

チークパッドを外したまま走っても合法だが、100km走行で耳に届く風切り音は95dBに達し、難聴リスクが生じる。
チークパッドは、ヘルメット内部の左右の頬を覆うクッション状のパーツです。一見すると「快適性のためのオマケ」のように思われがちですが、実際には安全性・安定性・聴覚保護の3つに大きく関わっています。
ヘルメットのフィット感が崩れると、高速走行中にヘルメットが後ろへズレやすくなり、視界が一瞬でも遮られるリスクがあります。また、チークパッドが頬に密着していないと、ヘルメットと顔の間に隙間が生まれ、そこから風が侵入します。時速100kmの走行時、ヘルメット内の風切り音は約95dBに達するとされており、これは地下鉄車内の騒音(約90dB)を上回る音圧です。つまり、チークパッドのフィット不良が毎回のツーリングで耳にダメージを与えている可能性があります。
メリットは大きいですね。
さらに、事故発生時にチークパッドが正しく装着されていないと、頬骨や顎への衝撃吸収が不十分になります。WINS JAPANのヘルメット取扱説明書には「脱着可能な部品を取り外したまま走行することは大変危険です」と明記されており、メーカー側も安全上の問題として強く警告しています。
チークパッドは安全装備の一部です。
| チークパッドの役割 | フィット不良時のリスク |
|---|---|
| 頬骨・顎の衝撃吸収 | 事故時に顔面へのダメージ増大 |
| ヘルメットの横方向安定 | 高速走行時のぐらつき・視界不安定 |
| 風の侵入を防いで風切り音低減 | 95dB超の騒音で難聴リスク増加 |
| 汗・皮脂を吸収し清潔を保つ | ニオイや雑菌繁殖の原因に |
チークパッドが密着しているかどうかは、両手で頬をプッシュしてみたときに数mmの遊びがない状態が目安です。走行前に毎回確認する習慣をつけておくと、フィット感の変化に早く気づけます。
参考:バイク走行と難聴リスクについての医療情報
バイクライダー必見!バイクによって難聴が起こる仕組みと対処法 – ヒアリングアート
チークパッドの選び方で最も重要なのは、ヘルメットの「帽体サイズ」と「チークパッドの厚み」を切り分けて考えることです。多くのライダーが誤解しているのですが、ヘルメットのサイズは頭の外周で合わせることが基本であり、チークパッドの厚みは頬のフィット感を調整するための後付けの設定です。この2つをごっちゃにすると、「頬がきつくてMサイズを買ったがぶかぶかだった」という失敗につながります。
たとえば、SHOEIの場合、MサイズのMULTITECであれば標準のチークパッドは35mm前後ですが、オプションとして31mmから43mmまで複数の厚さが用意されており、全サイズ互換性があります。つまり、頭の外周に合ったヘルメットを選んだうえで、チークパッドの厚さを変えることで頬のフィット感を細かく調整できるという仕組みです。
これは使えそうです。
新品のヘルメットを試着したとき、頬がきつく感じるのは「正常」です。チークパッドは使い込むほど少しずつ圧縮されていくため、最初から緩く感じるサイズを選ぶと、数ヶ月後にはぶかぶかになってしまいます。購入直後の「少しきつい」は正しいサイズ感の証です。
厚さ5mmの変化は、手のひらを広げたときの指の幅より少し薄い程度ですが、着用感はかなり変わります。特に39mmと35mmの比較では、フィット感が「ぴったり」から「ゆるい」くらいの差になることもあります。
チークパッド交換で対応できる範囲は広いですが、頭頂部や前後のズレが大きい場合は帽体そのもののサイズが合っていない可能性が高いため、バイクショップでフィッティングサービスを利用することをおすすめします。SHOEI・Arai・OGK Kabutoはいずれもメーカー認定店でパーソナルフィッティングを受けられます。
参考:ヘルメットのサイズとチークパッド調整について詳しく解説
ぶかぶかなバイクのヘルメットは危険!サイズ調整の方法と選び方 – 2りんかん
チークパッドの取り外しは、慣れてしまえば5分程度で完了します。ただし、初めて行う場合は無理に引っ張ると爪や留め具を破損させることがあるため、手順を確認してから作業することが重要です。
SHOEIの多くのモデルは、チークパッドを前方向に引き出しながら下げる動作で外れます。Z-8やGT-Air3などモデルによって取り外し方が異なるため、SHOEI公式がYouTubeで機種別に動画を公開しており、そちらを参照するのが最も確実です。Araiの場合は、帽体フロント側の爪を折り曲げないよう注意しながら外すのがポイントで、急激に力をかけず、指でゆっくり広げながら引き抜く感覚で行います。
