

冬のバイクツーリングにおいて、ライダーを悩ませる最大の敵は「走行風」と「底冷え」です。一般的なアパレルブランドのダウンジャケットでは、時速60km以上で走行した際に縫い目から風が侵入し、またたく間に体温を奪われてしまいます。そこで多くのライダーが注目しているのが、過酷な環境下での使用を想定したアウトドアブランド、THE NORTH FACE(ノースフェイス)のハイスペックアウターです。
ノースフェイスの製品がバイク乗りに支持される理由は、単なるファッション性だけではありません。登山や雪山での遭難を防ぐために設計された「命を守るための機能」が、そのままライダーの安全性と快適性に直結するからです。特にゴアテックスによる完全防風・防水性能や、ジップインジップシステムによる効率的なレイヤリング(重ね着)は、冬のツーリングを劇的に快適にします。
しかし、すべてのノースフェイス製品がバイクに適しているわけではありません。生地の厚さ(デニール)や丈の長さ、フードの形状など、選ぶモデルを間違えると「高かったのにバイクでは使いにくい」という結果になりかねません。この記事では、バイク乗りという視点から、本当に使えるモデルと選び方のポイントを深掘りしていきます。
バイク用ジャケットとしてノースフェイスを選ぶ際、最初に候補に挙がるのがマウンテンジャケットです。このモデルがライダーから絶大な信頼を得ている最大の理由は、ゴアテックス(GORE-TEX)素材による圧倒的な防風性能と防水性能にあります。
冬の高速道路を走行中、体感温度は氷点下を大きく下回ります。一般的なウインドブレーカーでは、風圧によって冷気が生地を通過してしまうことがありますが、ゴアテックスの2層構造(2レイヤー)を採用したマウンテンジャケットは、走行風を物理的に完全に遮断します。
THE NORTH FACE公式:マウンテンジャケットの機能詳細(生地の厚さとゴアテックス構造について)
参考)バイク乗り必見!ノースフェイスの【防水・防風】マウンテンジャ…
また、マウンテンジャケットの特徴として、首元の襟が高く設計されている点が挙げられます。これにより、フルフェイスヘルメットとジャケットの隙間から入ってくる冷気を効果的にブロックできます。バイク専用ウェアのようにプロテクターは内蔵されていませんが、インナープロテクターと組み合わせることで、街乗りからロングツーリングまで対応できる万能な一着となります。
| 特徴 | バイクでのメリット |
|---|---|
| 150デニールGORE-TEX | 高速走行時の風圧に負けず、バタつきにくい |
| 高い襟(スタンドカラー) | ネックウォーマーなしでも首元の風を防ぐ |
| スノーカフ(着脱可能) | 裾からの風の巻き込みを防止し、背中の冷えを防ぐ |
「とにかく寒がりで、真冬でも絶対に寒さを感じたくない」というライダーにとって、アンタークティカパーカはまさに最強の選択肢です。南極観測隊の使用を想定して作られたこのモデルは、ノースフェイスのラインナップの中でも最高レベルの保温力を誇ります。
その暖かさの秘密は、封入された「光電子ダウン」と、表地に採用された極厚の200デニールGORE-TEX素材です。バイクで走行していても、まるで布団にくるまっているかのような安心感があり、外気温がマイナスになっても上半身だけは寒さを感じないほどです。しかし、この「最強」のアウターには、バイク乗りならではのデメリットも存在します。
メリット:
デメリット(注意点):
アンタークティカパーカの実使用レビュー:運転時の着心地と重量感について
参考)最強ダウン!「アンタークティカパーカ」は暑い?サイズ感や使用…
アンタークティカパーカは、スクーターやアメリカンタイプのバイクでゆったりとクルージングするスタイルには最適ですが、頻繁に加減速や体重移動を行うスポーツライディングには不向きな面があります。「暖かさ」をとるか「動きやすさ」をとるか、自分のライディングスタイルに合わせて検討する必要があります。
冬のバイクウェアで重要なのは「重ね着(レイヤリング)」ですが、枚数を重ねると着脱が面倒になったり、袖の中でインナーがめくれ上がって不快になったりすることがあります。この問題を解決するのが、ノースフェイス独自の規格である「ジップインジップ(ZIP IN ZIP)システム」です。
これは、アウター(マウンテンジャケットなど)の内側にあるファスナーと、対応するインナー(フリースやダウン)のファスナーを連結し、これらを「一着のジャケット」として一体化させる機能です。
バイク乗りにおすすめの組み合わせ:
ジップインジップの連結方法とメリット:袖のもたつき解消と着心地の向上
参考)ノースフェイスのマウンテンジャケットの使用の実際。状況に合わ…
このシステムの最大の利点は、バイクを降りて休憩する際や、食事の店に入った際に、アウターを脱ぐだけで温度調節が完了する点です。通常の重ね着だと「アウターを脱いで、さらにインナーダウンも脱いで…」となりますが、ジップインジップならワンアクションです。また、袖口もスナップボタンで固定されるため、グローブを装着する際にインナーの袖がずり上がってくるストレスからも解放されます。
ダウンジャケットの代名詞とも言える「ヌプシジャケット」ですが、通常のモデルは表地がナイロンのみで風を通しやすく、バイク用としては不向きと言われてきました。しかし、その弱点を克服したのが「ウィンドストッパーヌプシフーディー」です。
このモデルには、ゴアテックスインフィニアム(GORE-TEX INFINIUM WINDSTOPPER)という特殊な素材が使用されており、ダウンの軽さと暖かさを維持したまま、高い防風性を獲得しています。
ただし、あくまで「防風ダウン」であり、完全防水ではない点には注意が必要です。小雨程度なら撥水加工で弾きますが、本降りの雨ではレインウェアが必要です。また、生地の厚さは30デニール程度と比較的薄いため、転倒時の強度はマウンテンジャケットには劣ります。それでも、「冬でも軽快に走りたい」「バイクを降りた後もおしゃれでいたい」というライダーには、これ以上ない寒さ対策アイテムとなるでしょう。
最後に、バイク乗りだからこそ注目すべき独自の視点として「デニール(D)」について解説します。デニールとは、糸の太さを表す単位で、この数値が大きいほど生地が厚く、摩擦や引き裂きに強くなります。
一般的なファッション向けのアウトドアウェアや軽量ダウン(バルトロライトジャケットなど)は、軽さを重視して30デニール前後の生地が使われています。これは徒歩やタウンユースでは快適ですが、時速数十キロでコンクリートのアスファルトに叩きつけられる可能性があるバイクの場合、転倒時に一瞬で破けてしまい、肌を守ることができません。最悪の場合、摩擦熱でナイロンが溶けて火傷を負うリスクもあります。
バイク用として推奨されるデニール数:
参考:ノースフェイス製品の素材スペック比較(デニール数による耐久性の違い)
参考)ショップブログ
「ノースフェイスだから丈夫だろう」と思い込まず、自分の用途に合わせて生地の厚さを確認することが重要です。特に冬の路面は凍結や枯葉で滑りやすく、転倒リスクが高まります。見た目のカッコよさだけでなく、デニール数というスペックにも目を向けることで、より安全で賢いアイテム選びが可能になります。自分の身を守るためにも、アウター選びの際は「生地の強度」を必ずチェックしてください。

[ザ・ノース・フェイス] フリース ジャケット Mountain Versa Micro Jacket ブラック XXL