

ジャックパーセルはそのシンプルで洗練されたデザインから、ファッションにこだわりを持つバイク乗りたちの間で根強い評判を得ています。特に、つま先のライン「スマイル」やヒールの「ヒゲ」といったアイコニックなディテールは、無骨なライディングブーツにはないカジュアルな魅力を放ちます。SR400やエストレヤ、レブルといったクラシックやアメリカンスタイルのバイクとの相性は抜群で、バイクを降りて街を歩く際も違和感がない点が最大のメリットと言えるでしょう。
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しかし、一般的なスニーカーであるジャックパーセルをバイクで使用することには、いくつかの危険性も潜んでいます。まず最も懸念されるのが「プロテクション不足」です。くるぶし部分にはパッドが入っていないため、転倒時の衝撃や、車体との挟み込みによる怪我のリスクが高くなります。また、キャンバス素材のモデルは摩擦に弱く、万が一のアスファルトとの接触で簡単に破れてしまう可能性があります。
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さらに、ソールがフラットであることが、バイク操作においてメリットとデメリットの両面を持ち合わせています。
これらの評判を総合すると、ジャックパーセルは「街乗りやショートツーリングには最適だが、安全性への配慮と対策が必要なギア」という位置づけになります。ファッション性を優先する場合でも、リスクを理解した上で使用することが重要です。
バイクでスニーカーを履く際に最も注意すべき点が、紐(シューレース)の処理です。ジャックパーセルのような紐靴は、走行風で紐の結び目がほどけたり、ループ部分が大きくなったりすることがあります。これがチェンジペダルやブレーキペダル、最悪の場合はドライブチェーンやスプロケットに巻き込み、転倒や大事故につながる恐れがあります。
この危険を回避するための具体的な対策として、以下の方法が有効です。
ほどけにくく、かつ解くときは簡単な結び方として、ヤマハ発動機などの公式サイトでも推奨されています。
参考)TIPS 24/100 靴紐はほどけちゃ、イアン。
参考リンク:靴紐はほどけちゃ、イアン。 | ヤマハ発動機
このページでは、アスリートも採用するほどけにくい結び方が図解されています。
結び目をベロ(シュータン)の裏側に隠すことで、物理的に外部との接触を防ぎます。シンプルですが効果的な方法です。
そもそも紐がないモデルを選べば、リスクはゼロになります。特におすすめなのが「JACK PURCELL LEATHER SIDEGORE RH」です。このモデルは紐やハトメを省いたミニマルなデザインで、脱ぎ履きが容易なだけでなく、紐の巻き込み事故を完全に防ぐことができます。
次に、シフトペダルによる痛みと靴の損傷への対策です。ジャックパーセルのつま先はゴムで補強されていますが、シフトチェンジで当たる部分はちょうどキャンバス地(またはレザー)の部分です。ここに対策をしないと、シフトアップのたびに親指の付け根に食い込むような痛みを感じ、靴自体もすぐに黒く汚れ、穴が開いてしまいます。
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靴に取り付けるタイプ。レザー製のものを選べばジャックパーセルの雰囲気を壊しませんが、歩行時に外れるリスクがあります。
目立たない対策として、厚手の靴下を履く、または足の甲部分にクッション性のあるサポーターを仕込む方法があります。
靴側ではなく、バイクのシフトペダルにゴムやスポンジのカバーを装着する方法です。これならお気に入りのジャックパーセルを一切加工せずに済みます。
バイク用としてジャックパーセルを選ぶ際、素材選びは快適性と耐久性を左右する重要な要素です。基本のキャンバスモデルは通気性が良く夏場は涼しいですが、防水性は皆無です。急な雨に降られると即座に靴下が濡れ、不快なだけでなく足の冷えによる操作性の低下を招きます。
そこで検討したいのが、「ゴアテックス(GORE-TEX)」を搭載したモデルです。「JACK PURCELL GORE-TEX RH」などは、外観はクラシックなジャックパーセルのまま、強力な防水透湿機能を備えています。雨水を防ぎつつ、靴内部の湿気は逃がしてくれるため、蒸れやすいバイクのライディング中でも快適な環境を保てます。特にツーリング先での天候変化が心配なライダーにとって、ゴアテックスモデルは最強の選択肢と言えます。
参考)converse - JACK PURCELL GORE-T…
また、耐久性を重視するならレザーモデルが推奨されます。
キャンバス生地と比較して、レザーには以下のメリットがあります。
「JACK PURCELL LEATHER SIDEGORE RH」のようなレザーかつサイドゴアのモデルは、まさにバイク乗りのためにあるようなスペックを備えています。レザーの厚みが多少のプロテクション効果も果たし、エンジンの排熱からも足を守ってくれます。
