

バイクのUSB電源でノイズフィルターを自作しても充電できないことがあります。
ローパスフィルター(LPF:Low Pass Filter)は、指定したカットオフ周波数以下の信号を通過させ、それ以上の高周波成分を減衰させる電子回路です。低周波や直流信号はそのまま通し、高周波ノイズだけを除去するという特徴があります。
最もシンプルな構成はRC型です。抵抗(R)とコンデンサ(C)を直列に接続し、コンデンサ側から出力を取り出します。高周波数になるとコンデンサのインピーダンスが小さくなり、高周波成分が接地側に流れるため出力電圧が低くなります。
つまり高周波を遮断できるということですね。
参考)RCローパスフィルタの『伝達関数』や『周波数特性』について
バイク用のUSB電源やカーオーディオの電源ラインなど、ノイズが混入しやすい環境で活用されています。エンジンの点火系統から発生する高周波ノイズをフィルターで除去することで、充電不良やオーディオノイズを防げます。
参考)カーオーディオの音質アップ|電源ラインのノイズフィルタ自作
RC型とLC型では、ノイズ除去の効果に大きな違いがあります。同じカットオフ周波数で比較すると、RC型は-20dB/dec(10倍の周波数で元の10分の1に減衰)ですが、LC型は-40dB/dec(10倍の周波数で元の100分の1に減衰)になります。
LC型の方がシャープな特性です。
参考)ノイズ対策講座-9 ローパスフィルタ回路によるノイズ対策
LC型はインダクタ(コイル)とコンデンサで構成されます。インダクタのインピーダンスは周波数が高くなるほど大きくなり、コンデンサは逆に小さくなるため、高周波信号を効率的に除去できます。RC型を2個接続することで、LC型と同じ減衰量を実現できるという方法もあります。
ただしLC型にも注意点があります。LC共振回路のため、コンデンサとインダクタの間でエネルギーが往来し、設計によっては出力波形に振動的な変化が現れることがあります。用途に応じて適切な回路形式を選ぶことが重要です。
参考)オリックス・レンテック
パッシブフィルタ(受動素子のみ)とアクティブフィルタ(オペアンプなど能動素子を使用)という分類もあり、アクティブフィルタはより高性能なフィルタリングを実現できます。
RC型のカットオフ周波数(遮断周波数)は、f=2πRC1という式で計算できます。この周波数は元の電圧より-3dB下がった時点、つまり元の電圧が1.0Vの場合に約0.7Vに下がる点を指します。
意外と大きい変化ですね。
参考)RC ローパスフィルタ回路計算ツール
具体例を見てみましょう。抵抗1kΩ(1000Ω)、コンデンサ0.1μF(0.0000001F)の場合、カットオフ周波数は約1591Hzになります。この周波数以上の信号が徐々に減衰していきます。部品の値を変えることで、除去したいノイズの周波数帯に合わせた設計が可能です。
分圧回路にコンデンサを追加した場合、テブナンの定理を使って等価回路に変換し、R1とR2の並列抵抗とコンデンサによるLPFとして考えます。カットオフ周波数はf=2πC(R1∥R2)1となります。回路全体の抵抗値を正しく把握することが計算のコツです。
参考)分圧回路にコンデンサをつけた時のカットオフ周波数は...&#…
LC型の場合はインダクタンスL、キャパシタンスC、負荷抵抗などを考慮した複雑な計算になります。π形フィルタやT形フィルタといった回路形式によって、入力・出力インピーダンスに合わせた選定が必要です。
参考)LCフィルタの種類とローパスフィルタにおける部品選定事例 -…
RCローパスフィルタ回路計算ツール
カットオフ周波数や必要な部品値を自動計算できるツールが公開されており、設計時の参考になります。
バイクのUSB電源にノイズフィルターを追加しても、充電がうまくいかない事例が報告されています。特に「USB Station 2」という製品では、エンジン始動後にスマホを接続しても充電されないという不具合が発生しました。データ線D+とD-が短絡された充電専用ケーブルを使うと使えるケースがあります。
参考)USB電源系統にノイズフィルター取り付け → 別の意味で効果…
原因はバイクのイグニッションコイル系統からの点火ノイズです。キルスイッチ配線が各イグニッションコイルに接続されており、超ノイズが乗っている系統とUSB電源の配線を一緒に束ねてしまうと、ノイズが混入します。結果として、USB出力が+5VDCでもノイズが重複した異常な電圧となり、スマホがハンドシェークを開始せず充電モードに入りません。
参考)不調なUSB電源を診断・・・・まさかのノイズ!?→バイク用品…
配線ルートの見直しが重要です。USB電源の配線をイグニッション系統から離し、D+/D-線がエンジンからのノイズを受けないようにする必要があります。フェライトコアやローパスフィルタを追加するだけでなく、配線経路そのものを改善することで問題を解決できます。
カーオーディオの電源ラインにも同様の対策が有効で、ローパスフィルタ回路を電源ラインに追加することで高周波ノイズを除去し、音質が改善されます。
USB電源系統のために製作した自作ノイズフィルタの性能仮測定
実際のバイク搭載での測定結果と、グリップヒーターなど他のノイズ源との関係について詳しい情報があります。
フィルター設計で失敗しやすいのは、カットオフ周波数の選定ミスです。通過させたい周波数+2MHz程度の余裕を持たせることが、実測により判明しています。ギリギリの設定だと、必要な信号まで減衰してしまう恐れがあります。
参考)ローパスフィルタ(LPF)の製作 ② - JH1LHVの雑記…
コイルの作り方も重要です。コイルのサイズを小さくするために密巻にすると、微妙な調整が難しくなります。巻き数を増やして線間隔を広げた方が、調整しやすくなります。0.05pFのような非常に小さな値を扱う場合、わずかな寸法の違いで特性が変わるため慎重な作業が求められます。
参考)2m用バンドパスフィルターの制作(失敗) - JP3DGT …
バイクのデジタルタコメーター回路では、RCローパスフィルターで入ってくる高周波数ノイズを除去する例があります。回路は大きく3つに分かれており、最初の段階でフィルターを配置することで、後段の回路を保護しています。
参考)モンキーのデジタルタコメーターを作りたい…(その1)|sat…
USBチャージャーからのノイズ対策として、USB充電ケーブルのチャージャー近くに大きめのフェライトコア(パッチンコア)を入れると、ノイズが激減することも確認されています。ローパスフィルターと併用することで、より効果的なノイズ対策が可能です。
参考)USBチャージャーからのノイズ: アマチュア無線 by JI…
実用上の効果としては、スピーカーから聞こえるキーンという高音ノイズがほとんど聞こえなくなる程度まで改善できますが、完全に無音にするのは難しい場合もあります。それでも実用レベルまで持っていけるので、試してみる価値はありますね。

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