基本手順はシンプルです。
注意が必要なのは、インカム(通話機器)のスピーカーをチークパッドに挟み込んでいるケースです。取り外しの際にケーブルを引っ張りすぎると断線の原因になるため、先にケーブルの固定を解除してから外すようにしましょう。
取り外したチークパッドは、洗濯ネットに入れて30℃以下の手洗いまたは弱流で洗えるものが多く、定期的に洗うことで雑菌の繁殖や臭いを防げます。完全に乾燥させてから再装着することが条件です。
参考:SHOEI公式によるチークパッド脱着手順
TYPE-Pチークパッド脱着方法【SHOEI公式】 – YouTube
「外観に問題ないから大丈夫」と思っているライダーが多いですが、チークパッドは内部のウレタンフォームが先にへたります。表面の生地が綺麗でも、中のクッション性はすでに失われているケースが多いです。
使用頻度にもよりますが、ほぼ毎日使用している場合は1〜1.5年、週末ライダーで2〜3年が一般的な交換目安とされています。72Jamのジェットヘルメットブログでは、1年半ほぼ毎日使ったチークパッドの写真を新品と比較しており、横から見ると目に見えてクッションの厚みが減っていることが確認できます。へたりが進んだチークパッドは手で押しても弾力がほとんどなく、まるで薄いスポンジのような感触になります。
これは痛いですね。
へたったチークパッドをそのまま使い続けると、以下のような問題が生じます。
なお、日本ヘルメット工業会(JHMA)はヘルメット本体の耐用年数を購入後3年と定めており、SGマークの補償期間もこれに準拠しています。チークパッドの交換はヘルメット本体の使用期間より頻繁に行う必要があるため、1〜2年を目安に状態を確認することが習慣として大切です。
参考:ヘルメット寿命・耐用年数に関する詳しい情報
FAQ(よくある質問と回答)– 日本ヘルメット工業会
主要メーカーのチークパッドには、それぞれ設計思想の違いがあります。SHOEI・Arai・OGK Kabuto の3社を比較してみると、その特徴が際立ちます。
| メーカー | チークパッドの特徴 | 厚さ交換の幅 |
|---|---|---|
| SHOEI | 全サイズ互換性あり。モデルごとにTYPE分類。LPC機能で救護時にすばやく外せる | 31mm〜43mm(モデルにより異なる) |
| Arai | 帽体フロント側の爪で固定するシンプル構造。フィッティングサービスで個別調整可 | 複数サイズあり(テクニカルショップで対応) |
| OGK Kabuto | 日本人の頭形状に特化した設計。プロフィッティングサービスを提供 | モデル別に複数設定 |
多くのライダーが見落としている点として、SHOEIのLPC(ライナーポジションコントロール)機能があります。これはチークパッドの赤いテープを引っ張るだけでパッドが外れる救護用の仕組みで、事故後に救急隊員がヘルメットを外しやすくするために設計されています。知らないとただのタグに見えますが、万が一の際に同乗者や通行人がこの機能を知っていれば救護の時間を短縮できます。
これが原則です。
さらに見落とされがちなのが、チークパッドの素材と通気性の関係です。夏場にチークパッドの厚みを増すとフィット感は上がりますが、頬周りの密閉度が増して蒸れやすくなります。夏場は少し薄めに、冬場は厚めに調整するという季節切り替えを行うライダーも一部います。各メーカーの純正オプション品をシーズンに合わせて2種類用意しておく運用は、コスト1,000〜3,500円程度で実現できるためコスパの高い対策です。
また、ストリートジェットヘルメットのなかには、そもそもチークパッドの交換用オプションが販売されていないモデルも存在します。購入前にメーカーの交換パーツ一覧を確認し、将来的な交換・調整が可能なモデルを選ぶことが長期的なコスト削減につながります。チークパッドの交換で新品同然の被り心地が復活するなら、ヘルメット本体を早期に買い替える必要もなくなります。
つまり「チークパッドの調整・交換」は、安全性・快適性・経済性の3つを同時に改善できる最も費用対効果の高いメンテナンスです。
参考:ヘルメットのチークパッドと快適なツーリングの関係について
高速道路での不快感を解消!ヘルメットのチークパッド調整で快適ライディング – バイクのわ