

まず押さえたいのは、「どこを守れば死亡・重傷のリスクが下がるか」です。国の資料では、バイク乗車中の致命傷部位は頭部40.8%、胸部28.6%(2013~2022年平均)とされ、頭部と胸部で約70%を占めます。ここが“守る優先順位”の根拠になります。
この数字が示す現実はシンプルです。まずはヘルメットを正しく選び、次に胸部を守る装備(胸部プロテクター等)を整えることが、コスパの良い安全投資になります。「ジャケットは買ったけど胸部が薄い」「フルフェイスでもフィットが甘い」などは、見た目は整っていても“守るべき箇所”に穴が空きがちです。
バイクは転倒や衝突の瞬間に、上半身が前方に投げ出されやすく、頭部・胸部の衝撃が致命傷につながりやすいという構造的なリスクを抱えます。だからこそ、ファッションやブランドの前に「頭・胸の守り」を起点に装備を組み立てると失敗しません。
意外と見落とされるのが「速度域と損傷の出方」です。ITARDAの分析資料では、二輪車乗員の死者数で損傷主部位が最も多いのは頭部、次に胸部で、胸部は減少傾向が小さいことが示されています。つまりヘルメット普及だけでは埋まらない領域が胸部に残りやすい、という読みができます。
参考:頭部・胸部が致命傷の中心(数値の根拠)
国土交通省(自動車局)資料:致命傷部位(頭部40.8%/胸部28.6%)
参考:二輪事故の胸部損傷の特徴(背景理解)
ITARDA資料:二輪車事故における胸部損傷事故の特徴
バイクのヘルメットは「着けていればOK」ではなく、法律と基準がセットで語られます。道路交通法では二輪の運転者・同乗者のヘルメット着用が規定されており、さらに基準は府令で定める、という建て付けです。条文そのものを一度読んでおくと、装備の“必須”と“推奨”が混ざらなくなります。
そして国内で販売される乗車用ヘルメットについては、PSCマークの貼付が義務付けられている、という整理が基本になります。ネットで安い製品を見つけた時ほど、まず「PSCがあるか」を確認してください。PSCが付いていれば絶対安全、という意味ではありませんが、少なくとも国内の最低限の枠を満たしているかどうかの入口になります。
もう一段だけ実務の話をします。JAFの解説では、SGやJISには125cc以下用の限定規格があるので注意、という指摘があります。つまり「小排気量想定の検査・基準」と「排気量制限なし想定」の区別があり、バイクの使い方(高速道路、長距離、車格)に対して装備側の設計思想がズレる可能性がある、ということです。
買うときのチェックは難しくありません。
参考:法令(条文を一次情報で確認)
e-Gov法令検索:道路交通法
参考:ヘルメット選びの注意(125cc以下限定規格など)
JAF:バイクのヘルメット選びの注意点
参考:国内販売とPSCの位置づけ(基礎)
乗車用ヘルメットとPSCマークの説明
頭部の次に優先したいのが胸部です。国の資料で胸部が致命傷部位の大きな割合を占めることが示されている以上、胸部プロテクターは「余裕があれば」ではなく、現実的には“必須寄り”の装備として扱うのが合理的です。ヘルメットだけで安全対策を終えると、統計的に大きな穴が残ります。
胸部プロテクターを選ぶとき、ありがちなミスは「着けにくい・暑いから外す」パターンです。夏は特に蒸れがストレスになり、結果として装着率が落ちます。ここは根性論ではなく、最初から季節ごとの快適性を織り込むのがコツです。
プロテクターの種類そのものも知っておくと選びやすくなります。教習系の解説では、首、腰、ひじ、ひざなど各部位のプロテクターがあり、最低限の装備を付けること、さらにプロテクターにはハードタイプとソフトタイプがあり、走行シーンに応じて使い分けるとリスクを減らせる、と整理されています。高速道路中心ならハード寄り、街乗り中心ならソフト寄り、といった考え方ができます。
装備の現場感のあるチェックリストは次の通りです。
参考:プロテクターの種類と使い分け(ハード/ソフト)
免許・教習系解説:ツーリングの持ち物と服装(プロテクターの基礎)
参考:安全装備の講習で求められる装備(例:くるぶし保護の靴、プロテクター等)
大阪府交通安全協会:二輪車安全運転講習会(持参品・注意)
ツーリングは「非日常の移動」なので、日常の街乗りよりも小さなミスが増えやすいです。準備の段階で“忘れ物ゼロ”に寄せるだけでも、現地での判断が一気に楽になります。特に雨・寒暖差・パンクのような突発イベントは、持ち物の差がそのまま安全と帰宅時間に跳ね返ります。
服装は「快適=安全」になり得ます。暑すぎて集中が切れる、寒くて操作が雑になる、雨で視界が悪い、こういう状態は事故要因になりやすいからです。だから季節に応じた装備の最適化は、単なる快適グッズの話ではなく、運転品質を保つための投資です。
持ち物は“分けて考える”と整理しやすいです。
「意外な盲点」として、長距離ほど“首と肩の疲労”が判断力を削ります。ネックウォーマーや薄手のインナーで風の巻き込みを減らすだけでも、疲労が変わることがあります。装備は防御力だけでなく、疲れにくさ=ミスの減少、という観点でも選ぶと精度が上がります。
参考:長距離ツーリングの持ち物(実用目線)
長距離ツーリングの持ち物例(2024年版)
検索上位に多いのは装備や初心者向けの一般論ですが、実際のトラブルは「人と走る時」に増えます。ここは独自視点として、バイカー同士の走行で事故確率を上げる“ありがちなズレ”を先に潰しておきます。結論としては、テクニックよりも合意形成が重要です。
集団走行の事故リスクは、車両性能より「情報の遅延」で起きます。先頭が見た障害物を後方が見ていない、先頭がペースを上げたつもりが後方では無理をしている、こういう“伝達のズレ”が転倒や追突の引き金になります。だから出発前に、合図・隊列・休憩ルールを決めるだけで安全性が上がります。
最低限、次のルールを共有すると実務で効きます。
最後にメンタル面の話を一つ。バイカーは「無理してでも合わせる」空気が出やすいのですが、そこが事故の入口です。初心者や久しぶりの人が混じるなら、最初から“遅い人が正しい”を合言葉にしておくと、結果的に全員が楽になります。