
レギュレート・レクチファイアは、バイクの発電系統において整流と電圧制御という2つの重要な機能を担う電装部品です。かつては「レクチファイア」と「レギュレーター」が別々の部品でしたが、現在では一体化されています。
参考)レギュレータとは (バイクバッテリー初期不具合の原因?)
バイクのジェネレーターは交流(AC)で発電を行うため、バッテリーに充電するためには直流(DC)への変換が必要です。レクチファイア機能がこの整流を担当し、交流を直流に変換します。続いてレギュレーター機能が電圧を12V前後(一般的に14V以下)に制御することで、バッテリーへの過充電を防ぎます。
参考)レギュレータ/レクチファイア(REG/RECT)
エンジン回転数が上昇すると発電量も増加しますが、そのままではバッテリーに過度な電圧がかかってしまいます。レギュレート・レクチファイアは制限電圧を設定し、余分な電力を熱に変換して空気中に放出することで、バッテリー端子間電圧を適正範囲内に保ちます。この熱変換機能により、動作中はレギュレート・レクチファイア本体が発熱するのが正常な状態です。
参考)バイクのレギュレータとは
レギュレート・レクチファイアが故障すると、瞬間的に200V以上の高電圧が流れる可能性があり、さまざまな電装トラブルを引き起こします。故障時の典型的な症状として、ヘッドライトやウインカーなどの灯火類が頻繁に切れるようになります。これは制御不能となった過電圧が各電装品に大きな負荷をかけるためです。
参考)レギュレーターの故障に要注意!
バッテリー関連のトラブルも重要なサインです。充電が正常に行われなくなり、頻繁にバッテリーが上がってしまうケースや、新品のバッテリーに交換してもすぐに同様の症状が出る場合はレギュレート・レクチファイアの故障を疑うべきです。開放型バッテリーの場合、信号待ちなどで異臭がしたり、バッテリー液が漏れることもあります。
参考)https://www.goobike.com/magazine/maintenance/repair/55/
セルモーターの回転が弱くなるのも故障の前兆です。電圧が12Vを下回ると走行中にバッテリーの充電ができなくなり、最終的にはエンジンに点火できなくなって走行不能に陥ります。頻繁にバイクに乗っているにもかかわらずセルの回転が鈍い場合は、早急に点検が必要です。
レギュレート・レクチファイアの故障原因として最も大きいのが「熱」です。この部品は余剰電力を熱に変換して放熱していますが、冷却方法は空冷のみで、シートカウル内という換気されにくい場所に取り付けられているケースが多いです。レギュレート・レクチファイアからの放熱が続くとカウル内の温度が上昇し、放熱効率がどんどん悪くなります。
内部の半導体は熱を受ければ受けるほど寿命が縮む特性があり、排出できない熱が溜まり続けると最終的に耐熱温度を超えて破損します。耐熱温度を超えないまでも、高温状態が頻繁に繰り返されれば少しずつ劣化し、やがて故障に至ります。この消耗品としての性質により、高熱状態が長いほど寿命が早く来ることになります。
特に中小排気量車で故障が多く発生する理由は、高回転域を使う頻度が高いためです。高回転で走行すると発電量が増え、レギュレート・レクチファイアが処理する余剰電力も増加するため、発熱量が大きくなります。メーカーからは明確な故障原因が公表されていない場合もありますが、実際にはパーツ交換によって改善されるケースがほとんどです。
レギュレート・レクチファイアには明確な交換時期がないため、突然故障して突発的なトラブルを引き起こすことが多いです。交換作業は配線や電流の知識がある方であればセルフで行うことも可能ですが、電装系のメンテナンスに不慣れな場合は専門店に依頼する方が安全です。
参考)https://www.goobike.com/magazine/maintenance/maintenance/274/
セルフで交換する場合、費用はレギュレート・レクチファイア本体の価格のみとなります。純正部品は税込8,400円前後から入手可能で、車種によって価格は異なります。社外品では1,000円から3,000円程度のものもありますが、重要な電装部品であるため純正品を選ぶことが推奨されます。作業にはシートやカウルなどの周辺パーツを取り外す必要があるため、トルクレンチやドライバーなどの工具を事前に用意しておきましょう。
参考)https://blog.uso400.net/replace_regulator_-rectifier_1/
専門店に依頼する場合は、部品代に加えて工賃がかかります。配線接続やカプラー交換も含めた作業となるため、純正部品への一体型レギュレート・レクチファイアへの交換が一般的です。旧車の場合、レクチファイアとレギュレーターが別々に装備されているケースもあり、その場合は現行バイクに使用されている一体型への交換で、過充電の心配から解放されます。
参考)電気って難しい。レクチファイヤーがあってもレギュレーターがな…
レギュレート・レクチファイアの故障原因が熱であることから、発生熱を速やかに放出することが寿命を延ばす最も効果的な対策です。具体的な熱対策としては、ヒートシンクの取り付け、強制冷却ファンの設置、外気を取り入れるダクトの取り付けなどがあり、中でもダクトによる外気導入が最も効果的とされています。
参考)KLE400のレギュレーターの熱対策[その2] - ヒマジン…
アルミ製の放熱板を追加する方法も有効です。レギュレート・レクチファイアが風に当たりにくいカウル内側に位置している場合、アルミフィンを車体外部に露出させることで熱を外に引き出します。3mm厚のアルミ板を車体に収まる形状に加工し、レギュレート・レクチファイアとフレームの間に挟んで共締めする方法が実践されています。フィン付きレギュレート・レクチファイアを採用すれば、走行風がなくても一定の放熱効果が期待できます。
参考)https://ameblo.jp/zr746/entry-12857301443.html
定期点検も欠かせません。配線がしっかり接続されているか、断線がないかを確認し、レギュレート・レクチファイアが異常な高温になっていないかチェックします。バッテリーの状態も併せて確認し、必要に応じて充電や交換を行うことで、電装系全体の健全性を保てます。測定値によれば80度くらいまでは動作温度として許容範囲と考えられますが、それを超える場合は追加の冷却対策が必要です。複合的な対策を施すことで、完全には防止できなくとも故障リスクを大幅に低減できます。
参考)【レギュレーターが壊れる】バイクのレギュレーターの適正な温度…
南進貿易株式会社 - レギュレータとバッテリー初期不良の関係について詳しい解説
グーバイク - レギュレーター故障時の症状とテスターを使った診断方法
新電元工業株式会社 - レギュレータ/レクチファイアの技術仕様と製品情報