

プリロードを強くしてもバネは硬くなりません。
プリロードとは、サスペンションのスプリングに「あらかじめ負荷をかける」という意味で、英語のPreload(事前に荷重をかける)から来ています。多くのライダーが誤解しているのは、プリロードを強くするとバネ自体が硬くなるという認識です。
実際には、プリロードを調整してもバネレート(バネの硬さを示す数値)は一切変化しません。どういうことでしょうか?
参考)プリロードとバネレート: ヒントになれば幸いです(仮)
プリロードを強めると、スプリングが縮み始める「開始位置」が変わるだけで、スプリングそのものの特性は変わりません。例えば、10mmプリロードをかけた場合、スプリングは最初から10mm縮んだ状態からスタートし、その後の縮み方は元のバネレートに従います。つまり、スプリングが動き始める「初期位置」をコントロールしているだけで、バネの硬さという物理特性には影響しないのです。
バネレートは、スプリングの太さや巻き数で決まる固有の値です。例えば10kg/mmのバネは、1mm縮めるのに10kgの力が必要という意味で、プリロード調整ではこの値は変わりません。プリロードを最大にしても最小にしても、同じ力をかければ同じ量だけ縮むのが物理法則です。
参考)【バイクのスプリング交換】バネレートとプリロードセッティング…
プリロード調整で最も直接的に変化するのは車高です。プリロードを強くすると、スプリングが縮んだ状態で固定されるため、その分だけ車高が上がります。ある実験では、プリロードを最強にすると標準設定から20mmも高くなり、最弱にすると8mm下がるという結果が出ています。
これは足つき性にも影響します。8mm下がっただけで足着き性が良くなったことを体感できたという報告もあります。
プリロードを強めると、サスペンションの「動き始める重さ」が変わります。強くかけると、より大きな振動がないとサスペンションが縮まないため、細かな振動で反応しにくくなり、固い乗り心地になります。逆に弱くすると、小さな段差でもスッと動くようになり、柔らかい乗り心地になります。これは車高が変わることで、同じ重量でもサスペンションの初期沈み込み位置が変わるためです。
走行時の挙動にも影響が出ます。プリロードを調整すると、バイクに跨った際のサスペンションの初期縮み量が変わり、その結果バイクの前後の姿勢バランスが変わります。これにより曲がり方や走行の安定感、前後のタイヤの感触などに変化が生じます。
サスペンションは走行時に絶えず伸び縮みしています。具体的には、ブレーキ時に伸び、旋回時に縮み、加速時はあまり動きません。プリロード調整は、この動き始める「初期位置」を変えることで、路面からの衝撃吸収能力を変化させます。
適切に調整することで、路面の凹凸や衝撃を効果的に吸収できるようになります。
つまり乗り心地の改善です。
これにより長距離ツーリングでも疲れにくくなります。
大型バイクや海外メーカーのバイクは、プリロードが硬めにセッティングされているモデルもあります。そのため、街乗り程度でも路面の衝撃が気になったり、すぐにお尻が痛くなったりすることがあります。こうしたストレスを解消するには、プリロードを弱めに調整するのが良いでしょう。そうすることで乗り心地が柔らかくなり、快適で疲れにくい走行ができるようになります。
プリロード調整の効果は、荷物の量や同乗者の有無によっても変わります。荷物を積んだり同乗者がいる場合は、プリロードを強く設定することで、サスペンションが適切に機能します。これによりバイクの姿勢が安定し、コーナリングや直進時の安定性が向上します。逆に荷物が少ないときはプリロードを弱く設定することで、柔らかい乗り心地が得られます。
参考)https://bike-osusume.click/post-99/
プリロードが強すぎると、動的な沈み込みが少なくなることで、いくつかの問題が生じます。車高が高く突っ張り感がある、ハンドルの切れ込みが強い、路面からのショックが激しく跳ねる、といった症状です。
路面からのショックが激しいのは、サスペンションが細かな凹凸に反応せず、大きな衝撃だけを受け止めようとするためです。
路面追従性が悪化します。
逆にプリロードが弱すぎた場合も問題が起きます。大きな段差を超えた着地で、サスが踏ん張らずにタイヤが浮く感じがしたり、全体的にフワフワした乗り味になります。これは弱い荷重でもサスが動くため、バイクの姿勢が安定しないからです。
特に注意が必要なのは、バネレートが合っていない状態でプリロード調整だけで対処しようとするケースです。例えば柔らかすぎるバネ(10kg/mmなど)で、強い荷重がかかるコーナーを走ると、底付きしやすくなります。これをプリロードで対処しようとすると、低速時の乗り心地が極端に硬くなり、本末転倒になります。プリロード調整をいくら試してもしっくりこない場合は、バネレート自体を変える必要があります。
参考)https://bikeman.jp/blogs/bikeparts/motobike-77
プリロード調整は、リアショックのアジャスターを回して行います。基本的に「右に回す」と強くかかり、「左に回す」と弱くかかります。体重が重いライダーの場合は初期位置から右に回し、体重の軽いライダーは左に回して調整するのが基本です。
調整後は必ず実車で確認することが重要です。
確認すべきポイントです。
アジャスターを回してプリロードを決めたら、実際にバイクにまたがってサスペンションの変化を確認しましょう。確認ポイントは、またがった際のサスペンションの沈み込みや、軽く体重をかけてみての沈み込み具合、衝撃吸収性です。直線ではどうか、カーブではどうかなど、いろいろな道を軽く流して確認してみるとよいでしょう。
タイヤの接地感も確認ポイントの一つです。サスペンションのプリロードを適切に設定することで、タイヤが路面にしっかりと接地し、グリップ力(路面追従性)が向上します。カーブが多い道路で違和感を感じたときには、重量に対してプリロードが合っているかチェックすることをおすすめします。
📊 調整の目安表
| ライダーの状況 | プリロード調整の方向 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 体重が重い | 強める(右回し) | 底付き防止、姿勢安定 |
| 体重が軽い | 弱める(左回し) | 乗り心地向上 |
| 荷物積載時 | 強める | サスペンション機能維持 |
| 一人乗り | 標準〜弱め | 快適性重視 |
| 路面衝撃が強い | 弱める | 衝撃吸収向上 |
| フワフワする | 強める | 姿勢安定化 |
プリロード調整の本来の目的は「サグ出し」、つまりライダー乗車時の適切な沈み込み量を確保することです。サグとは、ライダーがバイクに乗った状態でサスペンションが沈む量のことで、これが適切でないとサスペンションの性能を十分に引き出せません。
ジムカーナなどの競技では、プリロードを締めると開始ストローク位置が高くなり、最大沈み込み位置も同じだけ上がるため、ストローク量が確保できます。これにより、強い荷重がかかる場面でも底付きを防げます。
プリロードを抜くと弱い荷重からサスが動き始めます。ある程度締めたほうが、アクセル開度0〜20%程度でのトラクションをかけやすく、360度ターンでは安定していて調子がいいという報告もあります。
ただし注意が必要なのは、プリロードはバネレートでは補えない微調整手段であるということです。バネレートそのものが合っていない場合、プリロード調整だけでは根本的な解決にはなりません。純正のバネは様々な走行状況を考慮して設計されているため、まずは純正バネでプリロード調整を試し、それでも改善しない場合にバネレートの変更を検討するのが賢明です。
走行安定性の向上も見逃せません。適切なプリロード調整は前後のサスペンションのバランスを保ち、走行中の安定性を向上させます。不適切な調整は、バイクが前後に揺れやすくなり、ハンドリングが不安定になる可能性があります。
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