| 特徴 | キャンバス | レザー | ゴアテックス |
|---|---|---|---|
| 価格 | 手頃 | やや高価 | 高価 |
| 通気性 | ◎ | △ | ◯ |
| 防水性 | × | △(撥水程度) | ◎ |
| 耐久性 | △ | ◎ | ◯ |
| バイク適正 | 街乗り | ツーリング | 全天候 |
ジャックパーセルの見逃せない機能の一つに、コンバース独自の高機能カップインソール「REACT(リアクト)」があります。特に現行モデルに多く搭載されている「REACT HD」は、軽量性、安定性、反発性、通気性を向上させた多重構造のインソールです。
参考)https://converse.co.jp/products/33700040
バイク乗りにとって、このインソールは意外な恩恵をもたらします。
それは、エンジンの微振動の吸収です。
単気筒や2気筒のバイクでは、ステップから伝わる微細な振動が足裏に蓄積し、長時間の走行で痺れや疲労を引き起こします。「REACT HD」のような高密度でクッション性の高いインソールは、この振動を効果的に減衰させてくれます。
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参考リンク:REACT HD CUP INSOLE - コンバース
公式サイトでは、このインソールが多重構造であり、安定性と反発性を両立していることが解説されています。
また、ジャックパーセルのアウトソール(靴底)には、波状の細かい切れ込みが入ったデザインが採用されています。これは元々バドミントンシューズとして開発された経緯から、コート内でのグリップ力を高めるためのものです。
バイクにおいても、このフラットかつ適度なグリップ力を持つソールは、ステップの感覚を掴みやすく、体重移動の妨げになりにくいという利点があります。
ただし、注意点もあります。コンバースのソールは一般的に「加水分解には強いが、摩耗にはそれほど強くない」傾向があります。バイクのステップ(特に金属製のギザギザしたステップ)はソールを攻撃するため、柔らかいソールだと削れるのが早いです。しかし、REACTインソール搭載モデルであれば、インソール自体が足のブレを抑えてくれるため(左右のぐらつき軽減)、ソールが多少減ってきても足首の安定感をある程度保つことができます。
さらに上級者の対策として、インソールを取り外し可能なモデルであれば、より剛性の高い「カーボン入りインソール」や、衝撃吸収に特化した「ソルボ」などの社外品に交換するのも一つの手です。しかし、純正のREACT HDが非常に優秀であるため、まずは純正のままその性能を試してみることをおすすめします。
最後に、市販のバイク用品を買わずに、100均アイテムなどを使ってジャックパーセルをバイク仕様にする、独自のカスタム術を紹介します。これは「靴をいじるのではなく、バイク側をいじる」または「見えない部分で工夫する」という発想です。
ジャックパーセルの美しいシルエットを崩したくない場合、外付けのシフトガードはデザインの邪魔になります。そこでおすすめなのが、シフトペダル自体のクッション化です。
ホームセンターや一部の100均で売っている、水道管の凍結防止用スポンジカバー(または家具の保護用スポンジ筒)を短く切り、シフトペダルのゴム部分に被せます。その上から黒い結束バンドで固定すれば、見た目も目立たず、ソフトな踏み心地になります。
参考)バイク シフトガードの選び方3選|スニーカーを守るおしゃれな…
これにより、ジャックパーセルのアッパー(甲部分)への攻撃性が劇的に下がり、痛みも汚れも防げます。費用は数百円で済みます。
スポンジだとすぐにボロボロになる場合は、ホームセンターで売っている透明な耐油ホース(内径がペダル径に合うもの)を切り開いて被せるのも有効です。透明なので目立たず、スニーカーへの色移りも防げます。
100均でも類似品が売られていることがありますが、シリコン製の結ばない靴紐(留め具)に交換するカスタムです。これを行うと、紐がループ状にならないため、バイクのステップやチェーンへの巻き込みリスクを物理的に排除できます。見た目もスッキリし、ジャックパーセルのシンプルさがより際立ちます。
通常の防水スプレーは表面にかけるだけですが、キャンバス地のジャックパーセルを徹底的に防水したい場合、シリコン系の防水液を刷毛で塗り込む、あるいはパラフィン(ロウ)を塗り込んでドライヤーで溶かすという荒業もあります(アウトドアの技法の応用)。これにより、キャンバス地がオイルドコットンのような風合いになり、多少の雨なら弾くようになります。ただし、通気性は落ちるため注意が必要です。
これらのカスタムや工夫を取り入れることで、ファッションスニーカーであるジャックパーセルを、立派なライディングギアへと昇華させることができます。安全性を確保しつつ、お気に入りの靴でバイクライフを楽しんでください。