス閾値診断に加えて、性能劣化検知、市場における故障頻度の検知、トルク低下検知などの機能が追加されています。アイドリング時の一酸化炭素規制値も0.5%に強化され、駐車時の燃料蒸発ガス規制値も1.5g/testと厳格化されました。​
国土交通省による自動車排出ガス規制の公式情報

排ガス規制で生まれた新基準原付と125ccクラスの台頭

2025年11月からの第4次排出ガス規制は、50cc以下のバイクにとって克服不可能なハードルとなりました。排気量が小さいほど規制値をクリアするコストが高くなり、50ccで規制に適合させると1台40万円という異常価格になってしまうため、メーカーは50ccの生産を断念せざるを得なかったのです。
参考)原付(ガソリン車)がなくなるって本当?排ガス規制と「2025…

この事態を受け、2025年4月1日に原付一種へ新たな区分「新基準原付」が追加されました。新基準原付は排気量50cc超125cc以下で、最高出力を4.0kW(5.4ps)以下に制御した車両を指し、従来の原付免許で運転可能です。
参考)2025年10月31日、国内50ccの生産終了。新しい125…

ホンダは2025年10月16日、新基準原付に適合した4車種を発表し、スーパーカブシリーズの後継モデルとして110ccエンジン搭載車を投入しています。50ccの代替として125ccクラスが主流になることで、バイク業界は新たな時代を迎えることになります。
参考)日本の二輪車排出ガス規制の厳格化による50cc以下の原付への…

排ガス規制による技術革新とバイク選びのポイント

排ガス規制の強化は一見するとバイク業界にとって逆風ですが、実は触媒技術の飛躍的な向上により、排出ガス問題は解決可能なレベルに達しています。2006年規制以降のバイクに使われる三元触媒は、プラチナがHCやCOを酸化させてCO2と水に、ロジウムがNOxを窒素と酸素に分解する仕組みです。​
バイク価格が高騰している背景には、規制対応の設計時期によるジェネレーションギャップがあります。既存車へのFI化や触媒の後付けは当初の設計予算をオーバーし、その分が車体価格に反映されますが、新型車では設計段階から規制対応を織り込むことでコストを抑えています。NC700のように直下触媒を採用して触媒数を削減するなど、新しい技術でリーズナブルな価格を実現している例もあります。​
バイク選びでは、既存の50ccバイクは2025年10月末までの生産車両が中古市場に流通し続けますが、新基準原付の登場により125ccクラスの選択肢が大幅に増える見込みです。規制後も既存のバイクは継続して使用可能なため、愛車を手放す必要はありませんが、将来的なメンテナンス部品の供給には注意が必要です。​

排ガス規制の今後と電動化・水素エンジンへの展望

年々厳しくなる排ガス規制に対し、バイク業界は電動化と水素エンジンという2つの方向で次世代技術を開発しています。ヤマハはすでに電動バイク「E-Vino」を発売しており、完全電動化への道筋を示しています。電動バイクは排出ガスゼロで規制の影響を受けませんが、航続距離や充電インフラの整備が課題となっています。​
一方、水素エンジンの開発も進められており、自動車業界ではトヨタが中心となって技術開発を推進し、バイク業界でもヤマハが中心となって同業他社やバイクメーカーと自動車メーカーの枠を超えた協力体制が構築されつつあります。水素エンジンはガソリンエンジンの感覚を維持しながら排出ガスをクリーンにできる利点があります。​
排出ガス規制は1社だけでは乗り越えられない状況になっており、メーカー間の技術協力やグローバル戦略車の開発が今後さらに加速するでしょう。電動バイクが主流になるか水素エンジンバイクが普及するかは未知数ですが、バイク乗りにとっては多様な選択肢が生まれる可能性もあります。​

排ガス規制適合車の確認方法と注意すべき改造パーツ

自分のバイクがどの排ガス規制に適合しているかは、車検証の「備考」欄で確認できます。備考欄に「使用車種規制(NOx・PM)適合」と記載されていれば適合車で、それ以外の記載や「この自動車はNOx・PM対策地域内に使用の本拠を置くことができません」などと書かれている場合は非適合車となります。
参考)適合車の確認方法 - 愛知県

型式記号からも適合状況を判断でき、平成17年規制適合車(ADF-など型式記号が3桁のもの)、天然ガス自動車、電気自動車は全て適合車です。また型式欄の記号(例:KC-)と初度登録年月を確認することで、どの規制年度の基準に該当するかが分かります。
参考)対象となる自動車 [自動車NOx・PM法適合車ステッカー]

排ガス規制はマフラーなどのアフターパーツにも大きな影響を与えています。新車出荷時にマフラー内へ排出ガス発散防止装置(触媒装置など)が装着されている車両では、それを取り外したり別の触媒に変更して使用する行為が違法となり、車検も受けられません。安易に中古マフラーへ交換すると法令違反となる可能性があるため、JMCAなどの認定を受けた適合マフラーを選ぶことが重要です。​
排ガス規制強化の理由と規制後のバイク選び方の詳細解説

 

 


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